今季は28節終了時点でリーグ23試合に出場。正守護神の座を掴み、飛躍のシーズンを過ごす。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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――しかし今季開幕前は体調不良で出遅れてしまいました。今季にかける想いが強かった分苦しかったのでは?
「『何やっているんだ』って感じでした。今年に懸ける想いは本当に強くて、オフシーズンから動き出すタイミングもいつもより早くしたり入念に準備してきたにもかかわらずですからね。でもやるしかないと、うまく気持ちを切り替えるようにしました」

――オフからどのくらい早く入った?
「チームは1月20日からタイキャンプで、僕は鹿児島に帰っている時から少し動くようにしていました」

――やっぱりオフシーズンは鹿児島に帰るんですね。
「はい。今まで在籍したクラブに顔を出すようにしています。地元には応援をしてくれる人がたくさんいますし、代表に入ったら横断幕を作ってくれる。離れていても自分のことを見てくれているというのは、すごく有難いです。もちろんテレビやスタジアムでプレーを見てもらうのが一番かもしれないですけど、実際に帰ったときに顔を出して何か恩返しができればと、それはいつも思っています」
 
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 10月28日にお届けする後編では、メンタルを保つための秘策、A代表、そして東京五輪への想いなどを話してもらっている。

PROFILE
大迫敬介/おおさこ・けいすけ/1999年7月28日生まれ、鹿児島出身。186臓86繊9焼SSS―フェリシドFC―広島ユース―広島。プロ2年目の昨季までは公式戦で出番を得られなかったが、自分と向き合い、コツコツとトレーニングを積んできた。今年は5月にA代表に選出され、6月に開催されたコパ・アメリカではチリ戦で代表デビューを飾った。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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 2020年に開催される東京五輪。本連載では、本大会での活躍が期待される注目株の生い立ちや夢舞台への想いに迫る。
 
 7回目は、抜群の反射神経を活かしたセービングが持ち味で、今季上位争いをするサンフレッチェ広島の堅守を支えている大迫敬介が登場。
 
 中学時代まで鹿児島で過ごした大迫は、プロを夢見て広島ユースへと入団。高校3年への進級を間近に控えた17年3月にトップチームとプロ契約を結ぶと、今年は広島の正守護神の座を射止め、さらに今年5月のキリンチャレンジカップでは当時19歳にしてA代表に初選出と、飛躍のシーズンを送っている。まさに破竹の勢いでステップアップする守護神は、いかに育ってきたのか。
 
 中編では、高校時代に感じていた意外なウィークポイント、そして今に活きている経験、公式戦の出番が得られなかったプロ1年目の苦難をお届けする。

前編はこちら

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――廣末陸選手、若原智哉選手など逸材揃いの年代で、大迫選手はU-16から世代別代表に初招集されています。初めての代表活動で感じたものは?
「代表入りはひとつ目指してきたものでしたし、そこで通用する手応えがあったのも確かです。初めは緊張しましたけど、全部が初めての体験だったので、刺激だらけだったのは覚えています」

 ――具体的には?
「沖縄の国内キャンプから参加して、初めて海外にいったのが、たしかイタリア遠征でした。その時に感じたレベルの高さは強烈でした。こんなに上手い選手がいるんだなと。そこで世界との差を痛感しましたね」
 
――ただ、代表への想いも芽生えたのでは?
「そうですね。常に代表に入り続けたいという想いは、やっぱりそこで強くなりました」
 
――代表に入り続けるため、また試合で勝つために力を入れていたのは?
「シュートストップのところは武器だったので、そこは常に磨きをかけました。どんな試合でもピンチはあるものなので、そこでチームを助けられるようにと」
 
――どちらかと言えば、短所を伸ばすというより、長所を伸ばしていたと?
「そうですね。でも、短所ももちろんあったので、ウィークポイントが少しでもストロングポイントに変えられるように、というのは考えていました」
 
――具体的にウィークポイントはどんなところ?
「PKや駆け引きの部分です。日頃からチームメイトに手伝ってもらって練習していました。それとビルドアップも課題だと思っていて、そこもすごく苦労しました。今でもまだまだですけど、トップチームでもGKを含めたビルドアップをやっていて、少しずつ成長しているのかなと。少しずつ仲間と合わせられるようになってきた感覚はあります」
 
――なぜ駆け引きが苦手だったのでしょう。
「考え過ぎてしまっていたのかもしれません、でも今はトップチームで、(林)卓人さんや(廣永)遼太郎くんといった先輩に話を聞きながら、少しずつ良くなってきている実感があります」
 
――広島ユースの時はやはりトップ昇格しか考えていなかったですか?
「もちろん。それしか考えていなかったです」

――広島のトップチームをどう見ていた?
「3度もリーグ優勝をしていましたし、正直自分が入ってどれだけできるのかも想像できないくらいにレベルが高かった。それでも僕が目指しているレベルはそこだったので、そこに到達するためには何が必要かって考えていました」

――当時トップチームを率いていた森保一監督のサッカーはどうだった?
「基本的にトップとユースのやり方は、システムも含めて同じだったので、すごく参考にしていました。特にGKを含めたビルドアップは特徴的で、僕自身苦戦することは多かったですけど、トライしながらやっていました」

――プロに入って感じた、最も大きな違いは?
「スピード感もそうですけど、シュートを打たれた時の相手との駆け引きはものすごく次元が違うなと感じました」
 
――駆け引きは高校時代に苦手としていた部分ですよね。かなり焦ったのでは?
「全然ついていけなくて、もう絶望的でしたね。ユースでなら簡単に止められるようなボールが全然取れなかったり、みんながキャッチできるところを、僕だけ掴めずに弾いてしまったりとか。そういったレベルの高さはすごく痛感しました」

――プロ1、2年目は苦労しましたが、3年目の今年は飛躍のシーズンになりましたね。2月19日のACLチェンライ・ユナイテッド戦で初めてプロの公式戦に出場して、どんな心境でした?
「まずはやっとチャンスをもらえたという嬉しい気持ちと、絶対に勝たないといけない試合だったので、大きな緊張感がありました。ただ1年間苦しい想いをしてきたという自信というか、そういった経験もあったので、すごく落ち着いてゲームに入れました」

――堂々とした振る舞いが印象的でした。絶望感を味わったプロ入り当初から、どんな意識の変化が?
「1年目は練習試合どころか紅白戦にも出られない状況がずっと続いていて、正直辛かったですね。試合勘というか、それはすごく大事だなと思いました。もちろんそれに頼ってしまってはいけませんが。でも出られても10分、15分というのが現実だったので、いろんなシチュエーションが起きるなかで、練習でやってきたことを出せるかというのを重要視していました。難しかったですけど、少しでも出場時間を増やすために、日頃の練習から試合を意識してやっていました」

――そうした振る舞いはどう身につけていったのですか?
「特に今季に入ってGKコーチが変わって、そういった身振り手振りのところはよく言われます。ユース年代だと普通のボリュームの声でもグラウンドで通りますけど、プロの舞台だと、普段の声量では観客の声にかき消されてしまう。そういう時に声ではなくて身振り手振りで伝えないといけないというのは実感している。そこの工夫をすごくしています」
――シュートストップ以外に、高校時代に他の選手と違うなと感じていた強みは?
「プレーの力強さや、一瞬の決断力は武器でしたし、他の選手に負けたくないと思っていました」

――普段の生活でも決断は早いほうですか?
「いえ、サッカーだけですね。普段はすごく優柔不断です(笑)」

――プレーを見ていると、クールなピッチ内と柔和なピッチ外では別人のようですね。
「自分でもまったく違うと思います」

――意識して切り替えているのですか?
「意識はしていないです。自然と切り替えているのかもしれないですね」
 
――なぜ自然と切り替えられるのでしょう。
「自分でも分からないです。オンとオフを意識していた時期はあったのかもしれないですけど、そこのスイッチを切り替えるのは勝手にできるようになりましたね」

――高校の経験で、今一番活きていることは?
「チャンピオンシップだけではなくて、代表から外れたりとか、自分のミスで失点したりとか、いろんな悔しい想いをしてきたなかで、そういった積み重ねというか、一つひとつのプレーのこだわりというのは強くなったかなと思いますね」

――高3の時のプレミアリーグでは得失点1差でチャンピオンシップの決勝にいけなかった。具体的にそうした悔しい経験から学んだことは?
「得失点差1で決勝にいけなかったのは本当に悔いが残っています。一つひとつの積み重ねが結果に関わってくるんだなと、すごく強く感じました。どこかの失点を1個でも押さえていれば、とか。1回1回は小さいけど、そういうものが最後に大きな差になって結果として表われるんだなと」

――特にGKはひとつのミスが試合を左右するポジションですからね。メンタル面も相当鍛えられたのでは?
「そうですね。もちろんショッキングなこともありますけど、そこでGKとしてどういう立ち居振る舞いをしたほうがいいのかとか、どういう身振り手振りで味方を鼓舞するのかとか、そういうのはすごく自分としては学んできたつもりです」