勝負である以上、勝つこともあれば、負けることもある。敗戦という結果は、もちろん残念ではあるが、仕方がない。問題なのは、その負け方だ。

 グループリーグ敗退も十分にありうると思われた強豪ぞろいのグループを、しかも、2勝1分けの首位で堂々と勝ち抜いてきたチームであるにもかかわらず、その勢いをどこかに置き忘れてきてしまったかのような、何とも歯がゆい負け方だった。

 U−17ワールドカップ決勝トーナメント1回戦。日本はメキシコに0−2で敗れ、準々決勝進出はならなかった。目標としていたベスト4進出はおろか、この大会での日本の過去最高成績に並ぶ、ベスト8へ進むこともできずに、決勝トーナメント1回戦敗退である。

「なんかこう……、上に行ける気がしていただけに、ショックも大きい」

 試合後、取材エリアに姿を現した森山佳郎監督は、表情をこわばらせ、開口一番そう語った。

 前の試合から中2日のメキシコに対し、日本は中3日。日本には、日程上のアドバンテージがあるうえ、グループリーグ最後のセネガル戦では、数多くのピンチをしのぎ、ワンチャンスを生かしての劇的な勝利。日本は最高の雰囲気で、このメキシコ戦を迎えられたはずだった。

 しかし、である。森山監督が困惑気味に語る。

「(試合の)最初の(ギアの)上がらなさには、ちょっとビックリした部分もあった」

 指揮官がそう語るように、日本は試合序盤、メキシコに好きなようにパスをつながれ、立て続けに決定的なピンチを招いた。幸いにして、GK鈴木彩艶が好セーブでゴールこそ許さなかったものの、日本は立ち上がりから「全然ボールへ(プレッシャーをかけに)いけなかった」(森山監督)。

 その原因のひとつには、キャプテンにしてセンターバックのDF半田陸や、ボール奪取に優れたボランチのMF田中聡といった「守備的な選手が、今日はケガで出場できなかったのが、(理由として)あったのかもしれない」と森山監督。

 と同時に、試合直前にスタジアムを襲った悪天候が、少なからず日本の選手たちの心理面に影響を及ぼした可能性は否定できない。

 試合が行なわれたブラジリアはこの日、日差しが非常に強く、30度を超える暑さに見舞われていた。試合は16時30分キックオフと、まだ暑さが残る時間に行なわれるとあって、FIFAも試合途中にクーリングブレイク(飲水のための試合中断)を設ける可能性があることを、両チームに伝えていたほどである。

 ところが、試合直前、選手入場の音楽が場内に流れ始めた頃、スタジアムの上空に立ち込めた暗い雲から、突如、バケツをひっくり返したような激しい雨が降り始めた。

 豪雨、雷鳴、強風。瞬く間にピッチ上は、視界がかすむほどの荒天に見舞われた。

 それでも、日本の選手たちに動揺はなかった(ように見えた)。試合前の集合写真を撮るときには、全身びしょぬれの状態を笑い飛ばす余裕すらあった。試合直前とは思えないほど、誰もがいつも以上の笑顔で写真に納まっていた。


初の4強入りが期待されたチームだったが...

 しかし、結果が出た今にして思えば、このアクシデントが、選手たちのいい意味での緊張感を奪い、集中力を欠如させることにつながったのかもしれない。森山監督も「ウォーミングアップの時は、そんなに変わった様子はなかったが、試合直前に豪雨があったりしたことで、普段と違う感じになってしまった」と振り返る。

 半田に代わり、ゲームキャプテンを務めたDF鈴木海音が語る。

「試合の入りは、自分たちが全然集中し切れていなくて、(ピンチでは)彩艶が全部救ってくれた。そこで失点せず、自分たちの時間を作れて、チャンスを作れるようになったが、ゴールへ向かう迫力が足りなかった。自分たちは(チャンスに)決め切れなくて、相手に少ないチャンスを決められたのは守備陣の責任だと思うし、集中し切れてなかった部分もあるので、悔いの残る2失点になってしまった」

 もちろん、ディフェンス陣だけを責めることはできない。

「ラスト20分で、ゴールへ向かう勇気が出てきた。そこから決定機が3、4度あったので、一個でも入れていれば勢いを増していけたと思うが、残念ながらそうはならなかった」

 森山監督がそう言っていたように、攻撃陣もまた、リズムに乗れないチームを救うことはできなかった。

 今大会2ゴールのFW若月大和は、「アップのときの雰囲気はよかったが、試合前の天候に、全員の気持ちが左右されてしまった」と言い、こう語る。

「前半からかなりミスが目立って、いつものようなパス回しや、相手を揺さぶることができていなかった。一人ひとりは、もっとこうしたいっていう気持ちがあったと思うが、それがかみ合っていなかった」

 そして、若月は目を潤ませながら、ストライカーとしての自責の念を口にした。

「いつもみたいなサッカーはできないってわかっていたなかで、それでも自分たちで声をかけて修正することができなかった。失点はあって当たり前だと思うし、今大会はディフェンスが無失点でずっとやってきてくれて、今度は前(の選手)が点を取って盛り上げなきゃいけないところで、自分のところに何本もチャンスが回ってきたのに決められなかった。そこは、今大会で一番の課題であり、悔いが残る」

 このチームは、FW久保建英らを擁した2年目のU−17日本代表に比べ、選手個々を見れば、決して能力の高いタレントがそろっていたわけではない。だからこそ、チームとして戦うことが重要であり、そこを追求してきた結果がグループリーグでの好成績だった。

 だが、裏を返せば、チームとしての機能性が低下したとき、それに代わる武器を持ち合わせていなかった、ということでもある。森山監督も、「ある程度ボールを持てるチームではあったが、最後の圧力をもうちょっと(かけられるタレントがいれば)……」と話し、顔をしかめるとおりだ。

 チームの歯車ががっちりとかみ合い、やることなすことうまくいったのが、3−0で勝利した大会初戦のオランダ戦だとすれば、このメキシコ戦は、ちょっとした緩みから、わずかにズレた歯車が、最後までかみ合うことがなかった試合、ということになるのだろう。

 もちろん、想定外の悪天候は、両チームにとって同じ条件である。日本だけが不利を被ったわけではない。突然のアクシデントがなかったとして、勝敗が入れ替わっていた保証もない。

 しかし、だとしても、グループリーグではあれほど気持ちの入ったプレーを続けた選手たちが、不可解なまでに集中力を欠き、多くのイージーミスを犯す様子を見せられてしまうと、試合直前の天候激変がうらめしい。

 何とも悔いが残る負け方だった。