「東京カレンダー」読者の居住が一番多いエリアが、実は「世田谷」。

平日は都心で働き、最新レストランにも足を運ぶけど、休日はゆったりと地元グルメを堪能する人が多いのだ。

世田谷の中でも三軒茶屋や下北沢には、個性を放つ人気店が多くある。ここは、実は地元民が秘密にしたい店ばかり。

老舗ハンバーガー専門店から、お好み焼き、蕎麦に至るまで、人を惹きつけ続けるお店を紹介しよう。



木材を活かした空間は、まさに西海岸のアメリカンダイナー。奥にゆったりとしたテーブル席がある
正統派アメリカンダイナーならここ『ベーカーバウンス 三軒茶屋本店』

三軒茶屋


2002年から世田谷では、一味違うハイレベルなハンバーガーダイナーが人気を博していた。

ハンバーガー好きにはたまらない有名店『ベーカーバウンス 三軒茶屋本店』。アンティークな内装で50〜60年代のポスターが飾られた空間はアメリカンダイナーさながら。

同店がオープンした当時は、ハンバーガー専門店こそあったものの、ハンバーガーの地位は低く“食事”として考える人も少なかった時代。

店主・渡邊さんは、夕食や昼食の候補に挙がるようなハンバーガーを作りたいという熱い想いからスタートしたのが『ベーカーバウンス 三軒茶屋本店』なのだ。



「ダイナーバーガー」1,200円

一口食べてすぐ「これは違う!」とわかる本格的な味わい。この店では、パテやベーコン、ケチャップに至るまで可能な限り全てを手作りしているのだ。

まずパテは、柔らかさではなく牛肉本来の味を楽しめるよう、ひき肉ではなく、裁断した牛肉を練り合わせるスタイル。使用するのは肩肉2種、腕肉。

それを炭火で焼き上げることで、インパクトのある食感と、噛みしめる度に溢れ出す旨みを生み出しているのだ。



パテとの相性を第一に考案した自家製ケチャップ

また、バンズは開業当時から変わらず、老舗ベーカリーに特注したものを仕入れたものを使用。肉を焼きつつ、炭火から少し離れたところでバンズを焼き上げていくため、肉と炭火の香りをまとったバンズが完成するのだ。

オープンスタイルでテーブルへと運ばれてくるので、好みで自家製ケチャップをのせて召し上がれ。

セロリ、ニンニクをミキシングした所に、水を入れて沸騰させる。そこに三温糖と塩、トマトピュレ、トマトペーストを入れて、3時間ほど弱火で煮て完成する自家製ケチャップは、同店のパテとの相性抜群。



「ベーコンチーズバーガー」(1,600円)

シンプルな「ダイナーバーガー」が人気だが、迫力あるビジュアルの「ベーコンチーズバーガー」もおすすめ。注目は、豪快にサンドされた自家製のベーコンの美味しさ。

メキシコ産豚バラを串打ちし、塩、三温糖、ローズマリー、たまり醤油をまぶし3日間寝かせた後、肉を乾かし3時間ほどスモーカーで燻して完成するという手間暇かかったベーコンは、噛むほどに旨みが溢れ出してくる。

バンズ、具材、そしてパテ。この全てが均等なレベルの美味しさであることで、三位一体となり“美味しいハンバーガー”となるのだ。



「クラムチャウダー」(350円)。玉ねぎを2時間炒めるところから始まり、6時間ほどかけて完成する具材たっぷりの濃厚な味わいの一品

ハンバーガーをファストフードから手間ひまかけたグルメバーガーに昇華させた元祖の店。

ハンバーガーのひとつの理想のカタチが、ここにある。




ナスとナッツのパテ バジル風味、空豆の冷製ニョッキ フレッシュトマトとバジルのソース、トリッパと牛小腸のトマト煮込み。ワインは丁寧に造られた飲み疲れしないものが揃う。季節によりメニューは異なる。写真は一例
技の利いた小皿料理とイタリアの自然派ワイン『ブリッカ』

三軒茶屋


一部がアーチ状の天井や、造り付けのセラーを設えたりとさりげないこだわりが光り、空間に華やかさがある。

ワイン1杯、料理1皿からOKと使い勝手は抜群な上、空豆とそのペーストを練りこんだ爽やかな冷製ニョッキにも、凝縮感のある香りと酒を呼ぶ塩気が絶妙な熟成ヒコイワシのマリネにも、料理人の技と創意がしっかり発揮されている。

するりと飲めて味わい深いワインのセレクトもバッチリ。リストランテ仕込みの味を潔くカジュアルに楽しませるこんな店が、イタリア料理とワインをますます楽しくしてくれる。



自家製の生ハムとサラミの盛り合わせ



ヒコイワシのマリネ




ポークスペアリブ アチャールグリル(2ピース)。インドのピクルスにじっくり漬け込んだ豚肉のスペアリブ
“華麗なる”サイドディッシュにも注目!『シバカリーワラ』

三軒茶屋


インドの奥深い魅力に魅せられたオーナーが手がける『シバカリーワラ』。

現地ではめずらしい豚肉のスペアリブなどもメニューに取り込むが、こだわるのはあくまで“インドで日常的に食されている味”だ。



カレーのほかにも魅力的なメニューが盛りだくさん!

スパイスの香りが立ち込める店内で、くらくらと眩暈がするほどの美食体験を楽しんで。


三軒茶屋エリアには、休日に味わいに行きたい個性派グルメがたくさん!



「チキンカレー」
香港料理屋で食べる具沢山のチキンカレー『香港麺 新記 本店』

三宿


三宿交差点の近くにある香港料理店「香港麺 新記 本店」は、中華風スープカレーとごはんが別々なのが特徴。

豊富なメニューがあり小皿料理をつまみにお酒を飲んでいる客が多いが、最後の〆に評判なのがこの「チキンカレー」。

中華風の辛いカレーに柔らかく旨みたっぷりのチキンが入っている。口に運ぶとホロホロと溶けていく大きなブロッコリーも最高。




60年以上受け継がれるウクライナ風ボルシチ。来客のほぼ100%が注文するボルシチは、牛肩ロース肉がほろっとほぐれるほど柔らかい
本家本元ウクライナ風ボルシチは必食『サモワール』

池尻


昭和25年創業の老舗、池尻大橋のロシア料理『サモワール』。人気はボルシチ。ロシアの代表かつ定番料理でもあり、世界三大スープのひとつだ。

味わいは野菜の甘みと酸味が染み出ており、口当たりはさらっとしていてやさしい。途中からサワークリームを混ぜ、味を変えながら食べるのもいい。なにより、ビーツから出たピンク色がこの上なく美しい。

実はボルシチ、本家本元はウクライナとかで、こちらにも2種類ある。豆と牛肉入りはウクライナ風。野菜のみのひと皿も。いずれにせよ、先代が戦後すぐロシアに渡り、体得したかつての味わいが、今なお受け継がれる。




鬼おろしそバーガー。放牧牛のパテにのった水気を絞った鬼おろしと紫蘇が爽やかな和風ハンバーガー
和を取り入れた大人の味わいのバーガー『ハラカラ。』

三軒茶屋


「どこにもないものを作ろうと思ったんです」。そう語るのは、店主の萩原洋次氏。

その象徴が鬼おろしそバーガーだ。ややハードなバンズに挟むのは、タスマニアビーフにオニオンソテーを入れたパテ。調味料は天日塩と黒胡椒のみ。50度洗いを徹底した野菜と、たっぷり入った鬼おろし、熟成プレミアムビーフのコンビネーションは洗練の極みだ。

凝縮された旨みとボリューム感がありながら、完食しても胃袋は軽やか。「肉もイイけど野菜もネ♥」な気分に応えてくれるバーガー。一度食べればヤミツキになるはず!



左.店は’09年にオープン。自然な甘みがクセになるアサイーのジュースなどサイドメニューもおすすめ 右.店構えも、どこか優しげで他の店とは一線を画す雰囲気の店


下北沢には、四川料理の名店がある!



「沸騰牛肉の山椒煮込み」(小皿1,500円、中皿1,900円)
激辛好きを歓喜させる下北沢の人気店『天華』

下北沢


下北沢にある『天華』は、激辛好きなら知っておきたい中国料理の名店のひとつ。同店を訪れたならマストでオーダーしたいのが「沸騰牛肉の山椒煮込み」。

朝天辣椒の粉末がこれでもかというほど、どっさりかけられたまるで地獄谷のようなビジュアルで登場したかと思うと、そこに180℃の山椒油を注ぎいれるのだ!食欲をそそる音、香り、ビジュアルに、歓声を上げずにはいられないだろう。

ジュワ〜ッと煙が上がっているうちに、料理長・長尾氏自らが成都で買い付ける山椒をかけて完成。見ているだけで、じんわりと額に汗が浮いてきそうなほどの迫力に圧倒される。



メニューには載っていないが「麺」(+500円)もオーダー可能

辛いだけの料理だと思うことなかれ。ひと口食べれば、その旨さに箸が止まらなくなってしまうのだ。

特に注目したいのは、牛肉の柔らかさ。最後の油を注ぎいれる時に火が入りきるように、調理されているのだ。

刺激的な辛味の中にこの牛の優しい柔らかな食感、野菜の甘み、そして熟成されたピーシェン豆板醤、天華オリジナルブレンド豆板醤、豆豉、丁寧に出汁をとったスープなどの旨みがギュッと凝縮され一気に口へと流れ込んでくるのだから、堪らない!



「本場四川の激辛マーボー豆腐」(小皿1,300円、中皿1,700円)

激辛好きを歓喜させる料理は、これだけではない!「本場四川の激辛マーボー豆腐」は、同店で提供される料理のなかでも激辛レベルの高い一品である。

可能な限り、本場四川の味わいを再現した同メニューは、食べた瞬間に体中を爽快な辛さが駆け抜けていく。

この辛味を生み出しているのが、四川から仕入れる山椒と朝天辣椒。しかし、辛味の後にはしっかりとピーシェン豆板醤などから生み出される旨みも感じ、食べる人を虜にしてしまう。



「鶏の揚げ物 クミン・山椒炒め」(小皿1,200円、中皿1,600円)

ちょっと激辛は苦手…という人には「鶏の揚げ物 クミン・山椒炒め」がおすすめ。

朝天辣椒と鷹の爪の辛味を油に移しながら炒めていき、山椒と葉ニンニク、揚げた鶏肉を投入。仕上げにクミンと塩で味を整えた後、紹興酒で香りを出した一皿は、テーブルに届いた瞬間、クミンと紹興酒が生み出すいい香りが漂い、食欲を刺激してくれる。ほど良い辛味がクセになり、ビールとの相性も抜群!

「今日は思いっきり激辛料理でシビれたい!」そんな日には、『天華』を訪れてみてはいかがだろう?




「夫妻肺片(牛ハチノス・牛スネ肉の麻辣ソース)」
単なる刺激ではない、四川料理に対する愛情と敬意『蜀彩』

経堂


何事にも通ずることだが、刺激も過ぎると、だんだんと飽食気味になるものである。ただ、世の中には、クセになる刺激というものも確実に存在する。

料理人としてのスタートは決して早かったとは言えないが、その“種”が心のなかに芽生えたのは、わりに早期であった。

子供の頃、親に連れられて行った四川料理店で、はじめて雲白肉に出合ったときの感動を今でも忘れることはないという。



「四川名菜 鴨の紅茶漬け燻製香り揚げ」。皮目はパリッと香ばしく、身はしっとりとジューシー。メニューは一例

「昔からおつかいで買いものに行くことが多かったから、どんな食材を使っているかというのがなんとなくわかったんです。どこでも手に入るような普通の豚肉を、こんな美味しい料理にできるのかと。子供心にすごく感激したのを覚えています」

村岡拓哉氏が世田谷区・経堂に自身の店『蜀彩』を構えたのは2011年10月のこと。胸のなかで大切に育ててきた“種”がこうして花開くまでには、様々な紆余曲折があったという。

一生をかけて情熱を注げる仕事を考えたときに中華の料理人という答えに行き着いた。



「成都式汁無し坦々麺」。本場四川に伝わる味を独自にアレンジ。奥の深い味わいで後を引く旨さ

遅咲きを承知で25歳からのスタートを決意できたのは、やはり一生をかける覚悟あってのことだ。30を目前にして原宿『龍の子』に入店、その後、本場の空気を肌で感じるために四川省へと渡った。

帰国後は再び『龍の子』へ戻り、新宿の『川香苑』などを経て、独立へと相成った。

村岡氏の原動力は、単なる“刺激”ではなく、四川料理に対する愛情と敬意。料理はときとして、作り手以上に雄弁だ。


経堂って、美味しいお店がたくさんあるんです!



美しく焼き上げる、そば入り。広島の定番、オタフクソースをたっぷり塗って青のりをふり、カウンター席なら目の前で完成。中ジョッキは、アサヒスーパドライ
広島風お好み焼きの名店『お好み焼き 八昌 東京店』

経堂


広島風お好み焼きの名店『八昌』。その暖簾分け店として、東京で愛されているのがこちら。

広島風の特徴である「そば入り」は、鉄板にクレープのように薄く焼いた生地にどっさりのキャベツ、もやし、そして揚げ玉、かつお粉といったトッピングもここで生地と重ね、豚肉をのせてじわじわと火を通す。

別では広島風お好み焼きの定番「磯野製麺」から仕入れる中華麺をゆで、鉄板でジュージュー。そばをカリッと焼き込むのは『八昌』ならではだそう。



牛バラはまるでステーキ。さっぱりしたぽん酢入り大根おろしのせのキャベツも添えられる。メニューは一例

このふたつと卵を重ねてからは、コテで押しながら形をまとめていき、あんなにたくさんの具材がどこへ! ?というくらい薄くコンパクトに!

しかし、食べれば外側はパリッパリに焼き込まれ、中には蒸し焼きになったキャベツやそばがみっちりと入っており、半熟卵もとろり。

渾然一体となったまろやかな味がふわっと広がるのは、広島風ならではの魅力だろう。



めりはりの効いた食感に唸る、広島風の名人芸を体験せよ!

店主の熟練した技を感じさせてくれる見事なコテさばきはおつまみにも冴え渡り、鉄板焼きメニューも豊富だ。

カウンター席では目の前の鉄板で繰り広げられるコテ技を拝見しながらまず一杯、が楽しい。




もり。福井産を使用。国産本わさびもトッピングであり
濃厚な自家製粉の十割そば『しらかめ』

経堂


賑やかな経堂の通りから一本入ったところにひっそりと佇む「しらかめ」。店に入ると左手にカウンター、所々には女将の文(あや)さんが描いた油絵が目に止まる。

広沢夫婦+母で営むこちらで楽しめるのは、自家製粉の十割そば。福井産や富山産が主だが6月半ば頃には“日本一早い新そば”である熊本の「春のいぶき」が登場。

「しっかり濃厚でワイルド。温室育ちのいちごじゃなくて、野いちごのようなひとクセある味です」と店主。

そば前と日本酒で一杯。ほろ酔いで食べる春蒔きは格別也。