川田利明さん告白「俺はベンツを3台、ラーメンのスープに溶かした…」 開店資金はいくらあっても足りない

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全日本プロレスの元トップレスラーで、現在はラーメン店を経営している川田利明さん。その奮闘ぶりを綴ったのが、著書『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』(ワニブックス)だ。資金繰りに苦しみ、所有していたベンツを3台、手放したという川田さん。危機をどう乗り越えたのか、本人が赤裸々に語った。

私財を店の運転資金に

赤字がどんどん積み重なり、資金繰りが苦しくなってくると、俺は私財を売り払って、それを店の運転資金に充当するようになった。

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正直、蓄えはそんなにはなかった。プロレスファンなら知っているだろうけど、全日本プロレスのファイトマネーはそんなに高くなかった。

一方、ライバル団体の新日本プロレスは、スター選手になると結構な年収を手にする。さらにテレビ番組や映画などへの出演も多かったから、副収入も多かったようだ。Tシャツやタオルなんかのグッズのロイヤリティもちゃんとあったみたいだね。

その時は「ウチはウチ、ヨソはヨソ」とあまり気にしていなかったけれど、新日本の人気選手の生活を見ていると、「やっぱり格差は大きいな」と実感させられたし、俺のセカンドキャリアもちょっとは違っていたかもしれない。

「旨いものを出していれば客が来るとは限らない」という話は、そのままプロレスにも当てはまるだろう。

俺たちはお客さんに満足してもらうために、全力で闘っていても、地方に行くと会場はガラガラということは少なくなかった。

ただ、そこで「これしかお客さんがいないんだから……」と手を抜いた試合をしてしまったら、次にこの会場で試合をする時には、もっとお客さんが少なくなってしまうかもしれない。だから俺は若手の頃から常にベストを尽くして闘った。

それが定着して、どこに行ってもお客さんがいっぱい入るようになったのは、日本を何周も巡業してから。超世代軍から四天王プロレスの時代は、どこに行ってもたくさんのお客さんが来てくれたよ。

でも『全日本プロレス中継』の放送時間が深夜になってからは、ジワジワと地方からお客さんが減っていった。

ただ、その時の俺は全日本プロレスの所属選手。馬場さんが社長だった時代は、どんなに観客動員が厳しくても、ファイトマネーの減額や遅延はまったくなかったので、そこまでシビアには考えなかったが、自分で店を持つと、お客さんが減る=即座に資金繰りが苦しくなってしまうので、悠長に構えてなんていられない。

ラーメンで全財産を失った

そうそう。ファイトマネーが安いといっても、同世代のサラリーマンと比べたら、おそらく、たくさんもらっていたほうになるとは思う。

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試合数も年間で150試合以上はあったのかな。当時は都内にいる時は、毎日、飲んで、そこから家までタクシーで帰ってくるような生活をしていた。それだけで一日に何万円も飛んでいってしまうのだが、それを普通にできるぐらいの収入はあった、ということかな。

セカンドキャリアについてはまったく考えていなかったので、将来に備えての貯蓄もそんなにしていなかった。

その分、車にだけはお金をかけた。

乗っていたのは、基本的にベンツだ。

よく「ベンツは安い車種から乗り始めて、稼ぎに合わせて、徐々にグレードを上げていくもの」と言われるけれど、俺の場合、いきなりSクラスを買った。

その後もどんどん乗り換えていったのだが、俺と三沢さんはそもそも車検を取ったことがない。それぐらい短いスパンで車を買い替えていたわけだ。これがプロレスラーとして唯一の贅沢のようなものだった。

店を始める時、俺はベンツを大中小含め3台、所有していた。

しかし、今は一台もない。

テレビ番組とかに呼ばれると、俺は自虐的なネタとして、「俺はベンツを3台、ラーメンのスープに溶かしました」と話すけれども、この店を存続させるためには、ベンツを売り払うしか、もう選択肢が残されていなかった。ネタではなく事実なのだ。

けっこう早い段階で3台とも売り払ってしまい、それからはずっと国産車に乗っている。哀しいけれど、これがラーメン屋を始めて直面した現実である。

さすがにベンツ。売るとけっこうな金額になるのだが、哀しいかな、それでも運転資金はすぐにショートしてしまう。仕方がないので、生命保険もすべて解約してしまった。つまり、俺は店を存続させるために、プロレスラーとして稼いできた金や車をすべて溶かしてしまったことになる。

そこまでして、店を続ける必要なんて、本当はないのかもしれない。

ただただ、俺の意地だけで、すべての財産を失ったのだ。

ここまで金を遣ってしまったら、撤退なんてできない。10年近くにわたり、意地と金だけを遣いまくったからこそ、潰すことなんて絶対にできないのだ。

自分でやれることは自分でやる

ベンツの話でドン引きしてしまった読者も多いかもしれないな。

俺が「開店資金はいくらあっても足りない」と繰り返し言うのは、こんな痛い目を見てきているからだ。この記事を読んでいる人がラーメン屋を始めることになっても、決してここまでは粘らないように、ここで念を押しておきたい。そう、ドン引きされるぐらいでちょうどいい。

でも、金がないからといって、味を落とすことだけは絶対にしたくない。それ以外の部分で、どんどん節約していくしかなかった。

おかげさまで手先が器用だったので、業者に頼んだら何十万円もかかりそうなダクト工事も自分でやったし、オープン当初に買ったテーブルと椅子がペンキが剥がれてボロボロになってきたら、自分で張り替えてリメイクした。買いなおしたら、とんでもない出費になるからね。

自分でやれることは、すべて自分でやる。

個人経営の店で、最大の節約術はそこにあると思う。いや、そこにしかない。すっかり「起業貧乏」になってしまった俺だけど、「器用貧乏」に陥らないように、こんな細かいことで節約をしている。

店を始めたばかりの頃は知識と経験がなくて、今振り返れば、無駄遣いをしてきた部分も多々あった。お皿なんかでも「たくさん割ってしまって、足りなくなったらどうしよう」と必要以上に多く買ってしまいがちだったが、そのあたりは経験を重ねることで、かなり無駄は省けるようになってきた。

ただ、備品で譲れないことがひとつだけある。

最近、どの店でも割り箸を使わずに、洗って何度でも使える箸に移行してきている。表向きには「エコだから」となっているが、実は割り箸ってけっこう高いから、経費削減が本当の理由じゃないか、と俺は思っている。

でもね、ラーメンを食べる時の食感は圧倒的に割り箸がいいでしょ? エコも経費削減もたしかに大切だけど、ツルツルすべる箸でお客さんにストレスを与えたら申し訳ない。だから、俺は今でも割り箸をこだわって使っている。