関西電力本店。金品受領問題を受け、役員への贈答品受け取りを禁止した=大阪市北区(須谷友郁撮影)

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 関西電力の役員らが高浜原発の立地する福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取った問題で、関電が社外弁護士による第三者委員会を設置してから9日で1カ月となる。

 関電は年内の結果報告を望むが、越年する可能性も出てきた。政府や地元自治体が問題の徹底究明を求め、第三者委も大規模な調査にする考えを示しているからだ。関電は報告がまとまるまで身動きがとれず、焦りを募らせている。

 10月29日、関電社員、役員計約2万人に告白と告発を求めるメールが届いた。

 関電と利害関係のある個人や企業から1万円(相当)以上の金品を受け取ったことはあるか、見聞きしたことはあるか−。

 記載されたアドレスをクリックすると回答を書き込める様式で、匿名でも可能となっている。第三者委から指示を受けた関電の管理部門が一斉送信したのだ。

 また、ある関電社員は「原発関連工事や地元交渉の資料は、廃棄せずにすべて取っておくように注意を受けた」という。

 ■「氷山の一角」

 関電が昨年実施した社内調査によると、原子力事業本部に在籍経験者を中心に20人が総額約3億2千万円相当の金品を受け取っていた。

 ただ、昭和60年に運転開始した高浜原発3、4号機をめぐる漁業補償交渉を知る高浜町議会関係者は「氷山の一角だろう」と指摘。関電の元幹部は「金品の受領は20年以上前からあった」と証言する。

 企業不祥事を調査する第三者委員会に詳しい郷原信郎弁護士は「原発関連工事で元助役が関係する企業などに資金が流れ、元助役から関電役員に金品として環流した、という構図が考えられる」とみて、工事会社やゼネコンなどの調査も必要だと指摘する。「本来は十分な人員と強い権限を持つ検察が捜査すべきだ。法令違反の有無を徹底的に調べ上げなければ、関電の信頼回復は難しい」

 政府も「事実関係や他の類似事案の有無などを徹底的に調査することが不可欠だ」(菅義偉官房長官)とくぎを刺す。

 ■経営を左右

 関電第三者委の委員長、但木敬一・元検事総長は「中途半端に調査を打ち切ることはしない。(報告)期限は約束できない」としており、昨年よりも大規模な調査になるのは確実だ。

 ただ関電は「早く全貌を明らかにしてもらって新年を迎えたい」(関係者)。懸案は来年7月以降に計画している高浜1、2号機の再稼働。地元同意が欠かせないが、高浜町の野瀬豊町長は「(再稼働を)議論の俎上に載せられるよう環境を作ってもらうのが第一歩」と述べ、関電が態勢を立て直せるか見極める考えを示している。

 再稼働の遅れは、1基当たり月40億円以上の収支の悪化を招く。第三者委は関電の経営を左右する存在となった格好だ。

 ■次期経営陣は

 岩根茂樹社長は第三者委の報告をもって辞任すると表明した。次期社長候補として、5人いる副社長のうち企画や営業部門が長く原子力事業との接点の少ない、森本孝氏、弥園(みその)豊一氏、稲田浩二氏が有力視されている。

 一方、会長だった八木誠氏はすでに辞任。「次は外部から」という声も上がる。東京電力が福島第1原発事故後に3代続けて外部から会長を迎えた例があるためだ。しかし、幹部の1人は「国有化された東電とは違う」と予防線を張り、関係者の多くは生え抜きへのこだわりを隠さない。

 関電は「派閥の力が強く働く会社」(関西の財界人)とされるが、第三者委の報告内容がトップを含む人事に影響するのは確実で、関係者は調査の行方に神経をとがらせている。(岡本祐大、藤谷茂樹、山本考志)

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 ■関西電力の金品受領問題 関電の役員ら20人が福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から、現金のほか金貨や高級スーツ仕立券など総額約3億2千万円相当の金品を受領していた。関電が昨年7〜9月に実施した社内調査によると、受け取った20人は平成23〜30年に原子力事業本部に在籍していた。問題を受け、八木誠会長、岩根茂樹社長を含む役員6人が辞任を決めた。