世界地図の米国を指差す井上尚弥(撮影・島崎 忠彦)

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 ◇WBSSバンタム級トーナメント 決勝戦(2019年11月7日)

 ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメントで優勝を飾ったWBA&IBF世界同級統一王者の井上尚弥(26=大橋)が5階級制覇王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)との激闘から一夜明けた8日、横浜市内のジムで会見した。米大手プロモーター、トップランク社と契約し、本格的な海外進出に乗り出す井上尚は当面、現階級にとどまり、他団体王者との対戦で「最強」を証明し続ける決意を示した。

 右目上のばんそうこうが痛々しい。これまでの一夜明け会見とは違って井上尚の顔には、いくつもの傷が残っていた。5階級制覇王者ドネアと激闘の痕…それがモンスターと呼ばれる男の充実感を満たしたのか、表情は実に晴れやかだった。

 「やっと世界戦ができた、やっとボクサーになれた、という感じ。なんか傷もうれしいというか、不思議な感覚ですね」

 7日の決勝では2回にドネアの左フックを浴びて右まぶたをカット。右目がぼやけた状態のまま戦うことを余儀なくされたが、目標だったWBSS優勝を達成。トップランク社との契約も発 表された。東京五輪が開催される2020年は海外へ飛躍する年になる。井上尚は「しばらくはバンタム級に残る。まだ、やりたい相手もいるので」と明言した。

 対戦候補となるのは弟・拓真を下してWBC正規王座を死守したノルディーヌ・ウバーリ(フランス)とWBSS準決勝を棄権したWBO正規王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)の2人。ウバーリは挑戦者決定戦の勝者との対戦予定があるため、「いろいろ条件はあるけど」と前置きした上で「自分としては拓真の敵討ちをしたい」とウバーリを“指名”。「ここまで来たら最強を証明していくだけ。バンタム級で敵がいなくなるぐらいになれば」と4団体王座統一に意欲を示した。

 もちろん近い将来の転級は視野に入れている。常に強い相手を求め続ける井上尚だが、一番に望むのは最高のパフォーマンスが発揮できる場所。「スーパーバンタム級が本当に適正だと感じたら、その時に陣営と相談したい」。次戦については現時点では未定だが、来春に米国で行うことが濃厚。その時を待ちながらモンスターは、しばし羽を休める。