東京五輪は絶対に出たい大会。「必ずゴールマウスに立つ」と意気込む。写真:秋田耕二(スタジオサンエス)

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――サッカーの本場ブラジルで開催されたコパ・アメリカはどんな雰囲気でした?
「サッカーが文化として成り立っている国なので、そこに対する想いは強い。国と国が本気で戦う大会で、バチバチな試合を経験できたのは、すごく大きな財産でしたね。本気の南米と戦う機会なんてそうはないですから」

――本気の南米の選手のシュートは違うものですか?
「そうですね。どんな体勢からでも枠に飛ばしてくる体幹があって、日本では飛んでこないようなところからシュートが飛んできたりしました」

――これまでいろんな国際大会に出てきて、世界との差はどういったところに感じていますか?
「決定力ではないでしょうか。ここぞというところでの勝負強さやしたたかさは、やっぱり日本にはなかなかないものがあるなと」
 
――GKとしての差はどうですか?
「海外のGKはボールを止める技術が高いのはもちろんですけど、球際のところが強い。技術よりもキワの戦いで絶対に負けないという精神的な強さがあるのかなと思います」

――来年の五輪出場に向けて、課題としているところは?
「森保監督のサッカーの特徴はGKを含めたビルドアップ。サンフレッチェでもそこはトライしている部分なので、そこでもっと自分がボールに関わりたいです。後ろから単につなぐだけではなく、攻撃のひとつの起点になれるようなフィードも身に付けるのが、ひとつのテーマです」

――最後に東京五輪への意気込みをお願いします。
「ずっと目標にしてやっているので、絶対に出たい大会ですし、そこが自分のサッカー人生の分岐点になる可能性もある。必ず僕がゴールマウスに立って、日本中の人と喜びたいです」

PROFILE
大迫敬介/おおさこ・けいすけ/1999年7月28日生まれ、鹿児島出身。186臓86繊9焼SSS―フェリシドFC―広島ユース―広島。プロ2年目の昨季までは公式戦で出番を得られなかったが、自分と向き合い、コツコツとトレーニングを積んできた。今年は5月にA代表に選出され、6月に開催されたコパ・アメリカではチリ戦で代表デビューを飾った。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)
 2020年に開催される東京五輪。本連載では、本大会での活躍が期待される注目株の生い立ちや夢舞台への想いに迫る。

 7回目は、抜群の反射神経を活かしたセービングが持ち味で、今季上位争いをするサンフレッチェ広島の堅守を支えている大迫敬介が登場。

 中学時代まで鹿児島で過ごした大迫は、プロを夢見て広島ユースへと入団。18年に晴れてトップ昇格を果たすと、今年は広島の正守護神の座を射止め、さらに今年5月のキリンチャレンジカップでは当時19歳にしてA代表に初選出と、飛躍のシーズンを送っている。まさに破竹の勢いでステップアップする守護神は、いかに育ってきたのか。

 後編では、年上にも怖気づかずメンタルを保つための秘策、コパ・アメリカで感じた南米の本気、そして東京五輪への想いをお届けする。

前編はこちら
【連載・東京2020】大迫敬介/前編「広島ユースは理想郷だった。高校サッカーの選択肢もあったけど…」

中編はこちら

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――GKは味方に声を掛けなければいけないポジションです。トップチームではみんなが年上で、テレビで観ていたような人がたくさんいるものです。そのなかに入って気後れすることはなかった?
「トップに上がったばかりの頃くらいですね。初めはどうしても気を遣ってしまうところはありましたし、試合に出られていない時期は、そういう精神的な余裕がなかったのもあったかもしれません。でも徐々に遠慮とかはしなくなりました」

――なぜ遠慮がなくなっていったのでしょうか。
「フィールドの先輩選手が『年齢関係なく声を出していいぞ』と言ってくれたのは大きかったです」

――声をかけてくれたのは誰ですか?
「水本(裕貴/現・松本)さんとかですね」

――水本選手には入りたての頃に助けられたんですね。
「入りたての頃だけじゃなくていつも良くしてもらいました。本当にすごく感謝しています」

――今年A代表に入った時はどうでした? 結構緊張したのでは?
「意外と大丈夫でした。元々代表ではユースの時から上の年代で呼んでもらっていたので、そこの慣れはあったのかなと」
 
――では現在トップチームを指揮する城福浩監督はどんな指導者?
「勝負に対するこだわりは強いですし、ものすごく熱い監督です」

――でも、普段はすごくフランクな人柄ですよね。
「そうですね。オンとオフをしっかり持っている監督です」

――他の監督と違うところは?
「相手を見抜く力や、対策の綿密さはすごい。それにやっぱりこだわりもしっかり持っていて、それを選手に落とし込んでいくのもすごくうまいなと思います」

――城福監督から学んで大きかったものは?
「やっぱりキーパーの感覚とフィールドの感覚って、いろんな局面で違うと思うんですけど、フィールドプレーヤー目線のアドバイスをくれます。それでいて、キーパー目線も大事にしてくれる。すごく気を遣って指示をくれるので、すごくやりやすいです」
――ここからは代表の話を詳しく伺っていきます。今年5月にはキリンチャレンジカップでA代表に選出された。大きく気持ちは変わったのでは?
「A代表というのは、やっぱりずっと目標にしてきたところだったので、そこにまず入れたのは嬉しかったです。でも試合に出られなかったのは、すごく悔しかったし、そのあとに参加したコパ・アメリカで現実を突きつけられた。悔しい経験がすごく心に残っています」

――キリンチャレンジカップとコパ・アメリカでは、経験豊富な川島永嗣選手も選ばれていました。何か話をしましたか?
「永嗣さんのほうから声をかけてくれました。でも言葉で僕らに示すというよりは、どちらかと言えば、行動で示してくれるタイプだったので、そこはすごく勉強になりました」

――具体的にどういったところが?
「練習に対する姿勢は誰よりも強い。とにかく、一つひとつのプレーがものすごく刺激になりました」
 
――日頃からそうしたメンタルの部分で意識していることは?
「試合に出ていればいろんなミスも起きるし、失点もしてしまうけど、そういうところで引きずらないことですね。特に表情に出さないのが大事だなと。ミスや失点をすると、どうしても『なんでだろう』って落ち込んでしまいそうなところですけど、そういう反省は試合後にすると決めています。とにかく次のプレー、次の失点を防ぐことに集中して、すぐに気持ちを切り替えようと」

――でも、それはすぐに身につくようなものではないのでは?
「そうですね。プロになってから色々考えを巡らせながらやっていたからかもしれません」

――澤村(公康)GKコーチも『メンタルがなにより強い』と言っていました。
「澤村コーチのおかげでもあります。メンタルのところをすごく重要視してくれるコーチはなかなかいなかったですし、これまで考えもしなかったようなアプローチをしてもらえたのは、ひとつ変わるきっかけでした」

――澤村コーチに言われて心に残っていることは?
「『表情を変えるな』ってことですね。やっぱり顔はカメラで抜かれたりしますし、味方の選手にも見られますから。自分自身も表情を変えないことで、不思議とメンタルがブレないんですよね。それは新しい発見でした」
 
――だからピッチ内とピッチ外では別人に見えるのかもしれないですね。
「そうかもしれませんね(笑)」

――では今までのキャリアで指導してもらったなかで、印象に残っている言葉は?
「いろんなことを言われてきましたけど、『常に謙虚に』というのは、どの指導者にも言われたことです」

――どういった時に言われるのですか?
「代表から帰ってきた時や、ユース時代にトップの練習から戻ってきた時ですね。どうしてもレベルのギャップはあるんですけど、そう言われると、そこで手を抜かないようにしようと心掛けられました」