「会社を買う」がもっと一般化したほうがいいという話と事業承継における弁護士の役割

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国内の企業の7割を占める中小企業の社長の平均年齢が59歳で間もなく引退を迎える。しかしどの企業も後継者が見つかっていないため、引退ができない。家族に継がせるのか、社内の誰かに譲るのか、あるいは外部の人間に頼るか。いずれかの方法しかないが、どの選択肢も簡単ではない。事実、「教えて!goo」でも「親の会社を継ぐか、継がないかで悩んでいます」という投稿があった。

もしも後継者が見つからなかった場合は黒字倒産だ。でも黒字なのに倒産はもったいない。だったらここはシンプルに考えて会社を売るというのはどうだろうか。適正価格かどうかは勿論重要だが、少なくとも倒産よりマシだ。ということで今回は会社の売買も含めて、事業承継の基本的な情報からその手順まで幅広く話を聞いてきた。伺ったのは富士見坂法律事務所の井上義之弁護士だ。

■事業承継とは?後継者の候補は?

まずは事業承継の意味と後継者になりえる候補について尋ねた。

「事業承継の具体的な中身は(1)経営権の譲渡、(2)自社株の譲渡、(3)事業用資産の譲渡と言えます。後継者は親族を後継者とする『親族内事業承継』。従業員など親族外の者を承継者とする『親族外事業承継』。第三者に会社を売却する『M&A』です」(井上義之弁護士)

事業承継を弁護士に頼るメリットはなんだろうか。

「弁護士は、それぞれ専門分野を持つ他士業と異なり、その事案全体を俯瞰したうえで、さまざまな視点から検討を加え、依頼者の希望を踏まえた最も望ましいと思われるアドバイスをします。弁護士に頼む最大のメリットは、そうした総合的なアドバイスが受けられることではないかと思います。あとは弁護士は代理人として交渉が可能という点も他士業とは異なる弁護士のメリットと言えるでしょう」(井上義之弁護士)

■事業承継にかかる期間と手順

それでは次に事業承継の手順について聞いた。

(1)現状の整理

「資産・債務、売上・利益の確認、人的側面として現経営陣が退いた後に誰が指揮を執っていくか、自社および業界の見通しなど、なるべく全体を鳥瞰することを意識すべきです」(井上義之弁護士)

(2)希望の整理

「誰に事業承継するのかといった希望を整理する必要があります。具体的には、親族内か、従業員か、第三者かを検討することになります。適切な後継者を見つけるにはそれなりの時間と労力をかける必要があるでしょう。なお、後継者が見つからない場合、廃業や会社を手放すことも視野に入れます」(井上義之弁護士)

(3)手続き(法務、税務)

「後継者が決まれば、後継者への経営権の集中(法務対策)、納税負担軽減対策(税務対策)を具体的に進めていきます。その際に重視すべきは経営権の集中や株式の承継です。これができていないと、金銭面以外の重大な問題が生じかねないので、せっかく利益が出ていても、効率的な事業運営が困難になる場合があります」(井上義之弁護士)

(4)外部関係(金融機関や取引先対策)

「会社には、多くの関係者がいます。従業員との関係はもちろん、金融機関、取引先との関係についても留意する必要があります。事業承継の結果、従業員や取引先が離れたり、金融機関との信頼関係を損ねてしまわないように配慮が必要でしょう」(井上義之弁護士)

一般的に事業承継には3年以上の期間が必要だといわれている。ますます簡単ではないことがわかるだろう。

■後継者が見つからないなら買ってくれる人を探せばいい

冒頭でも触れたように、後継者を見つけるのは簡単ではない。仮に見つかっても、上述の通りさまざまな障害を乗り越える必要がある。だったら買ってくれる人を探すのがコストは最小限だ。重要なのは利益の過多ではなく、継続して利益を出しているかどうかだ。安定した利益があれば、買い手もきっと見つかるはずだ。

そして買い手は大企業を買うわけではない。ここで話しているのは日本中至るところで見かける中小企業である。従業員が数名でも何十年も安定して利益を出し続けている企業はいくらでもある。そのような企業を買って、安定した収入を得るのも悪くはないのではないだろうか。

起業は成功確率が低い。会社員のままでは将来不安。副業は雀の涙。株や不動産投資はリスク大。「会社を買う」という新たなお金の稼ぎ方が、今よりも一般化することは、当事者のみならず日本経済にとってもよいことであるのは間違いない。

●専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
依頼者の置かれている状況はさまざまです。詳しいご事情・ご希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。お気軽にご相談ください。

ライター o4o7

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