シリア北西部イドリブ県のバルシャ村で、ヘリコプターによる攻撃で破壊された一帯。米メディアは同県への攻撃でイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が死亡したと発表。英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、このヘリコプター部隊は米軍主導の連合軍のものとみられている(2019年10月27日撮影)。(c)Omar HAJ KADOUR / AFP

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【AFP=時事】暗闇の中、敵地を低空飛行する8機のヘリコプターから始まった作戦は、2時間後に世界の最重要指名手配犯の一人が米兵たちに追い込まれ、自爆したことで終結を迎えた。

 数千マイル離れた米国では、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がホワイトハウス(White House)のシチュエーションルーム(緊急対応室、Situation Room)で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者の驚愕の最期を映像で見届けたと発表した。

「まるで映画を見ているかのようだった」──トランプ氏は、そう語った。映像はマイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領や軍高官らとともに見たという。

 27日の会見後の質疑応答でトランプ氏は、バグダディ容疑者が「数週間にわたって監視下にあった」と明かした。

 同容疑者の位置情報が確認されると、特殊部隊による急襲作戦が26日に開始された。トランプ氏によると、「大規模」な部隊が任務に就いた。「ヘリコプター8機に加え、多くの艦艇や戦闘機も出動した」という。

 部隊はまず、現時点では未公表の地点から敵地内を約1時間10分飛行してシリア北西部へ進入。トランプ氏は「非常に低い位置をかなりの速さで移動した。だがこれは作戦の中で重要で、非常に危険な過程だった。進入し、機外へ出た」と述べ、「途方もない攻撃に遭う可能性があった」と明かした。

 そして部隊が標的の建物に着陸すると、「大混乱が巻き起こった」という。

■「最後に残った1人」

 トランプ氏はさらに「優秀な戦闘員らの大部隊がヘリコプターから走り出し」、扉の仕掛け爆弾を避けるために「建物の横を爆破して穴を開けた」と説明。「見ていて本当に素晴らしいものだった」「われわれは映像をはっきりと見届けた」と語った。

 また「部隊は射撃による猛攻で迎えられた」とも明かし、米軍の反撃でバグダディ容疑者の支持者らが「大量に」死亡したが、米兵の死者はなかったとも述べた。

 司令官らは順次、進行状況を中継報告した。11人の子どもたちが連れ出され、捕虜たちが連れ出された。バグダディ容疑者の妻たちが死亡した……。

 そして、誰もが待っていた報告が届いた。トランプ氏はその報告を振り返って語った。「建物内に残っているのは1人だけです。彼は逃げようとしてトンネル内にいますが、このトンネルは行き止まりです」

 そこにいたのは、バグダディ容疑者だった。

 米軍はこの建物にトンネルがあり、バグダディ容疑者が自爆ベストを着ている可能性があることを把握していた。米軍はロボットも用意していたが、使用されることはなかった。

「わが軍は、ものすごいスピードで迫っていた」「彼らは(容疑者を)追いかけていた」とトランプ氏は説明した。

 バグダディ容疑者は、自らの子ども3人を連れてトンネルに入った。しかし、子どもたちの存在で運命を避けられるわけではなかった。米軍が軍用犬をトンネル内に送ると、ISの黒幕バグダディ氏は「自爆した」。

「われわれの犬が追い詰め、彼はトンネルの終わりに突き当たった。そして自爆ベストを爆発させて、自分自身と3人の子どもたちを殺した」とトランプ氏は述べた。

「彼は英雄として死を遂げたのではなく、臆病者のように泣き叫びながら、3人の子どもたちを巻き添えにして死んでいった。死あるのみだった。彼は、トンネルが行き止まりなのを分かっていた」

 米兵らは散乱したバグダディ容疑者の遺体からDNA鑑定のためのサンプルを採取し、持ち出した。米部隊は建物内に約2時間いたという。

「わが軍の側は誰も死んでいない」とトランプ氏は述べたが、実際には負傷した一員がいた。「われわれの犬は負傷した」

【翻訳編集】AFPBB News

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