移動ロボットや無人搬送車(AGV)では移動部と作業部を分けてモジュール化し、仕事に合わせて交換するデザインは少なくない。だが実際に普及している製品は多くない。それは一体設計によって極限まで軽量化したり、機能を限界まで詰め込むためだ。製造しやすい車よりも、売れる車を競うとモジュール化のメリットが小さくなっていく。人を乗せるクルマは安全性も重要な要素だ。

独シェフラー 倉庫で集荷、そのまま現場に

 独シェフラーは4輪駆動の移動プラットフォーム「ムーバー」を開発。インホイールモーター式の4輪がそれぞれ90度回転するため、その場回転や真横への走行ができる。小回りが利くため、物流倉庫の棚の間を走って集荷し、そのまま外へ配送に出られる。想定可搬重量は450キログラム。宅配やタクシー、薬局サービスなどの利用を想定する。

 サービスを担う車室や移動プラットフォームをモジュール化しつつ、試作車は上下を一体設計して作っている。シェフラージャパンシャシーディビジョンの斎藤正ヴァイスプレジデントは「人を乗せると高い衝突安全性が求められる。完成車メーカーやモビリティーベンチャーなどのパートナーが必要になる」と説明する。人間か貨物かの違いだけでも、移動プラットフォームに求められる機能やコストは大きく変わる可能性がある。独シェフラーもサービス事業者との協議はこれからだという。

 東京モーターショーでは、事業性を先行し、自動車会社の実現したい未来社会が示される。視点を変えると、産業構造を変え得るコンセプトを出し、実現に向けて仲間を集める場だ。トヨタの新設計思想「TNGA」など、乗用車のモジュール設計が浸透するまで10年近い時間がかかっている。今後は作り手だけではなくサービス事業者を巻き込んだ設計に広がる。乗用車と商用車を含め、クルマのプラットフォームはどこに向かうのか。大手や系列会社さえ躊躇(ちゅうちょ)する長い道のりだ。ベンチャーにとっても参入の余地は多く残されており、チャンスが眠っている。