各企業によるアプリデータの分析と活用事例がダイレクトに理解できたApp Annie開催の「Mobile Leaders Summit 2019」
モバイルアプリ市場のデータ解析プラットフォーム「App Annie Intelligence」を提供するApp Annieが「モバイルのチカラを全ての方に」をテーマに「Mobile Leaders Summit 2019」を10月11日に開催した。同社が2020年以降をどのように見据えているのかなどについての説明に加え、App Annie Intelligenceを使ってデータを分析することによるメリットを、同ツールを実際に使っているユーザー企業による発表があったので紹介しよう。
■日本の企業を元気にする!
まず始めにApp Annie Japanの日本代表ディレクターの向井俊介氏が登壇。「2020年以降、App Annieが見据えている世界とは」としてApp Annieの状況を説明した。App Annieのミッションステートメントが「The Mobile Performance Standard」になったことを紹介。
このステートメントは前述したように「モバイルの力を全ての企業に」という意味で「日本の企業の方々が、卓越したビジネスの成功を支援していく」として、日本の企業をサポートするのがApp Annieの役割だと説明。
App Annieは2010年にアプリのダウンロードと課金額を提供することからビジネスをスタートさせ、モバイルアプリの利用データの提供を始め、マーケティングデータの提供をするまでに成長。
2021年にはモバイルを活用している全ての企業にとってよいパートナーになるようなプロダクト開発を目指しており、それに向けてLibringという会社を買収したことを紹介した。
■今後は吸い上げたデータをどう使うのかにまで踏み込んでいく
従来はモバイルアプリや課金マーケットを対象としていたが、それらから吸い上げたデータをどう使うかはユーザーに依存していた。
今回、Libringというデジタル広告に関する技術を持つ会社を買収したことで、アプリ市場や課金マーケットに加え、広告市場までを含めたビジネスへと拡大し、アウトプットを自動化できる分析サービスを提供していくことが可能になるという。
これは、同社がモバイル市場が持つすべての要素を包括的にまとめた提案ができる企業へと進化することを意味している。
向井氏の現時点におけるテーマは「日本をいかに元気にするか」だという。現状は良いが、自分たちの子ども世代らが成長して大人になったときに、日本がいまより良くなっているとは限らないと考えているという。
■外資系アプリによる日本侵食
たとえば、日本でTikTokや荒野行動が伸びているように、外資のコンテンツプロバイダーアプリの人気が広がっていることは、データを見るとわかる。
スマートフォンから吸い上げられるデータは、その人の生活をむき出しにできる類のデーターが多くを占める。つまり、外資系アプリが日本人のデータを吸い上げることで外資が日本のデータを持ち始めているのである。
日本企業を元気にするためには、外資系以上のデータを集めないと太刀打ちできない。重要なのは目先の利益ではなく、次の将来的な戦略のためのデータを持つことで、それをしないと「今後の日本企業の成長における阻害要因になる」と危機感を感じていることを強調した。
■ニチレイのモバイル戦略とは?
基調講演として、株式会社ニチレイ経営企画部事業開発グループの関屋英理子氏が登壇した。ニチレイは冷凍食品メーカーのイメージが強いが、冷凍食品は売上げの1割ほどで、それ以外の事業の方が大きいとのこと。実は日本では最大、世界では第5位に入る低温物流会社であると紹介。そんなニチレイがモバイルで何をしようとしているのを講演した。
関屋氏が2017年にこのグループに異動した時に、日本の食品業界は、2040年には総体として赤字になるという予測データを見て衝撃を受けたという。
■末端の消費者の顔が見えてこない
現状の問題点としてニチレイは食品を取り扱っているが最終的に商品が届く消費者の顔が見えていないという状況になっているという。このままだと、経営判断のためのデータも得られず、それが、様々な遅れにつながっているという。
これまでの常識では解決できない状況にまでなっており、それを打破するために、顧客との接点を持つアプリ「conomeal」(コノミル)を開発したとのこと。
こうして得られたデータを元にインドで肉の流通をeコマースで展開するスタートアップ「Licious」に17億円を出資した。こうした投資判断にもデータが活用されているわけだ。
■アプリ開発できないならできる奴を連れてくる
同社のアプリ開発に関しては、まったくといっていいほど経験が無かったとのこと。であるなら、アプリ開発のプロを連れてくればいいということで株式会社スペックホルダーに相談して開発を進めたという。
このアプリ開発については、スペックホルダー代表取締役の大野泰敬氏がパネルディスカッションに加わり説明した。
スペックホルダーは大企業の新規事業をサポートする会社で、プロジェクトごとに大手のコンサルティング会社に負けない人材を集めたクラウド型のチームを作っている。
ニチレイとしては、今回のプロジェクトは、独立した個人や小さな会社のチームをとりまとめる必要があり大変だったが、そのアウトプットが半端なく高い結果、非常にうまく行ったとのこと。
■App Annieユーザー企業によるセッション
続いて、ユーザー企業によるセッションが行われた。タクシー事業者とソニーのジョイントベンチャーでタクシー配車アプリ「S.RIDE」を提供しているみんなのタクシー株式会社モビリティサービス部長の橋本洋平氏が登壇し、S.RIDEのこだわりを説明した。
東京のタクシー市場は週1回以上利用しているユーザーは、全体の8%だが、金額ベースでは売り上げの80%となっていて、一部のヘビーユーザーがタクシーを利用している状況になっているという。
当初S.RIDEは、このヘビーユーザーをターゲットにした。こうしたユーザーは時間や効率の意識が高い傾向にある。そのため、ステップやタップミスを減らしてスライド1回でタクシーが呼べるインターフェイスにこだわった。その結果、ユーザーがストレスなく、効率よく利用できるUIが完成したという。
さらに、ネット決済の導入も進んでおり事業としても順調に成長していることを紹介した。
橋本氏は「将来はタクシーのような乗り物は、人だけではなく、品物も運んでいくのではないだろうか。これにソニーのセンシング技術を使えば、事故や渋滞を避けて最適な場所を走れ、タクシーだけでなく、将来の自動運転含めて、世の中の移動の効率が良くなっていく。移動手段が一元サービスで決済までシームレス利用されることで人と物流の移動が効率化し、交通問題が解決するのでは」とまとめた。
■スマホでゲーム実況が配信できる「Mirrativ」
続いて、株式会社ミラティブ最高戦略責任者(CSO)の岩城農氏は「あつまる、つながる、一緒にあそぶスマホゲームのおともに」としてスマートフォンでゲームなどの実況ができる「Mirrativ」を紹介した。
Mirrativは、フォロワー100名以下のアカウントが8割弱を占めており、スモールコミュニティが多いとのこと。友達の家でゲームをやっているようなコンセプトで、ゲームを中心にしたコミュニティ空間になっているという。
Youtube、Twitch。niconico、ツイキャスなどの配信プラットフォームで現在ゲーム実況が盛んだ。PCを使った配信は1%程度だが、スマートフォンに特化して簡単に配信できるMirrativでは20%になっていて、日本1位となっている。エモモというアバターも人気になっており、プロダクトプレースメントの伸びも期待できるとした。
■転職に欠かせないデータ活用
エン・ジャパン株式会社デジタルプロダクト開発本部プロモーション部部長田中奏真氏は「モバイルシフトの失敗から得た教訓」としてエン転職でのデータの活用の失敗を公開した。
エン転職は、20代向けの転職サービスで、競合より先行して2015年に提供を始めたという。しかし、求職者のターゲットを適正化したデータの取得が遅れたことで、多くのユーザーを失う結果となってしまったという。
アプリの提供を始める際に、App Annieは知っていたが、吸い上げたデータを使っていればライバルよりもっと早くアプリを提供できたかも知れなかったし、アプリの機能に生かせたかもしれないと後悔しているそうだ。
現在は、アプリ利用のユーザーの方が多いが、当時はモバイル版のWebの方が多く、アプリのユーザーが少なかったため、App Annieの有料サービスを利用していなかった。そのため、その期間はデータを有効に活用することができなかったという。
例えばニュース系アプリは、ビジネスパーソンに人気で転職アプリを使っているユーザーとの親和性が高いという。ところが転職アプリから吸い上げたデータの解釈ができていなかったことで、数多あるニュースアプリでどれに広告を出せば良かったかの判断を失敗したそうだ。
さらに、同じ社内でも部署によって注目しているデータが異なり、その結果、社内での意思決定が難しくなっていたとのこと。それを改善するために、まずはデータを中心に置き共通言語にすることで各部署との連携を改善していったことを紹介。データの取得も大事だが、注目する部分を統一すること、同じ目線を保つことが重要であるとまとめた。
■若年ユーザーを獲得するためのWOWOWの取り組み
株式会社WOWOWマーケティング局企画部リーダーの大原康明氏は「有料放送の未来」として同社の取り組みを紹介した。WOWOWは放送だけでなくネット同時配信、オンデマンドを始めている。現在、多くの配信サービスがある中で、課題となっているのが若いユーザーの獲得だという。
それには月額料金の2,300円がハードルになっているとのこと。しかし、若いユーザーが参加しているライブやフェスは確実に増えており、どこにお金を使うのか? といった考え方がこえまでとは変わってきているそうだ。
WOWOWで若いユーザーを獲得するためには、ユーザーの嗜好に合わせて有料放送以外の事業を増やすことが重要だと分析した。
そのために同社が持つ290万人の顧客情報を活用し、今後の成長のために、新しい活躍の場が必要な声優を起用し、気鋭クリエーターとのコラボレーション番組を展開したとのこと。
これをさらに伸ばすために、どの配信先を最適なのかをデータを活用して決め、WOWOWが持つデータも活用し、ファンと親和性の高い企業を発掘するなど、新事業を開拓することで、有料放送事業社から総合エンターテイメント企業へと変革していくとした。
以上、App Annieを活用することで、データを集め、解析することで新商品や新サービスの開発、改善点の洗い出し、企業の方向性の決定など、重要な決定がたやすく可能になる事例を紹介した。アプリを出したけど、吸い上げたデータの扱い方がわからないという企業があれば、App Annieの活用を考えてみるといいだろう。
上倉賢 @kamikura
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このステートメントは前述したように「モバイルの力を全ての企業に」という意味で「日本の企業の方々が、卓越したビジネスの成功を支援していく」として、日本の企業をサポートするのがApp Annieの役割だと説明。
App Annieは2010年にアプリのダウンロードと課金額を提供することからビジネスをスタートさせ、モバイルアプリの利用データの提供を始め、マーケティングデータの提供をするまでに成長。
2021年にはモバイルを活用している全ての企業にとってよいパートナーになるようなプロダクト開発を目指しており、それに向けてLibringという会社を買収したことを紹介した。
■今後は吸い上げたデータをどう使うのかにまで踏み込んでいく
従来はモバイルアプリや課金マーケットを対象としていたが、それらから吸い上げたデータをどう使うかはユーザーに依存していた。
今回、Libringというデジタル広告に関する技術を持つ会社を買収したことで、アプリ市場や課金マーケットに加え、広告市場までを含めたビジネスへと拡大し、アウトプットを自動化できる分析サービスを提供していくことが可能になるという。
これは、同社がモバイル市場が持つすべての要素を包括的にまとめた提案ができる企業へと進化することを意味している。
向井氏の現時点におけるテーマは「日本をいかに元気にするか」だという。現状は良いが、自分たちの子ども世代らが成長して大人になったときに、日本がいまより良くなっているとは限らないと考えているという。
■外資系アプリによる日本侵食
たとえば、日本でTikTokや荒野行動が伸びているように、外資のコンテンツプロバイダーアプリの人気が広がっていることは、データを見るとわかる。
スマートフォンから吸い上げられるデータは、その人の生活をむき出しにできる類のデーターが多くを占める。つまり、外資系アプリが日本人のデータを吸い上げることで外資が日本のデータを持ち始めているのである。
日本企業を元気にするためには、外資系以上のデータを集めないと太刀打ちできない。重要なのは目先の利益ではなく、次の将来的な戦略のためのデータを持つことで、それをしないと「今後の日本企業の成長における阻害要因になる」と危機感を感じていることを強調した。
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関屋氏が2017年にこのグループに異動した時に、日本の食品業界は、2040年には総体として赤字になるという予測データを見て衝撃を受けたという。
■末端の消費者の顔が見えてこない
現状の問題点としてニチレイは食品を取り扱っているが最終的に商品が届く消費者の顔が見えていないという状況になっているという。このままだと、経営判断のためのデータも得られず、それが、様々な遅れにつながっているという。
これまでの常識では解決できない状況にまでなっており、それを打破するために、顧客との接点を持つアプリ「conomeal」(コノミル)を開発したとのこと。
こうして得られたデータを元にインドで肉の流通をeコマースで展開するスタートアップ「Licious」に17億円を出資した。こうした投資判断にもデータが活用されているわけだ。
■アプリ開発できないならできる奴を連れてくる
同社のアプリ開発に関しては、まったくといっていいほど経験が無かったとのこと。であるなら、アプリ開発のプロを連れてくればいいということで株式会社スペックホルダーに相談して開発を進めたという。
このアプリ開発については、スペックホルダー代表取締役の大野泰敬氏がパネルディスカッションに加わり説明した。
スペックホルダーは大企業の新規事業をサポートする会社で、プロジェクトごとに大手のコンサルティング会社に負けない人材を集めたクラウド型のチームを作っている。
ニチレイとしては、今回のプロジェクトは、独立した個人や小さな会社のチームをとりまとめる必要があり大変だったが、そのアウトプットが半端なく高い結果、非常にうまく行ったとのこと。
■App Annieユーザー企業によるセッション
続いて、ユーザー企業によるセッションが行われた。タクシー事業者とソニーのジョイントベンチャーでタクシー配車アプリ「S.RIDE」を提供しているみんなのタクシー株式会社モビリティサービス部長の橋本洋平氏が登壇し、S.RIDEのこだわりを説明した。
東京のタクシー市場は週1回以上利用しているユーザーは、全体の8%だが、金額ベースでは売り上げの80%となっていて、一部のヘビーユーザーがタクシーを利用している状況になっているという。
当初S.RIDEは、このヘビーユーザーをターゲットにした。こうしたユーザーは時間や効率の意識が高い傾向にある。そのため、ステップやタップミスを減らしてスライド1回でタクシーが呼べるインターフェイスにこだわった。その結果、ユーザーがストレスなく、効率よく利用できるUIが完成したという。
さらに、ネット決済の導入も進んでおり事業としても順調に成長していることを紹介した。
橋本氏は「将来はタクシーのような乗り物は、人だけではなく、品物も運んでいくのではないだろうか。これにソニーのセンシング技術を使えば、事故や渋滞を避けて最適な場所を走れ、タクシーだけでなく、将来の自動運転含めて、世の中の移動の効率が良くなっていく。移動手段が一元サービスで決済までシームレス利用されることで人と物流の移動が効率化し、交通問題が解決するのでは」とまとめた。
■スマホでゲーム実況が配信できる「Mirrativ」
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Mirrativは、フォロワー100名以下のアカウントが8割弱を占めており、スモールコミュニティが多いとのこと。友達の家でゲームをやっているようなコンセプトで、ゲームを中心にしたコミュニティ空間になっているという。
Youtube、Twitch。niconico、ツイキャスなどの配信プラットフォームで現在ゲーム実況が盛んだ。PCを使った配信は1%程度だが、スマートフォンに特化して簡単に配信できるMirrativでは20%になっていて、日本1位となっている。エモモというアバターも人気になっており、プロダクトプレースメントの伸びも期待できるとした。
■転職に欠かせないデータ活用
エン・ジャパン株式会社デジタルプロダクト開発本部プロモーション部部長田中奏真氏は「モバイルシフトの失敗から得た教訓」としてエン転職でのデータの活用の失敗を公開した。
エン転職は、20代向けの転職サービスで、競合より先行して2015年に提供を始めたという。しかし、求職者のターゲットを適正化したデータの取得が遅れたことで、多くのユーザーを失う結果となってしまったという。
アプリの提供を始める際に、App Annieは知っていたが、吸い上げたデータを使っていればライバルよりもっと早くアプリを提供できたかも知れなかったし、アプリの機能に生かせたかもしれないと後悔しているそうだ。
現在は、アプリ利用のユーザーの方が多いが、当時はモバイル版のWebの方が多く、アプリのユーザーが少なかったため、App Annieの有料サービスを利用していなかった。そのため、その期間はデータを有効に活用することができなかったという。
例えばニュース系アプリは、ビジネスパーソンに人気で転職アプリを使っているユーザーとの親和性が高いという。ところが転職アプリから吸い上げたデータの解釈ができていなかったことで、数多あるニュースアプリでどれに広告を出せば良かったかの判断を失敗したそうだ。
さらに、同じ社内でも部署によって注目しているデータが異なり、その結果、社内での意思決定が難しくなっていたとのこと。それを改善するために、まずはデータを中心に置き共通言語にすることで各部署との連携を改善していったことを紹介。データの取得も大事だが、注目する部分を統一すること、同じ目線を保つことが重要であるとまとめた。
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それには月額料金の2,300円がハードルになっているとのこと。しかし、若いユーザーが参加しているライブやフェスは確実に増えており、どこにお金を使うのか? といった考え方がこえまでとは変わってきているそうだ。
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そのために同社が持つ290万人の顧客情報を活用し、今後の成長のために、新しい活躍の場が必要な声優を起用し、気鋭クリエーターとのコラボレーション番組を展開したとのこと。
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以上、App Annieを活用することで、データを集め、解析することで新商品や新サービスの開発、改善点の洗い出し、企業の方向性の決定など、重要な決定がたやすく可能になる事例を紹介した。アプリを出したけど、吸い上げたデータの扱い方がわからないという企業があれば、App Annieの活用を考えてみるといいだろう。
上倉賢 @kamikura
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