ビジネスマンには、資料作りにおける「デザイン力」が欠かせません(写真:kukai/iStock)

説得力のある資料を作ることは、ビジネスパーソンにとってプロジェクト成功の第一歩。しかし、伝えたいことを詰め込みすぎた資料はかえって読みにくく、後回しにされてしまうことも。

さまざまな企業の研修で資料作成やスライドデザインに関するアドバイザーも務め、『デザイン力の基本』の著者でもあるウジトモコ氏が、ビジネスを成功に導く「伝わる資料」の3つのポイントを紹介します。

中身がよくても「伝わらない」ことは多い

プレゼンテーションのスライド、企画書をはじめ「資料作成」のスキルはビジネスパーソンにとって必須です。「資料作成」における「デザイン力」は、伝えるスピードや説得力、どれだけ人が動いてくれるか、など作り手の見せる・伝える技術と直結しています。

せっかく中身がよい提案だったとしても、詰め込みすぎた内容は記憶に残りにくいですし、苦労してつくったのに読んでもらえないことにもなりかねません。また、第一印象がよくない資料は、多忙なビジネスパーソンにとっては「後回しのタスク」になりやすく、伝えたい情報が届かない可能性もあります。

このように残念なデザインの資料は、ビジネスを助けているどころか、あなたの足を引っ張っている可能性もあります。


私は企業の研修などで、スライドのデザインについてもアドバイスすることもありますが、「残念な資料」の共通点として「見やすく・わかりやすく」「パッと目を引く」状態に「なっていない」ことが挙げられます。

一方で、「できる人の資料」は、内容以前にデザインから醸し出される雰囲気が違います。「この提案は信頼できる内容に違いない」と、表紙を一目見ただけで「この人はできる感」がなんとなく伝わってくるのです。

そして、1枚目から「なるほど〜」「この手があったか!」と感心させられ、2枚目以降も「実直で、誠実な提案だ!」「ユニークで面白い」などと、読み手の心をつかみます。

資料を読み終えた頃には、「チームメンバーに共有しよう」「上司に時間をもらって報告しよう」などと、提案が読み手に受け入れられ、ビジネスの成果にも効果的につながります。

「できる人の資料」を見ると、内容はもちろん、見せ方に「戦略」を感じます。また、情報も整理されています。戦略に沿った設計、つまり、デザインができていれば、「読みやすく、わかりやすく、パッと目を引く」印象を読み手に与えることができますし、情報がきちんと整理されている資料には誠実さが感じられ、回覧・共有されやすくもなります。

時間に追われて余裕のないビジネスパーソンほど、「資料は内容が大事であって、デザインに手間暇をかける必要はない」と思いがちです。しかし、しかるべき戦略、型に沿ってきちんと作れば、ノンデザイナーであっても、効率よく、素早く、センスのよい「伝わる資料」が作れるようになるのです。

では、説得力のある「できる人の資料」を作るには、具体的にどのような点を気をつければいいのでしょうか。資料作成の経験が少ない人でもすぐに実践できる3つのポイントをまとめました。

頭の中身を、そのまま資料にしている?

「見にくくて」「わかりにくい」資料を作成してしまう人には、自分の頭に詰め込まれた内容を、そのまま1枚の紙面に入れようとする傾向があります。そうして作られた資料は作った人にとっては「企画の貯蔵庫」のような内容であるものの、ほかの人が見ると、どこのスペースに何が書いてあり、どこがポイントなのかわかりません。

例えば、あなたが、フランスのブルゴーニュ地方のワイン蔵を訪ねたとします。そこで「さあ、どうぞ」と広大なワイン蔵の前でひとり放置されてしまったらどうでしょう。そのワイン蔵のどこにすばらしい価値のあるワインや新作のワインがあるのか、どの列が不作のワイン樽か、などがまったくわからないはずです。

そこにもし蔵のオーナーあるいはワインソムリエがやってきて、1本ずつ、ワインのストーリーや味わいを説明したとしたらどうなるでしょうか。ワインの初心者や関心がない人にとっても、トピックを1つずつ説明されれば、その魅力も価値も格段に伝わりやすくなります。

資料作成も同様で、ワインソムリエのように、予備知識がない人に向けて、伝えるべき大切なことを1つずつ、シンプルにデザインすることで、その特徴や魅力を伝えることができます。


上記のBEFOREは「頭の中の貯蔵庫」を表現した資料です。このようなデザインでは、意味あることがたくさん書かれていたとしても、見る人にとっては何が大切なのか、どこを見ればいいのかがわかりません。

一方、AFTERのように言いたいことを1つに絞ったデザインであれば、まず円グラフの中の1カ所だけ色をつけたポイントに目がいきます。パッと見て、その資料が何を伝えたいのかが理解できるようなシンプルなデザインになっているからです。また、1シートに1つの円グラフしか入れていないこともポイントです。円グラフの羅列は、デザインの要素同士がバッティングしてしまうので避けるべきです。

うまくいく「王道の3色ルール」

資料作成の際、気合いを入れてがんばろうとするあまり、色を何色も使ってしまい、かえって見づらくなるケースもよく見かけます。そんなときは、「王道の3色選び」の考え方を取り入れることで、簡単でセンスがよい色選びができて、自分らしさも表現できます。

「王道の3色選び」とは、/А併羶Аγ録А法椨∧源色(特別な事情がなければ黒、あるいは濃いグレー)+ポイント色(差し色・アクセント)の3色で構成する方法です。

とくにビジネスシーンでは、資料に限らずカタログやチラシなども、色数は少なく絞ったほうがまとまりやすいです。


上の画像は、|録Г六羶А↓∧源色をグレーに、ポイント色はビタミンカラーの代表のオレンジという王道3色ルールを使用しています。そして、ポイント色を1色に絞ったことで、主題に視線が流れるような構造になっています。シンプルで美しい配色は、誠実さも演出します。

また、この方法であれば、デザイナーやカラーコーディネーターのように、膨大の色の番号や配色ルールを記憶する必要はありません。白いペーパーを使用することが多いビジネスシーンであれば、文字の色のほかに1色、キーとなるポイント色を選び、あとは、そのルールに従うだけなので、考える手間も時間も削減できます。

デザインにも「自分らしさ」をプラスしてみよう

海外のカンファレンスなどでプレゼンを聴講すると、資料のデザインの美しさ、プレゼンのうまさに驚くことがあります。中でも、「その企業らしさ」「自分らしさ」には、とてもこだわりを持っているように感じられます。自身のプレゼンスをアップさせるためにも、基本を踏まえたうえで資料デザインの中に自分らしさを盛り込んでみましょう。

とくに、資料にも自分が伝えたいこととぴったり合ったフォントを選ぶというのは、誰でもができる「イメージ戦略」です。

世界のトップブランドを見渡せば、高級車メーカーRolls Royce、BENTLEYなどは、「ヒューマニスト(人間的)サンセリフ」と呼ばれるデザインで有名なGill Sansを使用しています。GoogleやUberといったテクノロジーの最先端にいる企業は、「ジオメトリック(機械的)サンセリフ」と呼ばれるとても現代的なイメージのデザインのフォントを使用しています。

高級車メーカーと、GoogleやUberで使われているフォントや色などからは、なんとなく「雰囲気」の違いを、感じます。なんとなく感じる「雰囲気」は偶然ではなく、企業の方針と戦略に沿ったデザインの施策の結果です。これは企業戦略に限った話ではなく、資料作成においてもフォントや色などで「らしさ」を伝えることは可能です。


最近はデザインツールも大きく進化し、誰もがデザインする時代になりました。デザインとは、「プロジェクト成功のカギを握る、創造のための知識・教養」だと私は考えています。

ノンデザイナーこそ「デザイン力」が必要な時代

デザインを正しくすてきなものに変えるだけで、商品が爆発的に売れるようになったり、会社の雰囲気ががらっと明るくいい雰囲気に変わったり、採用における応募数が劇的に増えたり……と、いいことずくめなのです。


今回紹介した資料作成術のように、いわゆるデザイナーという職種の人でなくても、自ら課題を発見し、解決策を導き出すためにデザインを活用することができます。

そして、ビジネスパーソン向けのデザイン研修の現場などでも痛感するのは、デザインを「きれい」か「汚い」だけで考え続けている人は、いつまでたっても結果につながらないということです。

一方で、「早く(伝えるために)」あるいは、「強く(働きかけるために)」リ・デザインできた人は、見やすくわかりやすく、人が動くデザインになっており、さらに見た目もシンプルになっていて、資料そのものの価値が高まります。

優れたデザインは、受け取る側によい印象を与え、コミュニケーションをスムーズにすることで、課題解決にもつながります。ぜひ「デザイン力」を身につけ、多くの成果を手に入れてください。