<子どものときに親に嘘をつかれたことが多い人ほど、大人になって親に嘘をついたり、心理的な問題を抱えることが多い傾向にあることが明らかになった......>

子育てでのちょっとした嘘が子どもの心理に影響

「良い子にしないとお巡りさん呼ぶよ」「早く来ないと置いて行っちゃうよ」などなど、親として、子どもに言うことを聞かせようとちょっとした嘘をつくこともあるのではないだろうか。逆に、自分が子どもの頃に親にこんな些細な嘘をつかれた経験もあるかもしれない。

しかしシンガポールの大学でこのほど行われた調査により、子どものときに親に嘘をつかれたことが多い人ほど、大人になって親に嘘をついたり、心理的な問題を抱えることが多い傾向にあることが明らかになった。

調査は、シンガポールのナンヤン工科大学(南洋理工大学、NTU)が、カナダのトロント大学と米カリフォルニア大学サンディエゴ校、中国の浙江師範大学との協力で行ったもの。結果は、児童心理学専門の医学誌「ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・チャイルド・サイコロジー」に掲載された。

379人のアンケートと自己診断を分析

NTUによると、シンガポールで18〜28歳の379人に、オンラインで2種類のアンケートに答えてもらった。1つ目のアンケートは、子どもの頃に親にどんな嘘をつかれたかを聞くもので、食事に関するもの、ある場所から去るまたはとどまることに関するもの、行動の良し悪しに関すること、お金に関することの4カテゴリー、16パターンの嘘だ。

例えば、何かおねだりをした時に「今日はお金を持ってきていないからまた今度ね」などで、それぞれの嘘のパターンに対し、自分が親につかれた嘘に当てはまるか否かで「はい」「いいえ」「覚えていない」で答えてもらった。

2つ目のアンケートは、大人になった今の自分は親にどのくらい嘘をついているか(自分の行動についての嘘や、他人のためにつく嘘など12パターン)を聞いた。それぞれの嘘のパターンに対し、1(まったくない)から5(非常によくある)の点数を入れてもらった。

参加者はさらに自分について、外在化された問題(攻撃性、規則破り、過干渉など)と内在化された問題(心配やうつ、引きこもりなど)について自己診断してもらった。

これらの回答を分析したところ、子どもの頃に嘘をつかれたことが多い人ほど、大人になって自分も親に嘘をついていると回答した。また、攻撃的になったり、規則を破ったり、過干渉な行動を取ったりするなど、社会的に好ましくない問題を発達させてしまうリスクが高くなることも分かった。

松丸さとみ