やっぱ有機ELの画面を見ちゃうと液晶に戻れない富士通「AH-X」レビュー
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が発表した、2019年冬モデルのフラッグシップマシン「FMV LIFEBOOK AH-X/D3」。15.6インチの4K有機ELディスプレイを搭載するこのモデルは、据え置きタイプの家庭向けノートPCです。

最近はノートPCのディスプレイに有機ELを採用したモデルがポツポツと出始めていますが、FCCLとしてはこれが初。搭載するにあたりかなり苦労したようですが、今回開発機をお借りできたので早速レビューしましょう。なお、開発機のため製品版では異なる点がある場合があります。

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黒が引き締まり圧倒的に美しい有機ELディスプレイ



まずは、ディスプレイから。設計当初は有機ELを搭載する予定ではなく、急遽変更されたことでかなり苦労したそうです。狭額縁を採用した画面は15.6インチより大きく感じます。4K(3860×2160/アスペクト比16:9)の解像度で、「DisplayHDR 500 True Black」に対応。コントラスト比は10万:1、sRGB色空間は137.5%カバーし、DCI-P3のカバー率も100%と、クリエイティブな作業でも申し分のない仕様です。

▲狭額縁設計で15.6インチサイズの有機ELを採用

黒が引き締まった映像はとても美しく、無駄に陰影のある画像を表示したくなります。UHD BDに対応したBlu-rayドライブを搭載し、HDR映像を楽しむための要素も備えているので、有機ELのメリットを存分に発揮できます。


▲黒がやはりポイント。暗い室内で見たら液晶とは比較にならないぐらい黒を表現し色味もビビット


▲最近はドライブ搭載自体が減っているが、このモデルに関してはBlu-rayドライブが付いているほうがいいでしょう

有機ELを採用したことで、液晶にはない焼付けの心配があるため、極力点灯し続けることのないようになっています。その昔、「LIFEBOOK GH」シリーズに人感センサーを搭載して、人がいないときには待機モードになり、近づくと復帰するマシンがありました。

ただ、当時のセンサーは、離れた場所でも作動してしまうことがあり、そのまま採用はできませんでした。センサーを1から開発して、センシングを調整することにし、椅子に座った範囲で反応するようになっています。


▲新たに開発されたセンサー。ディスプレイ上部のカメラの横に備わっている

席から離れると、数秒後に輝度を落とし、ふたたび席につくと元の輝度に戻ります。手をかざしても反応し、これにより無駄な点灯を防いでいます。センサーから1m以内で上下左右40度の範囲で反応します。


▲設定はExtrsにある「人感センサー」からオン/オフができる


▲Windows Hello対応の顔認証機能も備わっていて、ディスプレイ上部の狭いベゼルには、センサーやカメラ、4つのマイク、Wi-Fi(IEEE 802.11ac)のアンテナなどが詰め込まれている

また、Windows 10のテーマは、標準でダーク仕様になっており、ウィンドウを表示したときの無駄な点灯を抑えています。壁紙も一定時間で変わるようにしておくと、さらに効果的でしょう。お借りしたマシンではそのようになっていました。

Windows 10の画面表示拡大率は、標準で250%。この設定だと文字などはなめらかにはなるもののかなり文字サイズが大きく、実質フルHD以下の解像度で作業している感覚です。150%、100%に設定してみましたが、筆者の老眼気味な目でも100%時の文字が読めました。無理して100%で作業する必要はないですが、125%から150%ぐらいの設定が妥当だと思います。


▲上から標準の250%、150%、100%表示。100%表示でも文字がしっかり読めたのにはビックリ

バックライト付きキーボードは癖なくタイピングしやすい



続いてキーボードを見ていきましょう。テンキー付きのフルキーボードで、アイソトープタイプ。キートップの幅は実測14.5mmで、キーピッチは実測18.4mm。キーの側面が透明で白色LEDにより暗闇の中でもキーを浮かび上がらせます。残念ながら輝度を変更できないですが、真っ暗闇でなければそれほど眩しくは感じられず、認識しやすいと思います。


▲テンキー付きのキーボードは、癖のない配置でタイピングしやすい


▲「プリズムクリアキー」と呼ばれる透明な層があるキートップ

キー配置も極々素直で、筆者のような「かな入力」信者でも安心してタイピングできました。フットプリントが361mm×244mmの横幅いっぱいに広がったキーボードは、ディスプレイ部を開くことでチルトアップし、傾斜がつくことでタイピングしやすくなっています。

タッチパッドは、タイピング時のホームポジションに合わせた位置にあるので、親指でも操作しやすくなっています。パームレストとは段差が付いているものの、表面の素材は同じなため、指で触ったとき感覚的にパームレストなのかタッチパッドなのか分かりづらい面はありますが、反応的には申し分ありませんでした。

小型ながらマウスも付属しており、書斎のテーブル上に置いて使うときはタッチパッドをオフにしてマウス操作のほうがいでしょう。

キーボード上部には、オンキヨーと共同開発したスピーカーを搭載。Diracが提供する音響補正技術により、広がりのあるサラウンド感が味わえます。実際に楽曲を聴いてみましたが、低音域は弱いものの、クリアなサラウンド感は体験できました。映画とかを観るときには臨場感が増すでしょう。ただ、ディスプレイの角度によっても聴こえ方が変わったので、立て気味にするとなおいいかもれません。


▲キーボード上部にあるスピーカー。スピーカーカバーのデザインもこだわっている

また、ハイレゾ対応のヘッドホンを接続することで、ハイレゾ音源の楽曲を直接楽しめます。音楽が好きな人には、別途アンプが不要なのでありがたいですね。

インターフェースは、左側面にUSB 3.1 Gen2対応 Type-CとUSB 3.0 Type-A端子が2つ、HDMI端子、ギガビットLAN端子。右側面には、USB 2.0 Type-A端子が1つにSDメモリーカードリーダー、3.5mmステレオミニプラグ(ヘッドホン・マイク)が用意されています。なお、電源アダプターからの充電は、従来の電源端子を利用するタイプで、Type-C端子はPDに対応していません。また映像出力もサポートしていないので、このあたりは少々残念なポイントでしょう。


▲左側は電源端子にLAN端子、HDMI端子、USB 3.0端子×2、USB 3.1 Type-C端子がある


▲右側にはBlu-rayドライブとUSB 2.0端子、SDメモリーリーダー、ヘッドホン・マイク端子が備わっている

1TBをSSD搭載し高速アクセスかつ容量の心配なし



性能面では、今回お借りしたカタログモデルだとCPUに6コア12スレッドのインテルCore i7-9750H(2.6GHz/最大4.5GHz)プロセッサーを搭載。メモリーは8GB、ストレージは1TB SSD(NVMe-PCI Express接続)と内蔵GPUではあるもののかなりパワフルな仕様です。特にカタログモデルで1TBのSSD搭載は、ついにテラ時代になったかと感じさせます。


▲写真はAH77/D3のものだが、ファンは従来モデルより大型化され、冷却を強化している

残念ながら開発機のため、ベンチマークテストはできませんでしたが、Hシリーズを搭載するため、ファンを大型化。実際に使っていて申し分はありません。また、メモリーは最大32GBまで搭載可能で、ストレージはHDDとのデュアル化もできるなど、家庭向けとしては十分な仕様でしょう。


▲HDDの取り付けは、ボディーワークに合わせて斜めに取り付けられるという


▲底面にはバッテリーとメモリースロットへアクセスできる仕様なので、あとからメモリー増設は可能

CPUに負荷をかければ、ファン音は気になるものの、このあたりはHシリーズ搭載でもあり仕方のないところ。むしろ文字は読みやすく、圧倒的にキレイなディスプレイによって、写真を現像したり動画を編集したりと、クリエイティブな作業を行っても十分な性能を発揮するので、写真や動画好きの人にぜひ使ってもらいたいマシンです。

厚さは27mm、重量は約2kg、バッテリー駆動時間は公称約4時間と頻繁に持ち運んで利用するというモデルではないですが、リビングと書斎、寝室など家庭内での移動は苦もなく行えます。有機ELディスプレイにより見る角度によって色味の変化がほとんどないので、家族で動画を楽しむのにも向いています。


▲アシスタントの「ふくまろ」も健在

原稿執筆時点では、まだ発売日は確定していませんが、店頭販売モデルは「Office Home & Business 2019」が同梱して実売価格は税込28万280円(WEB MARTでの価格)。WEB MARTで購入なら、カスタムメイドできるので、CPUをワンランク下げたり、メモリーを増やしたり、ストレージのデュアル化など、好みの仕様にできます。ボディーカラーは、有機ELディスプレイ選択時の場合ブライトブラックの一択です。

とにかく、筆者もいろいろと写真を表示したり動画を再生したりしましたが、液晶にはもう戻りたくなくなります。クリエイター向けの仕様ではないので、正確な色味かというとそこまで厳密に調整していないようですが、個人で楽しむなら問題ないでしょう。このお値段で手に入るなら買いだと思います。今後、有機ELディスプレイはスマホやテレビだけの世界ではなく、ノートPCにもどんどん普及していってほしいですね。