最初の晩餐』は主演・染谷将太、共演に戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏と各世代の実力派俳優が集結した1作。亡くなった父の通夜ぶるまいに出された数々の手料理から、家族の歴史や見えざる過去が紐解かれていく。巧みな構成と丁寧な心の機微の表現に魅せられる2時間だ。

東麟太郎(染谷)が、父・日登志(永瀬)の葬儀のために故郷へ帰ってくる。母・アキコ(斉藤)が、通夜ぶるまいは自分で作ると言い出し、麟太郎も姉の美也子(戸田)も戸惑うが、最初の1品・目玉焼きを食べて父が初めて作った料理だと気がつく。料理を食べ進める麟太郎らの脳裏には、父と母が再婚した日のこと、連れ子の兄シュン(窪塚)と打ち解けた日のことと、懐かしい過去が料理の味とともに蘇ってくる。

通夜の夜パートと過去パートが交互に映し出される本作にて、現代パートの中心に立った染谷、過去パートを担った永瀬に顔を合わせてもらった。共演は3度目、互いに信頼を置いている間柄といえよう。俳優としての生き様がにじみ出る、珠玉の言葉が紡がれるインタビューとなった。

――おふたりは『パンク侍、斬られて候』以来のご共演ですよね?

永瀬 そうか…! 以来だね!

染谷 そうですね! けど、現場ではお会いしていないんですよね。『最初の晩餐』でもご一緒のシーンが少なかったので、現場では、本当に一瞬のすれ違いでした。

永瀬 そうだね。『パンク侍』の前に共演していたとき(※『ドライブイン蒲生』)は、あのときも僕がお父さんだったんだよね。

染谷 そうですね。

――染谷さんは、かなり最初のほうから本作出演を決めていたそうですが、特にどのあたりに惹かれたんでしょうか?

染谷 家族を描いているのに、「家族映画です」ということでもなく、説教臭くなく、「そのままでいいんだよ」と言ってくれているような作品だと思ったんです。別に分かる必要もなく、「分からなくていいんだよ」とも言っているような脚本だったのが、自分の中では感動と新しさで、すごく染みました。

永瀬 染谷くんのおっしゃる通りで、家族にはいろいろな形があっていいことを、リアルに書いていたというか、「ベタベタしたいい家族ばかりでもないだろう」みたいなところがありましたね。セリフでも「家族って何、分からない」ということをストレートに出していますし。僕は回想シーンに主に出ていますけど、脚本の入り方がすごく上手だったんです。今までいろいろな作品で回想シーンはあったし、やりましたけど、フックが食なのが新鮮だなと思って惹かれました。あとは、タイトル。『最後の』ではなく『最初の』が、すごくいいなと思いましたね。

――永瀬さんは日登志として、20年もの歳月を演じることになったわけですが、そのあたりはどう準備されたんですか?

永瀬 撮影が最初は冬で、子役の方々とずっとご一緒して、回想パートを撮っていたんです。次の現代パートが初夏で、ちょっと撮影の時間も空いていたので、その間に老けられる分は老けておこうかな、くらいで。病に侵される役だったので準備はしていましたけど、あとは皆さんに助けていただきました。

――長男と奥さんとのごはんのシーンは、観た方の記憶に強く残るのではないでしょうか。

永瀬 窪塚くんともすごく久しぶりにご一緒したので、楽しみでしたね。彼の「辛(かれ)えな」っていう演技、あの言い方もたまらなかったですね。斉藤さんははじめましてでしたが、ふたりにとてもいいシーンにしていただいたなと思っています。

染谷 観ていて……普通に感動しちゃいました。自分が出てこないと一観客になってしまうくらい、過去のパートは見入ってしまいました。

――染谷さんは、どのように役作りをされたんですか?

染谷 この作品は監督自身の実体験をすごく交えているので、監督のことをずっと想像はしました。ただ、監督に「これってどういうことですか?」とは、絶対に聞かないようにしようとは自分の中で決めていて。というのも、ほぼ実体験なので明確に答えられるでしょうから、聞いてしまうとなぞろうとしてしまう恐怖があったんです。聞かずに、でもずっと「こういう性格かな?」「こういう思いがあるのかな?」と想像を膨らませて監督を見ていました。

――永瀬さんからご覧になって、染谷さんの演技はいかがでしたか?

永瀬 きっと染谷くんは子供の(過去の)パートを見て、自分の中で消化して、現代パートをやられていたと思うんですが、その消化具合が素晴らしくて。毎回思うんですけど、静と動のお芝居が独特というかすごく好きで、そこがすごく反映された作品になっていると思います。僕の静と動とは全然違うアプローチだなと、観ていて楽しくなりますね。……作品が違って申し訳ないけど、『パンク侍』は、もうすごかったもんね(笑)!

染谷 (照)。

永瀬 当時、染谷くんにも言ったと思うんですけど、一番笑ったキャラクターだったから(笑)。染谷くんには本当に笑わせてもらって、あのキレっぷり。

染谷 『パンク侍』は本当に楽しすぎたので、永瀬さんに楽しんでいただけたのなら何よりです(笑)。

永瀬 昔、塚本晋也さんとご一緒したことがあって、脚本を読んだときに「こうなるのかな」という想像を塚本さんは動のときにぴょーんと超えるんです。染谷くんにも同じものをすごく感じました。キレっぷりが素晴らしいです。

――『パンク侍』染谷さんの腹ふり、衝撃的でした(笑)。『最初の晩餐』だと、どのあたりの静、動の演技に惹かれたんでしょうか?

永瀬 通夜ぶるまいの席で、親戚のよくあるいちいち説教臭いおじさんに対して、ずっとためていたものがパンと出るところとか、ですね。あと、お姉ちゃんとお母さんの話を聞きながら、すっと静になるシーンは素晴らしいなと思って観ていました。あと、相槌がものすごく上手だよね。「ああ」、「うん」、「そうだね」という相槌って、実はすごく難しいんですよ。それが染谷くん風、今回で言えば麟太郎風で出てくるから。

染谷 いえ、本当に……恐れ多いです。

――反対に、染谷さんからご覧になって永瀬さんはどのような存在でしたか?

染谷 僕は過去パートが大好きで、自分が現場にいないから客観視できるんですけど。台本ではないところで、確実に子供たちと家族の雰囲気や空気を永瀬さんが作っていらして、それに子供たちがときめき出しているのが、すごく伝わってきて。ワクワクして仕方なかったんですよね。なんか自分も息子のひとりで観ている気持ちになるくらい。あの中で確実に永瀬さん、父があの家族を作っているというのはすごく感動的でした。

――おふたりの俳優としての立ち居振る舞いに関して、カメラの前に立つときに意識していることや肝に銘じていること、俳優としての指針があればぜひお伺いしたいです。

染谷 何ですかねえ……いやあ。難しいですよね(笑)、とずっと思っています。怖いですし、説得力も出さなきゃいけないですし。でも、立つからには絶対に責任を取らないといけないとは思っています。カメラの前というか、与えられたことは絶対に全うしようという責任感を絶対に持つようにしています。最低限、それはまず。全うできているかどうかは、自分が判断できることではないんですけど。

永瀬 ドキュメンタリー映画でない限りは、作品を作るという意味で、虚構というか嘘の世界を僕たちは演じるんだけど、そこにもう1個余計な嘘を乗せてしまうと、お客さんに絶対にばれると思うんです。染谷くんの言うように、与えられた役を全うするというか、100%、120%嘘をつかずに生きるというのかな。それが大事なのかなとずっと思っています。できているかできていないかは別として。映画って、共演者やスタッフの方々とのチームワークですからね。そう思いますね。(取材・文=赤山恭子、撮影=iwa)

映画『最初の晩餐』は、2019年11月1日(金)より全国公開中。

出演:染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏 ほか
監督:常盤司郎
公式サイト:saishonobansan.com
ヘアメイク:AMANO/スタイリスト:清水奈緒美<染谷将太>
ヘアメイク:勇見勝彦様(THYMON)/スタイリスト:渡辺康裕様(W)/衣装協力:YOHJI YAMAMOTO<永瀬正敏>
(C)2019 『最初の晩餐』製作委員会