この仕事じゃ結婚ムリ!? 生涯未婚率の「高い職業」

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「低収入な男性は結婚できない」と言われますが、一方で「高収入な女性も結婚できない」と言われます。

正しくは、前者の「結婚できない」は“can’t”であり、ポテンシャル的に「できない」を表すのに対し、後者は“won’t”で、どちらかと言えば意思的に「するつもりがない/する必要性を感じない」という意味合いに近いかもしれません。

一体どんな仕事についている男女が結婚しやすく、どんな仕事の男女が結婚しにくいのでしょうか。

今回は、就業構造基本調査や人口動態調査の統計の数字から「結婚できる職業、できない職業」について見ていきたいと思います。

■高まる女性の社会進出と50歳時未婚率

実は、平成の30年間で人口はわずか5%しか増えていないのに対して、有業人口は男女とも激増しています。

就業構造基本調査の1987年と30年後である2017年の比較をすると、15歳以上の未婚男性の有業人口は約1.4倍に増え、同時に、未婚女性の有業人口も約1.5倍増です。

これは決して景気が良くなったからではありません。むしろ逆で、景気が悪く、パートやアルバイトなどの非正規雇用が大きく増えたからです。

その証拠に、平成30年間で雇用者の平均給与はまったく上がっていません。給料が上がらない代わりに、この30年間右肩上がりに増えまくったのが、男女の生涯未婚の指標というべき50歳時未婚率です。

日本の未婚化の要因に「女性の社会進出」を挙げる方もよくいます。確かに、1995年時点女性の職業別婚姻数を人口動態調査から見てみると、もっとも構成比が高いのは「無職」の40%でした。当時は、学校を出て、無職(花嫁修業中という言葉が使われていた)のまま結婚していく女性が4割もいたのです。

ちなみに1995年の婚姻数は約79万組、2015年は約63万組。その差は16万組です。同期間比較による無職女性の婚姻数の減少分は約18万組です。つまり、婚姻数が減ったのは、ほぼ無職女性の婚姻数が減ったからだともいえます。

だからといって、婚活女子が無職になれば結婚できるわけではありません。

では既婚率が高い職業と未婚率が高い職業とはどんなものなのでしょう。

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■【男女別】未婚の多い職業とは

2017年の就業構造基本調査から、職業別に未婚と既婚の構成比の男女差を見てみます。

男女別全体総数に対する未既婚構成比の差分で比較していますので、左側に伸びているほうが「未婚の多い職業」です。棒グラフの青は男性、赤は女性です。

◇女性の未婚者が多い職業

☆士業やクリエイティブ職

女性の未婚構成比がもっとも多いのは、「専門的・技術的職業従事者」。これには、弁護士・会計士・医師などの国家資格を要する職業及びデザイナーや音楽家、記者・編集者などが該当します。

☆事務、販売系

同じく未婚女性構成比の多い職業として「事務・販売従事者」「販売従事者」もありますが、これは、どちらかというと全体の女性従事者数が多い(特に20代)ことによるものです。

◇男性の未婚者が多い職業

一方、男性の未婚者が多いのは、「サービス職業従事者」「生産工程従事者」「運搬・清掃・包装従事者」です。

☆介護、飲食などのサービス業

「サービス職業従事者」とは、介護職員、理美容師、調理人、飲食業接客業、ビルなどの管理人が該当します。

☆工場勤務

「生産工程従事者」とは、製鉄・機械・金属加工・食品・印刷など生産や加工、組み立て、製造に関わる仕事に従事する人たちです。簡単に言えば、工場などで働く人たち。

☆配達、清掃業

「運搬・清掃・包装従事者」とは、その名の通り、配達員や清掃業などです。

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■女性の50歳時未婚率が多い職業とは

では、未婚の構成比の多寡ではなく、女性の50歳時未婚率が一番多い職業とはなんでしょう?

ある程度母数のある代表的なものを抜粋して一覧にしました。未婚率25%を超えるものは赤く塗りつぶしています。

◇最も高いのは「美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者」

女性で50歳時未婚率がもっとも高い職業とは、「美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者」の41%です。これは、男女合わせてすべての職業と比較しても1位です。

◇2位は「情報処理技術者」、3位は「技術者」

続いて多いのが「情報処理技術者」の35%。システムエンジニア、ソフトウェア作成者などがそれに該当です。

同じく3割を超えている32%の「技術者」とは食品・電機・機械・自動車などの製造技術者です。

◇クリエイティブ系専門職も高い

注目すべきは、女性で生涯未婚の多い職業は、前述した「美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者」もそうですが、「音楽家、舞台芸術家」「著述家、記者、編集者」などクリエイティブ系の専門職が多いということです。言い換えれば、「手に職を持つ」系の職業が多いということ。

◇医師などやりがいの大きい職業も高い傾向

「医師」に関しても、男性より女性の方が2倍以上未婚率が高くなっています。

仕事に対するやりがいの大きさ、仕事自体への没頭度の高さなどが影響しているのかもしれません。恋愛や結婚より仕事の方が楽しくなってしまうということもあるでしょう。

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■女性が結婚しやすい職業とは

続いて、女性にとって「結婚しやすい職業」とはなんなのか、検証してみましょう。

◇女性の既婚率が高い職業

☆農林漁業、運搬・清掃業

未婚率でみると「農林漁業従事者」がもっとも低いのですが、これは農業をすれば結婚できるというより、結婚して農業従事者になった女性が多いためでしょう。同様に、「運搬・清掃・包装従事者」の未婚率が低いのも、結婚した後「清掃員」として働きに出た人が多いことによります。

☆弁護士といった「法務従事者」

意外なのは、裁判官、検察官、弁護士、弁理士などに相当する「法務従事者」が、未婚率も9%で、かつ男女差でも16ポイントも女性の未婚率が低くなっていることです。

とはいえ、司法試験に合格すれば結婚できるわけではありません。そこに因果はないのです。

◇「事務従事者」はレッドオーシャン

1995年時点女性の職業別婚姻数において4割を占めていた「無職」を除けば、有業女性でもっとも多かったのは「事務従事者」で27%でした。2015年時点では、「無職」を抜いて構成比24%でトップになりました。いわゆるOLと呼ばれた職業です。

確かに結婚している構成比は高いのですが、45〜54歳の女性未婚者が一番多いのも「事務従事者」で28万人もいます。これは当該年齢の未婚者全体の約半数近い42%を占めます。

事務員になったからといって、むしろそこはレッドオーシャンで、熾烈な戦いが待っているようです。

◇35歳時点までに結婚率の高い職業

ところで、アラサー婚活女子にとっては、50歳時未婚率より、35歳までに結婚できるかどうかのほうが重要だと思います。では、35歳時点までにもっとも結婚できた職業とはなんでしょうか?

☆「医師」と「著述家、記者、編集者」

すでにご紹介した「法務従事者」もこの時期の結婚は多いのですが、意外にも「医師」と「著述家、記者、編集者」が多いのです。

50歳時未婚率は「医師」は19%、「著述家、記者、編集者」は25%と、双方ともどちらかと言えば結婚しにくい部類の職業に入りますが、25歳から35歳の間に結婚した率だけは高いのです。どちらもアラサー未婚率対比で75%も減って(結婚して)います。

逆に言えば、「医師」や「著述家、記者、編集者」の女性は、アラサーのうちに結婚しないと35歳以降はほぼ結婚できる可能性がないということを示唆しています。ご注意ください。

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■選んだ職業によって「結婚チャンス」が変わる

さまざまな角度から検証してきましたが、未婚率既婚率の高い職業はわかるものの、この職業に就けば婚活に有利、というものはデータからは見つかりませんでした。

最後に、生涯未婚になる職業の男女の差分を比較してグラフ化したこちらをご覧ください。

こうして見ると、男女できれいに分かれています。男性の未婚が多い職業は、いわゆる「ガテン系」「肉体労働系」に集中し、資格や専門知識をもって活躍する女性の未婚とは大きく違います。

このように、未婚の多い男女の職業が、それぞれまったく接点のない業種であることも、男女がマッチングされない(出会いがない)要因でもあるのでしょう。

「低収入な男性」と「高収入な女性」は生涯未婚が高いといわれているのは、単に収入の多寡の問題だけではなく、選んだ職業によって「結婚チャンス」が変わるということです。

前回の記事「結婚できない人の増加は「自由な結婚」時代だから」でも紹介した通り、職場結婚比率は減少傾向にあるとはいえ、全体婚姻数の3割は職場での出会いですから。

自分の職業の未婚率や男女差を把握し、結婚願望があるのであれば、早めに婚活やひいては転職を視野に入れてみるのもいいかもしれません。

(荒川和久)

※写真はイメージです