メキシコ戦に敗れ、悔しさに暮れたU-17日本代表の選手たち。この経験を次のステージで活かしてほしい。(C) Getty Images

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 ホイッスルが鳴った瞬間、選手たちは崩れ落ちた。西川潤(桐光学園)は視線を落とし、藤田譲瑠チマ(東京ヴェルディユース)はピッチに倒れ込んで天を仰いだ。試合後のミックスゾーンに到着しても、気持ちはまだ落ち着かない。鈴木海音(ジュビロ磐田U-18)が堪え切れずに嗚咽を漏らし、村上陽介(大宮アルディージャU-18)は堪え切れない様子を見せた。“こんなはずではない”。日本の選手たちは一様にそう言わんばかりの表情で、敗戦を受け入れられずにいた。

 森山佳郎監督が率いるU-17日本代表の冒険はラウンド・オブ16で幕を閉じた。二度の優勝経験を誇るメキシコを相手に0-2の敗戦。ただ、サッカー王国・ブラジルのファンを魅了したのは間違いない。

 オランダとの初戦は3−0の快勝劇。西川と若月大和(桐生一)のコンビが躍動し、欧州王者を圧倒した。相手に研究されたアメリカ戦はスコアレスドローに終わったが、続くセネガル戦ではタフに戦って1−0で勝利を掴んだ。終わってみれば、2勝1分の首位。海外の記者からも賞賛の声が上がるほどの出来だった。

 ただ、これだけのパフォーマンスを見せても、余力が残されていたことも見逃せない。森山監督がターンオーバーで選手のコンディションをコントロールし、選手の疲労度も最小限に留めた。代わりに出場した面々も上々のプレーで抜擢に応え、セネガル戦で先発起用された村上や山内翔(ヴィッセル神戸U-18)にも見込みが立った。筋肉系のトラブルを抱えていたキャプテンの半田陸(モンテディオ山形)をメキシコ戦で先発から外す決断ができたのも、村上の台頭があったからに他ならない。そうした活躍はチームの強化に一役買い、サブ組がモチベーションを下げなかった点もチームの士気にプラスをもたらした。

「試合に出ていない僕たちはしっかり負荷をかけるために、トレーニングとは別にホテル内のジムに通っていました。山内も出番を得て、セネガル戦で良いプレーをしましたけど、自分たちが腐らずにやれば、チーム全体の底上げになる」(村上)

 4強を目標に掲げていた“森山ジャパン”。「ベスト16にピークを持っていく」と指揮官が話していた通り、心身ともに充実した状態で16強戦に臨んだ。

 選手たちも自信を深めていたし、何よりもチームに勢いがあった。だが、序盤から特徴を発揮できず、0−2で敗北。精神的支柱の半田がスタメンから外れたこと。劣勢を跳ね返す力や修正能力……。敗因を挙げればキリはないが、少なからずゲームを難しくした、ひとつの出来事があった。試合前に襲った突然の豪雨である。
 
 試合後、選手たちは天候をエクスキューズにしたわけでないが、影響があったことを認めた。

「準備は今までと比べてもかなりできていて、自信を持って一人ひとりが声を出せていた。ロッカールームでも『こうしよう』という話はしていたけど、相手も同じ条件なのに試合の入りで悪天候になって、自分たちは少しそれに熱くなってしまった。それを勢いに変えていこうとしたけど、全員が空回りしたところはあると思います」(若月)

 森山監督も予想外の雷雨に難しさを感じたと話す。

「全然ボールに行けなかった。試合前の暴風雨もあり、本当に普段と違うような感じになってしまった。アップではそんなに変わった様子じゃなかったですけど、試合が始まる前の雷と暴風雨で何かもうボールに全然行けなくなっていて……」

 悪天候に対応できなかった。本来の力を出せば、勝てた可能性もあっただけに選手たちは唇を噛んだ。たが、それも実力だ。同じ条件で戦っていたメキシコは「暴風雨は関係ない」と言わんばかりに、平然とプレーしていた。日本よりも1日短い、中2日のスケジュールで、しかも試合の前々日は全て移動に費やしている。そうした中でもタフにやり合っていたし、10番のイスラエル・ルナをベンチに置いても、十分に戦えるだけの選手層もあった。

 頭で理解していても、実際に体感しないと分からない。森山監督は言う。

「日本の人にも、ワールドカップで起こっていることを知ってほしい。それを実際に観て、肌感覚で体験した指導者も増えないといけないし、選手も外へ出て行って知らないといけない。日本人の15歳から17歳の日常で味わえない経験をしてそこから学ぶ。そして、20歳から23歳あたりで世界に出て、それが日常になっていく選手が増えていく。そこは少し早まっているとは思うんです。日本の選手の成長速度はだいぶ早まっているし、19歳、20歳で世界に出て行けるようなレベルの選手が出て来ているのは間違いない。あとは指導者が国内基準だけじゃなくて、世界を肌で感じられて、そういうのを求めていくような人数を増やしていかないといけない」

 ちょっとした変化にも動じないメンタリティを持ち、12番目以降の選手を引き上げられるか。育成年代のこれからをより充実させるためにも、ブラジルでの経験値を無駄にはできない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)