今夏のU-20W杯にも飛び級参戦した西川。強豪揃いのグループで輝きを放てるか。(C) Getty Images

写真拡大 (全3枚)

 チームが立ち上がり、早2年半。あどけない表情を見せていた選手たちは大人の階段を登り、今では見違えるほど凛々しくなった。

 可愛い子には旅をさせろ――。森山佳郎監督が率いるU-17日本代表は様々な経験を積んだ。2017年9月のU-16アジア選手権予選ではインドネシアに赴き、グアム、シンガポール、マレーシアと対戦。3戦全勝で勝ち上がると、翌年10月にマレーシアで開催された本大会ではタジキスタンやオーストラリアといった難敵を下し、アジアの頂点に立った。僅差の接戦を制しながら、掴んだ世界への挑戦権。以降も様々な場所で試合を行ない、チーム力を高めてきた。そんな2002年生まれ以降の選手たちが集大成となる戦いに挑む。

 ブラジルで行なわれるU-17ワールドカップ。グループDに入った“02ジャパン”はオランダ、アメリカ、セネガルと対戦する。とりわけ、欧州王者のオランダは優勝候補筆頭で圧倒的な攻撃力を持つ。エールディビジで出場機会を得ている選手の一部は招集外だが、フェイエノールトのトップチームでプレーする点取り屋のナウファウ・ベニスなど実力者がずらりと揃う。ドルトムントU-19でプレーするジョバンニ・レイナを擁するアメリカや、身体能力に秀でたセネガルも侮れない相手だ。

 こうした難敵たちと対峙する若き日本代表。ただ、この世代は少し趣が異なり、前回のチームにいた久保建英や中村敬斗のような、個で勝負できるタレントが攻守ともに少ない。そのため、森山監督は“グループ”にフォーカスをして強化を図ってきた。攻撃は複数人が良い距離感で絡み、コンビネーションで相手の守備網を打開する戦い方が生命線となる。

 キーマンはボランチやサイドハーフをこなす成岡輝瑠(清水エスパルスユース)で、豊富な運動量と高質なパスでチームのアタックをオーガナイズ。機敏な動きでサイドを斬る三戸舜介(JFAアカデミー福島U18)や、確かな戦術眼を持つ藤田譲瑠チマ(東京ヴェルディユース)も局面を打開する上で欠かせない。

 そして、何と言ってもこのチームのストロングポイントは前線の選手たちである。
 今年5月のU-20ワールドカップに飛び級で参戦した西川潤(桐光学園高/セレッソ大阪入団内定)は個人技とシュートセンスに長けたレフティ。9月のエクアドル遠征まで疲労などを考慮され、代表活動に参加できなかったが、10番を背負うエースはチームでも貴重な、個人技で勝負できる人材だ。

 ガンバ大阪ユースに所属する唐山翔自はゴールセンスに秀でた点取り屋。すでに U-23チームの一員でJ3デビューを果たしており、9月1日の福島ユナイテッド戦ではJリーグ史上最年少ハットトリックを達成した。このチームではスタートから起用される可能性もあるが、短い時間でも勝負できるだけにジョーカーとしても有益だろう。

 今年に入って台頭した若月大和(桐生一高/湘南ベルマーレ入団内定)は圧倒的なスピードが持ち味。押し込まれた展開になれば、その“脚”が生きる。すでに特別指定選手としてJの舞台を経験したFWは、カウンター狙いの戦いに持ってこいの人材だ。

 初戦で当たるオランダのファン・デル・フェーン監督も警戒しており、前々日会見でも前線の選手に言及。3人のうち誰を指しているかは分からないが、「ストライカーの2枚が興味深いプレーをする印象があり、彼らは質的にもすごく良い」と言い切るほどだ。

 グループステージで戦うオランダ、セネガル、アメリカは、いずれもフィジカル能力に秀でた相手。真っ向からぶつかれば厳しい戦いが予想されるだけに、組織力が求められる。「ボール保持ができる選手はいるし、スピードを活かせるメンバーも揃っている。そこで日本の俊敏性を生かす攻撃を仕掛け、ボールを動かしながらなんとか突破口を開いて得点を奪いたい」と森山監督が話す通り、中盤で日本の特徴を生かしながら、個性派揃いのFW陣に好機を供給したい。

 対する守備もグループでの戦いが求められる。球際の勝負で真っ向からぶつかり、最後の局面では身体を投げ出すことは必須だ。

 最終ラインの要はキャプテンを務める半田陸(モンテディオ山形ユース)。強烈なキャプテンシーと身体の強さはチームに欠かせない。そして、ガーナにルーツを持つGKの鈴木艶彩(浦和レッズユース)も守備の絶対軸。2年前のU-17ワールドカップに15歳で選出され、今年5月のU-20ワールドカップにも飛び級で参戦した。いずれも第3GKだったため、出番を得られなかったが、今回は待ちに待った世界大会デビュー戦になるだけに鼻息は荒い。
 初戦で対戦するオランダは今大会の優勝候補で圧倒的な攻撃力を誇る。前々日会見で森山監督も「攻撃の破壊力がかなりあって、ヨーロッパ選手権の決勝でも4得点を挙げています。かなりボールを保持して、どの試合も決定機をかなり多く作っている」とし、半田も「オランダの攻撃はすごい。組織でもコンビネーションでも中央で崩して来るし、個の能力でも速い選手や上手い選手がかなりいる」と警戒を強める。初戦に限ったことではないが、間違いなく守備陣の出来の良し悪しが勝負の分水嶺となるはずだ。

 10月16日に現地入りした日本代表はサンパウロで調整を続け、20日の練習試合ではU-17ナイジェリア代表に1−0で勝利。23日にグループステージを戦うヴィトーリアに移動し、怪我人もなく順調に歩みを進めている。オランダとの初戦は現地時間27日の20時(日本時間28日午前8時)にキックオフ。

「良い準備ができた。思い切ってやってほしいし、自分たちの力に自信を持っていい。アジアチャンピオンのプライドを見せにいきたい」とは森山監督の言葉。今まで培ってきた力を発揮できれば、ブラジルの地で若き日本代表の実力を世界に轟かせる可能性は十分にある。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)