災害に応急的に備える場合に、100円ショップでどれほどの防災の備えができるか探してみた(写真:清十郎/PIXTA)

令和元年台風15号・19号の被害は日を追うごとに深刻さを増している。19号では80人を超える方が犠牲になられた。心よりお悔やみを申し上げます。

さまざまな物資が売り切れに…

時間をさかのぼって見れば、台風19号の直撃がニュースに流れはじめた10月の第二週ごろから、関東ではさまざまな物資が売り切れつつあった。まず、窓ガラスの飛散を防ぐために有効だとされた養生テープが、ネットでは「すでに売り切れていた」という書き込みが飛び交い、来襲直前の10日11日にはスーパーの棚からパンや水が消えていった。

売り切れたと聞くと、逆に不安をあおられるものだ。消費増税直前よりも、駆け込み購入に走った人が多かったのではないだろうか。

筆者自身は台風直撃前に関東を離れる予定があったため、食品の買いだめはとくにしなかった。とはいえ万が一、断水になってしまうと困るので、水が出るうちにできるだけ確保しようと思ったが、店に向かうことはなかった。家にはアウトドア用の水タンク10リットル用と5リットル用の2つがあったので、それに水道水を詰め、あとは家にある湯沸かしポットなどもいっぱいにしておいた。


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「昼間働いているので水が買えない」と嘆いていた知人には、「100円ショップでバケツや水筒を買ってはどうか。アウトドアシーズンなら水を入れるタンクもあったかもしれないが……」と伝えもした。

この知人のように仕事をしているため、防災用の買い出しに行く時間が取れないという人も多いだろう。都心だと近くに大型のホームセンターがないという現状もある。

その点、割とあちこちにあるのが、100円ショップだ。日頃から筆者は「困った時には100円ショップへ」と勧めている手前、では100円ショップでどれほど防災の備えができるか、一度チェックしてみなくてはいけないだろう。

もちろん、専用の防災グッズを買えるならそちらのほうがよいに越したことはない。筆者は防災の専門家ではないので、あくまで応急的に備える場合にどれほど役立つかという視点に立ち、探してみた。

もし水道から水が出ないとなると、まず困るのは衛生面だろう。手が洗えない、入浴ができない、洗濯ができない。そういう事態をどうカバーできるだろうか。

応急措置としてまず備えたいのが、除菌成分入りのウエットティッシュ100円ショップにはポケットサイズから大判サイズまで、かなりのバリエーションがそろっている。また、「手指消毒スプレー」も便利だ。

除菌だけでなく悪臭の消臭効果もあるスプレーも手に入る。除菌シート(ティッシュ)は売り場の目立つところにあるし、除菌スプレーは絆創膏などの売り場付近を探すと見つかる。


大人用の体ふき。大判タイプが便利だ(筆者撮影)

風呂に入れない時に役立ちそうなのが大人用の体ふき。巨大なウエットシートのようなもので、今回購入したもののサイズは22×18センチで40枚入り。本来は介護用に使われるものだが、4人家族が1日1回として10日間使える計算になる。

また洗濯ができない中、トラベル用品コーナーにある使い捨てのパンツもあると便利だろう。

介護用品が防災時には防災グッズ

ご時世なのか、このところ100円ショップで介護用品コーナーをよく見かけるようになった。先の体ふきシートや服の汚れを防ぐ使い捨てエプロン、消臭機能付きのシーツ(尿漏れ対策など)などもあり、こうしたものは防災時にも十分活用できそうだ。もちろん簡易トイレも入手でき、大概はアウトドア用品もしくはトラベルグッズ売り場などで売られている。



(左)あると何かと便利な「手指消毒スプレー」(右)トラベル用の下着もある(筆者撮影)

なお、断水になると食事を用意するおりも衛生面が気になるだろう。手をこまめに洗えない時には、薄手の使い捨て手袋を用意しておくといい。

また、食器の後片付けにも水が使えないため皿にラップを敷いて食べるという方法もあるし、100円ショップにはさまざまなデザインの紙皿がある。子どもが喜ぶようなかわいいデザインの紙皿を買っておくのもありだろう。

水を蓄えるための道具も必要だ。なるべくたっぷりためられそうな器はないかと見たところ、梅酒を漬けるような大型のボトルが目に入った。これならそこそこ水が入りそうだ。たまたま注ぎ口付きのものも発見した。3.8リットルほど入るという。ただし、この商品は300円で、注ぎ口部分は自分で取り付けるため、水漏れしないようにきちんと締める必要があるのでそこは留意したい。



(左)手をこまめに洗えないとき用に薄手の使い捨て手袋(右)注ぎ口がついている大型のボトルも(筆者撮影)

停電に役立つライトも多種多様

水の次は電気だ。ライト類もむろんさまざまな種類が売り場に並んでいる。


電池不要なので1本非常袋に(筆者撮影)

ランタン型、手持ち型など選び放題だが、どの家庭にも一そろいはあるだろうから、買い足すならば両手があくヘッドライトタイプがいいかもしれない。

なお、折り曲げると発光する簡易ライトもあった。電池不要なので、非常持ち出し袋に入れておく手はある。

スマホの充電グッズも忘れてはならない。車のシガーソケットに接続できる充電器は買っておきたい。

先述のとおり、今回売り切れ続出だったのが窓ガラスの飛散をふさぐために使うといいとされた養生テープだ。


本来は外からの視線を防ぐためのもの。はがす必要がない窓用に(筆者撮影)

多分100円ショップにも置いてあるだろうと思ったところ、やはり売ってはいた。しかしひと巻分の量が心もとない。

代替えになりそうなものはないかと探したら、これを発見した。窓に貼る目隠しシート(約90×45センチ)

もともとは家の中を見えにくくするために貼るもので、窓ガラスの保護機能は期待できないが、「ガラスが割れた時の飛散防止に何か貼っておきたい」と思うなら、ガムテープよりは見た目がいいとはいえる。ただし、きれいにはがせないので賃貸住宅には向かない。

そもそも防災グッズもちゃんと売っている

ここまでは、「防災時の役に立ちそうなもの」という視点で書いてきたが、むろん100円ショップにはそのものズバリの防災グッズも置いてある。

先ほどのガラス対策として「ガラス飛散防止シート」もあったし、約3リットルの水を給水できる「緊急用給水バッグ」も発見した。先に紹介した簡易ライトも「台風や地震、停電に備えて」と書いてある。さすが、何でもそろうぞ100円ショップ、である。ただし必ずしも防災コーナーとしてまとまっているわけではない。アウトドアグッズや住まい用品のコーナーを探すと見つけやすいだろう。



(左)「ガラス飛散防止シート」(右)約3リットルの水を給水できる「緊急用給水バッグ」(筆者撮影)

万が一、家が被災して、避難所で過ごさなくてはならなくなった時を想定すると、ほかにも買っておくとよさそうなものが出てくる。床に敷いて体への負担を和らげるためのアルミマットや折り畳み式のクッション、インフルエンザ予防用のマスク、トラベル用のアイマスクや耳栓、エアー枕もあったほうがいいだろう。

衛生的には先に書いたような除菌グッズも欠かせない。避難所での食事の偏りが気になるなら、100円ショップにはサプリメントも売っているので、ビタミン剤などを買っておくのもありだろうか。

大災害のような非常時は、突然やってくる。もはや誰にとってもひとごとではない。普段の買い物に利用している100円ショップも、そういう視点で眺めてみると防災に役立つアイテムの宝庫でもあるのだ。急いで非常持ち出し袋の中身をそろえなくてはいけない時の助けになる。

今回取り上げた中には店の規模や立地によって手に入らないものもあるだろうが、家や職場の近所にあるショップの品ぞろえを改めて確認しておくとよいだろう。