福田正博 フットボール原論

■18歳の久保建英は、現在マジョルカで経験を重ねて成長を続けている。この先の日本代表を背負う俊英が、森保ジャパンでもっとも輝くポジションはどこなのか? 元日本代表の福田正博氏が考察した。


現在の日本代表チームで最年少の久保建英

 ここまでのW杯アジア2次予選での久保建英の日本代表での起用法は、そのプレーを楽しみにしていた人にとっては、少し物足りなさを覚えたことだろう。

 久保は、W杯2次予選初戦のミャンマー戦は後半36分から途中出場。モンゴル戦で出場機会はなく、タジキスタン戦は後半42分からピッチに立った。結局、プレータイムはアディショナルタイムを含めて6分ほどだった。

 森保一監督は、久保を慎重に育てようとしているのだと思う。久保本人は「サッカーの世界では、もう若くはない」と言うが、日本にあれほどの才能を持った18歳はほかに類を見ない。これからの日本代表を背負っていく逸材を、不必要に消耗させたくないと考えるのは当然だろう。

 ただ、そうした考えとは裏腹に、久保のプレーを見てしまうと、「大胆に起用してもいいのでは」という思いも頭をもたげてくる。

 相手のレベルにかかわらず、途中出場のわずかな時間で「違い」を発揮できる選手というのは、実は多くない。ボールの持ち方やピッチ内でのアイデアが、ほかの選手とは圧倒的に違う。それだけに、スタメンで出場する久保のプレーを見たくなってしまうのだ。

 タジキスタン戦での久保は、右サイドMFではなくトップ下で起用された。右サイドの堂安と入れ替わる時間帯もあったが、縦方向への奥行きが狭いトップ下でのプレーにも問題なく適応していた。ただ、攻撃する時間帯の長いW杯アジア2次予選にあっては、右サイドの方が久保の持ち味を発揮しやすいだろう。

 左利きの選手が右サイドで起用されると、攻撃時に視野を確保しやすいというメリットがある。テクニックと判断力を併せ持つスキルの高い久保にとっては、いろんなアイデアを出しやすいはずだ。一方で、W杯アジア2次予選の対戦相手なら問題はないが、相手のレベルが高まるにつれ、このポジションは守備的な負担も増えていく。そうしたときに、久保が対応できるかが課題になる。

 日本代表が2−0で勝利した9月のパラグアイとの親善試合後、森保監督は久保について攻撃面を手放しで褒めたあとに、「守備の強さが足りない。上げてもらう必要がある」と指摘した。しかし、最近のマジョルカでのプレーを見ていると、球際での強度もアップしてきていると感じる。

 もちろん、まだ一流のレベルには達してはいない。だが、マジョルカという守備に追われる時間が多いチームにあっては、試合に出るためには否応なく守備を意識しなくてはならない。守備は実戦経験を積むことで高められるものだけに、今後、強度はさらに増していくはずだ。
 
 久保の守備で注視してもらいたいのは、自分の背後にボールを入れられたケースの対応だ。攻撃的ポジションの選手が守備をする場合、前方向への守備はできるものの、自分の背後にボールを入れられるとポジショニングに苦労することが多い。日本の攻撃的な選手でも、どこに戻ればいいかの判断ができなくなっていることが少なくない。そのため、まわりからは「あとは任せた」という感じに見えてしまう。

 久保は背後にボールを入れられた局面でも、自陣に攻め上がった相手選手のマークについて、きっちり取るべきポジションに戻ってくる。ほかにも、相手がボールを一度下げたら前へと詰め、自分の後ろにパスを出されたらしっかりと戻る。こうした動きは、1度や2度なら誰でもできるが、久保は惜しみなく何度でも動き直している。この部分に彼の守備への高い意識が垣間見える。

 守備面で成長を見せている久保が、日本代表のスタメンを張る日はそう遠くないだろうが、その時にどのポジションで起用されるかも興味深いところだ。

 現状の日本代表では、トップ下に南野拓実と鎌田大地、右MFに堂安律と伊東純也、左MFには中島翔哉と原口元気らがいる。対戦相手や起用される味方との兼ね合いもあるが、私は久保を左サイドで起用するのも面白いのではないかと考えている。

 中島はボールをもらってドリブルで仕掛けることが多く、左サイドから中央に切れ込んでシュートに持ち込む攻撃は魅力だ。しかし、対戦相手によっては、そのボールをもらう位置がセンターライン付近で低くなると、脅威にならないケースもあるだろう。また、所属するポルトでも指摘されているが、守備面の不安要素もある。

 原口元気は攻守に全力を尽くし、チームにダイナミズムを生み出せるタイプで、攻撃面に目を向けると、味方を上手に使うよりも、個で打開していく。引いて守ってくる相手に対しては、原口の特長があまり生きないケースもある。

 久保は、まだ日本代表の左サイドMFで起用されたことはないものの、戦術理解度の高さがあるので、混乱することなく対応できるはずだ。柔らかいボールタッチでタテに抜けて、ピンポイントでクロスを上げることもできるだろうし、中央に切れ込んでワンツーの折り返しをシュートに持ち込むこともできる。パスを出すこともうまいだけに、攻撃の幅は広がる。

 その場合、右サイドMFで誰を起用するかがポイントだ。堂安とも共存できるが、彼はゴール前に入ってきてシュートをすることが多い。そうなるとゴール前の中央は敵味方の選手で混み合ってしまうことになる。一方、伊東ならばそのタテへの圧倒的なスピードが相手に脅威を与え、中央を固めることにはならないはずだ。

 伊東がタテ突破を狙うことで、相手DFがサイドに引き出されてゴール前にスペースが生まれ、サイドから中央に絞った久保が存在感を発揮しやすくなる。また、久保の視野の広さと技術の高さがあれば、逆サイドにいる伊東のスピードを生かしたパスも出せるだろう。

 リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドのように”特別”な選手ならば、その選手が力を最大限に発揮できるようにチームをつくるのも手だが、ポテンシャルの高さは世界中が認めるところではあるものの、久保はまだその域にあるわけではない。久保には、与えられた時間のなかで自分のよさを生かし、存在感を示しながら、一段ずつステップアップしていってほしい。

 W杯アジア2次予選は、11月14日にアウェーでのキルギス戦があり、11月19日には大阪でベネズエラとの親善試合が組まれている。現状の日本代表での久保は、攻撃のオプションという位置づけと思われるが、ここでのプレーの出来がスタメンへ近づくことになる。彼がどんなプレーを見せてくれるか楽しみにしたい。