映画「男はつらいよ」シリーズ第50作となる「男はつらいよ お帰り 寅さん」の公開を前に、NHKが山田洋次監督の小説「悪童 小説寅次郎の告白」をドラマ化した。映画では語られなかった寅次郎の出生の秘密や、戦中から戦後にかけて車一家を次々と襲った悲劇などが明らかになる。

原作では、寅次郎が酒場の片隅で、問わず語りに来し方を語るという形式がとられているが、岡田惠和の脚本は、映画の寅さんそのままに、いたずら好きで美人に惚れやすく、男気あふれる少年寅次郎をユーモアとペーソスを交えて描く。

捨て子で悪ガキのおいらがいるばっかりに・・・

昭和11年、日本を震撼させた2・26事件の前夜、葛飾柴又のだんご屋「くるまや」の店先に赤ん坊が捨てられる。くるまやの若主人・車平造(毎熊克哉)と芸者・お菊(山田真歩)の間に生まれた男の子だ。平造の妻・光子(井上真央)は自分で育てる決意をし、帝釈天の住職、御前様(石丸幹二)に「車寅次郎」と名付けてもらった。「姓は車、名は寅次郎」の誕生だ。

戦争の影がますます濃くなってきた昭和19年、国民学校に通う寅次郎(藤原颯音)はいたずらっ子ではあるが、病弱な義兄・昭一郎(山時聡真)に代って、義妹・さくら(落井実結子)の面倒をよくみる心優しい少年に育っていた。

ある日、どうしようもない遊び人の平造に赤紙(召集令状)が届いた。悲しみをこらえる光子の姿に、寅次郎は「お母ちゃんは、お父ちゃんのことが好きなのか?」と心を痛める。さらに、昭一郎は病に倒れ、寅次郎に「何があっても生きろ」という言葉を残して帰らぬ人に。光子は抜け殻のようになってしまった。

寅次郎は夫が浮気で残していった自分という存在が、お母ちゃんを苦しめているのではないかと考えた。

寅次郎少年を抱きしめ泣き続けるお母ちゃん

米軍による空襲が激しくなり、寅次郎は頭上を低空飛行する爆撃機や、夜空に赤々と炎を上げて燃える街を目撃する。そして、昭和20年3月10日。東京は大空襲を受け、その中で、寅次郎は光子を悲しみから救うため、自分がいなくなろうとする。そんな寅次郎に光子は「あんたがいなくなったりしたら、私はどうしたらいいんだよ」と泣きつく。

寅次郎の光子に対するもどかしいまでの健気な愛情は、長じた寅さんが映画でマドンナに捧げる愛に通じるものがある。(2019年10月26日よる9時放送)

寒山