GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)は、GI馬が10頭も参戦。近年まれに見るハイレベルなメンバーがそろった。

 そんなレースにあって、最も注目されているのは、GI5勝のアーモンドアイ(牝4歳)と、今年のGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)を勝ったサートゥルナーリア(牡3歳)との対決だ。「現役最強馬」と「3歳世代の怪物」がどんな戦いを見せるのかと、多くのファン、関係者が胸を躍らせている。

 人気の中心はこの2頭に、ダノンプレミアム(牡4歳)を加えた3頭と見られているが、過去を振り返れば、「2強」にしろ、「3強」にしろ、GIという大舞台において、並び立つことは意外に少ない。そして今回も、その歴史は繰り返されるかもしれない。日刊スポーツの松田直樹記者が語る。

「アーモンドアイ陣営が警戒するのは、サートゥルナーリア。アーモンドアイを管理する国枝栄調教師は、『同じロードカナロア産駒同士の対決で雌雄を決したい。あっちは、ダービーしか負けていない馬だしね』と、手ぐすねを引いていました。

 一方、サートゥルナーリアを担当する滝川清史助手は、『こちらは、挑戦者だから』と言いつつも、内面ではアーモンドアイとの対決に闘志を燃やしていることは明らかです。お互いを意識するあまり”両雄並び立たず”ということは、十分に考えられるでしょうね」

 さらに、デイリー馬三郎の吉田順一記者は、想定されるレース展開から、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムの上位争いには疑問を呈す。

「メンバー的に見て、瞬発力勝負では分が悪いアエロリット(牝5歳)、スティッフェリオ(牡5歳)らが、積極的な立ち回りで、適度に上がりのかかるレースを演出。これに便乗する形で、アルアイン(牡5歳)、ウインブライト(牡5歳)、ドレッドノータス(せん6歳)などが続けば、平均よりも速いペースになりそうです。

 そうなると、割を食うのが、サートゥルナーリアとダノンプレミアム。どちらかと言えば、切れ味勝負で結果を残してきた2頭にとっては、少なからずパフォーマンスが落ちる可能性が高いからです。

 また、サートゥルナーリアは、来日1週目で存在感を示したクリストフ・スミヨン騎手が鞍上という魅力はあるものの、中4週の競馬でテンションを維持できているかどうか、若干の不安があります。

 ダノンプレミアムも、前走のGI安田記念(6月2日/東京・芝1600m)で16着と惨敗。そこから、慎重に調整を重ねてのぶっつけでは、なかなか陣営のトーンも上がらないのではないでしょうか」

 となれば、穴党の出番も十分ある。GI馬が10頭も出走することを思えば、ビッグネームでも人気の盲点となる可能性は高く、他のレースなら人気の実力馬を狙っても、高配当をゲットできるかもしれない。

 では、狙い目となるのは、どの馬か。吉田記者は、昨年のレースで1番人気に推されながら10着と大敗した、スワーヴリチャード(牡5歳)を推奨する。

「スワーヴリチャードは、昨年のGI大阪杯(阪神・芝2000m)で戴冠を遂げて以降、勝ち星どころか、連対実績もありません。そのうえ、昨年の天皇賞・秋には人気を裏切って惨敗。もはや、人気は下降線をたどる一方です。

 しかし、昨秋のGIジャパンC(東京・芝2400m)や、今春の海外GIドバイシーマクラシック(3月30日/UAE・芝2410m)に、GI宝塚記念(6月23日/阪神・芝2200m)では、3着と気を吐いています。とりわけ、手前や利き脚、足もとや口向きなど、乗り難しさがある右回りの宝塚記念で3着と好走したことは、評価すべきでしょう。

 また、多少ガレて、筋肉が落ちていた昨夏のことを踏まえて、今年の夏は北海道ではなく、ノーザンファームしがらきで調整していました。その効果か、10月17日のCWでの1週前追い切りでは、直線の入り口でスムーズに手前を替え、ハミ受けもよく伸びやかな走りを見せていました。今までにないくらい、心身のバランスが取れている印象があります。

 馬体も厚みがあって、トモのボリュームも文句なし。昨年の大阪杯以降では、間違いなく一番の攻め気配と馬体を誇示しています。

 最高のパフォーマンスを発揮できる舞台で、前が引っ張ってくれそうな展開になるのも歓迎。中団より前から長く脚を使えば、勝ち負けは必至でしょう。新鮮な気持ちで騎乗できる横山典弘騎手の手腕にも期待したいですね」

 吉田記者はもう1頭、思わぬ馬を穴馬候補に挙げた。GIタイトルのないユーキャンスマイル(牡4歳)だ。

「ユーキャンスマイルは、左回りでの戦績が3戦3勝。確実にパフォーマンスを上げてくるあたりは、面白い存在だと思います。

 長い直線で少しずつギアを上げて、いい脚を使えるキングカメハメハ産駒。前走のGIII新潟記念(1着。9月1日/新潟・芝2000m)と同様、直線の長い東京・芝2000mはベストの設定と言っていいでしょう。

 1週前の追い切りでは、いつもどおり少し内にモタれ加減でしたが、ストライドを伸ばした走りは圧巻でした。中7週と間隔を空けて、馬の活力はみなぎっており、トモの丸みがあって、馬自身、かなりパワーアップしています。

 3歳時のGIII毎日杯(6着。阪神・芝1800m)とGII京都新聞杯(6着。京都・芝2200m)、そして今春のGI天皇杯・春(5着。4月28日/京都・芝3200m)を除けば、すべて馬券圏内に入っている堅実派。東京・芝2000mという舞台設定に、今の状態のよさなら、上位争いに加わっても不思議ではありません」

 一方、松田記者は、東京のマイルGIに実績のある2頭、アエロリットとケイアイノーテック(牡4歳)をピックアップする。


先行力のあるアエロリットが「2強」を出し抜くか

「アエロリットは、東京マイルのGIにおいては、2017年のNHKマイルCで優勝。2018年、2019年の安田記念では連続2着と、好成績を残しています。ただ、2000m以上のレースは7着に終わった2017年のGI秋華賞(京都・芝2000m)があるだけ。この結果だけみると、敬遠したくなるかもしれませんが、当時は苦手な右回り、重馬場という条件で、力を出し切れたとは言えません。前走のGII毎日王冠(10月6日/東京・芝1800m)で2着と善戦しているように、今なら200mの距離延長も問題ないでしょう。

 とにかく、人気馬2頭がにらみ合うなか、スピード豊かな先行脚質は魅力に映ります。先週の走破時計、レース傾向を見ても、今の東京は馬場の回復が異様に早く、先行力が生きる良馬場での開催となれば、簡単には止まらないのではないでしょうか。

 3走前のGIヴィクトリアマイル(5月12日/東京・芝1600m)では、前半1000mのラップが56秒1。無謀とも言えるハイペースで逃げながら、勝ち馬からコンマ4秒差の5着に粘った脚力は、現役屈指のものがあります。GIIオールカマー(9月22日/中山・芝2200m)を逃げ切ったスティッフェリオの出方が気になるところですが、同馬を管理する音無秀孝調教師は『今回は逃げなくても』と話しており、アエロリットのペースで逃げられそうなのも好材料。豪華メンバーを振り切っての粘り込みは、大いにあり得ますよ」

 もう1頭のケイアイノーテックについては、前提として「アエロリットがよどみのない流れを作れば……」と松田記者。そうした展開になれば、昨年のNHKマイルCを制した際に見せた決め手が炸裂するのではないか、と踏んでいる。

「前走の毎日王冠は好位策を試しましたが、上位から離されての9着に終わりました。いわゆる”切れないタイプ”のディープインパクト産駒で、ゴールに向かってじわじわと加速していく末脚が魅力の馬。そのため、序盤で好位置を取りにいっては、末脚をタメられず、よさが出ないことがわかりました。

 陣営によれば、今回は再び後方待機の末脚勝負にかけるとのこと。初の2000m戦となりますが、主戦場のマイル〜1800m戦よりも、ペース、追走は楽になるはず。展開次第ではありますが、”死んだふり”からのゴール前強襲があってもおかしくありません」 見どころ満載の天皇賞・秋。強力な人気馬を蹴散らして、ビッグな配当をもたらす馬が、ここに挙げた4頭の中にきっといる。