チームのリーグ5連覇にストライカーとして大きく貢献した田中。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 なでしこリーグ1部は、11月2日に最終節が行われ、全90試合を終えた。女王、日テレ・ベレーザが今季もリーグ戦を制して、空前のリーグ5連覇を達成した。その原動力となったのがキャプテンであり、エースの田中美南だ。
 
 これまでは、リーグの終盤戦になると「今節、ベレーザの優勝が決まる条件は…」という話題が挙がったが、今季は優勝争いそのものが最終盤までもつれた。それは、永田雅人監督体制のベレーザを他チームが研究し、差を縮めてきた証左でもある。
 
 そして、最もベレーザを苦しめたのが、5連覇の初期にベレーザを率い、今季から浦和レッズレディースの指揮官に就任した森栄次監督だった。「森監督に代わって、みんなが伸び伸びとプレーしていて、選手の力を最大限に引き出してきた」と田中。ベレーザは、13節の直接対決で浦和に敗れ、1試合消化試合が少ない暫定順位ではあったものの、最大勝点6差にまで広げられた。
 
 しかし、逆境がベレーザの底力を引き出した。「それまでも必死でしたが、浦和に負けて、それ以上に必死になったというか、勝ちに対してのこだわりが増しました。そして、チームとしての底力があったのかなと思います」(田中)。
 
 日程変更により中2日で挑んだジェフユナイテッド千葉レディース戦(2−1)、INAC神戸レオネッサ戦(2−1)などの難関を乗り越え、浦和に追いついた。このマッチレースでベレーザの大きなアドバンテージになったのが、得失点差。17節、同勝点で並んでいた浦和が伊賀FCくノ一に敗れ、ベレーザがSC長野パルセイロレディースを下すと、その時点でベレーザの優勝は決定的なものとなった。
 
 田中は最後の2試合こそ出番がなかったが、それまでに合計20点。さらに言えば、そのうちの8点は、チームで最初のゴールという重要な得点だった。今季も、田中の力が優勝に大きく貢献したのだ。
 
「これまでのシーズンよりも先制されるシーンが多かったのですが、逆転で勝ちにもっていけるゲームが増えたと思います。マイナスをプラスに持っていける力というのが、チームとして感じられるので、そこが強みだと思います」。
 
 5連覇を引き寄せたエースは、自らの活躍ではなく、チームの成長を語った。
 
 では、このなでしこリーグのナンバーワン・ストライカーが、来年の東京オリンピックでプレーするためには、何が必要なのだろうか。今、アピールすべきは「ケタ外れの得点力」(これは、既に彼女が残したここ数年の数字が示している)ではなく、「夏場の連戦中、どんな起用法もこなせる柔軟性」だろう。
 
 先月のなでしこジャパンの国際親善試合、カナダ戦でも「状況に応じたプレー」を、改めて代表選手へのキーワードに挙げた高倉監督。「頭の中でシミュレーションするだけでも難しい」(高倉監督)と、来夏の戦いでは複数ポジションをこなすこともメンバー入りの絶対条件としている。
 
 もともと、2012年のヤングなでしこでは、右サイドのアタッカーとして出場した田中。機動力を活かし、チームメイトの得点もお膳立てした。多くの攻撃バリエーションを持っていた当時のチームについて「あの時はやっていて楽しかった」と振り返っている。
 
 もちろん、より多くの責任とプライドを感じる現在は「中央での仕事にこだわりを持っている」が、本来は、点を取る以外の仕事もできる選手だ。カナダ戦で見せたサイドのルーズボールや、遠目の相手ボールホルダーを追いかける長いラン。さらに、中央から外へ開いてのチャンスメイクなど、チームを助けるプレーができたからこそ、多くの新戦力が再選を阻まれる中、南アフリカ戦での連続招集に繋がった(招集後、怪我で途中離脱)。

 連携を成熟させた女子ワールドカップ組に比べて、やや後ろからのスタートを強いられる田中。先行集団に追いつくためには、一つひとつのオーダーを忠実にこなし、指揮官やチームメイトからさらに大きな信頼を勝ち取る必要がある。
 
取材・文●西森 彰(フリーライター)