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 10月17日、麻薬王ホアキン・グスマン(エル・チャポ)の息子のひとり、オビディオ・グスマン(エル・ラトン、28歳)がメキシコの国家警備隊に逮捕されたが、彼のカルテル組織シナロアの猛攻な反撃を受けて釈放するという事件があった。

 この事件後に、逮捕から釈放に至るまでの背後にあった状況が次第に明らかにされつつある。

◆メキシコのアムロ大統領の「太陽政策」と米国の思惑

 まず、米国の麻薬取締局(DEA)が オビディオ・グスマンの居場所を突き止めた時に、在メキシコ米国大使館のカルロス・パスクアル大使はそれをどこに伝えるべきか困惑していたことがウィキリークスによって明らかにされた。つまり、メキシコ軍、連邦警察、あるいは海軍。どの相手も信頼するには十分ではないということなのである。というのも、マヌエル・アンドレス・ロペス・オブラドール(アムロ)が大統領に就任して以来、それまでメキシコ政府が12年間採用して来たカルテルのボスを徹底して捕まえる戦術ではなく、アムロは彼らに対して柔軟な姿勢で取り組んでより平和的な理解を求めて彼らによる暴力を減らそうとしていたからである。ところが、事態は逆にカルテルはより狂暴になって行ったというのが現状である。(参照:「Infobae」)

 オビディオ・グスマンを捕まえて米国で裁く為に送還するのを望んでいる米国にとって、アムロのカルテルに対する柔軟な取り組みに不信の念をもっている。そのため、パスクアル大使はこの3つの組織にその情報を流すのではなく、彼らと情報を共有してカルテルのボスを追跡している米国の諜報員チームに大使はそれを伝えることにしたということなのだ。

 ただ、最終的にメキシコの軍と警察が米国の諜報員からの情報を受け取ってからの対応は、オビディオ・グスマンを捕まえるということで今回は一致した。特に、アムロは、彼を逮捕しないでいることで、米国にメキシコ政府がカルテルと共謀して彼を逮捕しようとしていないと思われることを懸念したからである。

 アムロの脳裏にあるのは米国、カナダ、メキシコの新自由貿易協定T-MECがまだ米国の議会で批准されていないことを考慮してオビディオ・グスマンを逮捕しないでいると、その批准にマイナス影響するのではないかと懸念しているというのだ。(参照:「Infobae」)

◆裏目に出たアムロ大統領の判断

 しかし、アムロはカルテルに取り組む姿勢に不慣れなのか、あるいは生ぬるいのか、カルテルの幹部を捕まえるのに通常であれば強烈な印象を与えるほどに大勢の部隊を派遣するのが常識である。ところが派遣したのは僅か35人からなる国家警備隊であった。

 それに対してシナロアが即座に対応したのは200人の殺し屋を送ったのである。それも不意を衝かれての反撃ではなく、そのような事態が発生した場合はどのように対応すればよいのかということに事前の訓練をしているというのが伺えた反応だというのだ。

 オビディオ・グスマンがいる場所だけではなく、市街の主要なアクセス地点を包囲し、車を放火したり、軍人や警察官の家族が住んでいる地域にも侵入して政府を脅威にさらした。更に、オビディオ・グスマンを釈放することに決めた決定的な要因となった2つのビデオを警備隊本部に送った。このビデオのひとつには捕捉に向かった警備隊員少なくとも6人が逆に彼らに拘束されている画像が映しだされていたということ。もう一つのビデオは隊員のひとりが頭に銃弾を撃ち込まれて死亡している映像であった。(参照:「Sin Embargo」)

◆米軍使用の重機関銃で武装したカルテル

 更に、カルテルが反撃に持ち込んで来た武器のひとつに米軍が使用しているブローニングM2重機関銃がある。1分間に500発以上発射でき、この性能を凌駕するものは今のところないという代物である。