By Wavebreakmedia

厚生労働省に掲載された花粉症に関する解説によると、「ある最近の調査によるとスギ花粉症の有病率は全国で20%を超える」とのことで、多くの日本人が花粉症に罹患(りかん)しています。そんな花粉症の良い側面として、「花粉症のピーク期には暴力犯罪が減少する」という研究結果が報告されました。

More sneezing, less crime? Health shocks and the market for offenses - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167629618308221

Violent Crime Rates Go Down When Seasonal Allergies Peak in The US

https://www.sciencealert.com/a-strange-thing-happens-to-violent-crime-rates-when-the-pollen-count-gets-high

この研究結果を報告したのは、アメリカのペンシルベニア大学で犯罪学を研究しているAaron Chalfin氏が率いる研究チーム。研究チームは、アメリカの17都市で発生した犯罪数と気象データを毎日比較しました。その結果、花粉の飛散量が特に多かった日には、暴力犯罪の発生数が約4%減少したとのこと。

研究チームは花粉によって影響を受けたとみられる犯罪の傾向として、「パートナーや家族の間で起きる『身内による暴力犯罪』が大きく影響を受けた」と語っています。花粉の飛散量が特に多い日には、身内による暴力犯罪は4.4%減少したそうで、身内による暴力犯罪の減少が暴力犯罪全体の減少に大きく貢献したとのこと。



By Farmgirlmiriam

この研究はあくまで暴力犯罪の件数と花粉の飛散量の間に相関関係を発見したというもので、因果関係についての発見ではありません。研究チームは暴力犯罪の件数と花粉の飛散量の因果関係について、「花粉は体調に影響を与えるため」と解釈しているとのこと。

研究チームは花粉が人の行動に影響を与える事例として、「花粉の飛散量が特に多い日には、レンタル自転車の利用者数が8%減少することも発見しました」と述べています。研究チームのMonica Dezaさんは、「花粉は人を疲れさせます。我々が論じているメカニズムは、人は疲れて無気力になれば怒りにくくなり、その結果として暴力犯罪の減少が生じるというものです」とコメントしています。



By Vladdeep

また、研究チームによると、花粉の飛沫量の増加に連動する動きを見せた犯罪は、暴力犯罪に限られたとのこと。窃盗、強盗などの金銭を目的とした犯罪率には影響が見られなかったそうです。この結果について、研究チームは「暴力犯罪は衝動的に起こるもので、人の気分が大きく関与しますが、金銭目当ての犯罪は計画を要し、気分による影響を受けにくいため」と解釈を述べています。

花粉症が人に影響を与えるという論旨の研究は、他にもアメリカのメリーランド大学医学部の研究チームの発表した「花粉症と人の気分に影響を与え、うつ病や不安症を再発させる」というものがあります。

Changes in Severity of Allergy and Anxiety Symptoms Are Positively Correlated in Patients with Recurrent Mood Disorders Who Are Exposed to Seasonal Peaks of Aeroallergens

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2678838/



なお、アメリカ疾病予防管理センターが公表している統計情報によると、アメリカでの花粉症の罹患者は約2400万人で、全人口の約7%とのことです。

FastStats - Allergies and Hay Fever

https://www.cdc.gov/nchs/fastats/allergies.htm