オールブラックス恒例の「ハカ」を取り囲むイングランドの「V字」陣形【写真:Getty Images】

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オールブラックス恒例の「ハカ」を取り囲む「V字」に会場どよめき

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は26日、横浜国際総合競技場で準決勝が行われ、イングランドが王者ニュージーランドを19-7で下し、歴史的勝利を飾った。試合は、イングランドが完璧までのディフェンスを展開し、相手に攻撃チャンスを与えず。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が「この日のために2年半かけて準備した」と胸を張るゲームプランが機能し、W杯で4度目の対決で初めてオールブラックスから勝利を挙げた。

 そのイングランドは、試合前から心理戦を仕掛けた。オールブラックスは国歌斉唱が終わると、恒例のマオリ族に伝わる戦いの踊り「ハカ」を演じる。この日も、主将キーラン・リードを先頭に全員で矢尻のような三角形の隊形を取り始めた。通常、対戦相手はこれを横一列に並ぶなどして受けて立つが、この日のイングランドは、大きな「V字」を作ってオールブラックスを取り囲むようにように並んだ。まさかの“奇襲”にスタンドを埋める6万8843人の観客からはどよめきすら起こった。

 気になるのは、この「V字」陣形は誰の発案だったのか? その謎を解いたのは、試合後のミックスゾーンに姿を表した1番PRのマコ・ブニポラだった。昨年、イングランド・プレミアシップでMVPを受賞したフォワードの要によれば、発案者は「ボス」=ジョーンズHCだったという。

「チームとしてみんなで話し合っていたけれど、当然すべては“ボス”の承認が必要だ。実は、彼がアイディアをくれたんだ」

計算通りの発案「オールブラックスをイラつかせるだろうと…」

 もちろん、ニュージーランドの文化や伝統をバカにするつもりは毛頭ない。「リスペクトを持ったまま、かつ我々も戦いの準備はできているということを、確実に相手に伝えたかったんだ」とブニポラは振り返る。また、相手に対し戦闘意思を示すと同時に、自らに発破を掛ける意味も込められていたようだ。

「もちろん、この行動を裏付けるパフォーマンスをしないといけないことは分かっていた。過去に何度かオールブラックスに応戦したチームがあったけれど、彼らは見事に一蹴されてしまった。だから、我々は行動を裏付けるに十分な責任を果たそうとし、やってのけたと思う。あれが不遜に見えて、オールブラックスをイラつかせるだろうと分かっていたんだ」

 結果はご覧の通り、イングランドは見事「V字」陣形を取っただけの責任を果たした。もしかしたら、チームの士気を最後にまとめあげる、そんな狙いを持ったジョーンズHCの計算尽くの発案だったのかもしれない。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)