アニメ制作会社「スタジオよんどしい」を提訴し、記者会見をする同社社員の男性(左)=2019年10月18日午後、東京都内、榊原謙撮影

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 残業代込みの賃金を支払う「裁量労働制」の適用を理由に、長時間労働に見合った残業代を支払わなかったのは違法だとして、アニメ制作会社「STUDIO4℃(スタジオよんどしい)」(東京)の社員の男性(25)が、未払い残業代など計約534万円の支払いを同社に求める訴訟を東京地裁に起こした。

 同社はスタジオジブリ出身のアニメプロデューサーが社長を務め、今年公開されたアニメ映画「海獣の子供」などで知られる。

 男性と、男性が加入する労働組合、弁護士が18日、記者会見して明らかにした。提訴は10日付。

 会見で男性は、アニメや映像業界では長時間労働や残業代の未払いが「当たり前のように横行している」と指摘。「アニメ制作はとても魅力的な仕事だが、だからといって現場の『やりがい搾取』をしていいことにはならない。残業代がしっかりと払われれば、長時間労働の抑止にもなるはずだ」と話した。

 訴状などによると、男性は2016年に正社員として入社。アニメ制作の工程、スケジュール、人繰り、原画や動画などの素材を管理する「制作進行」として、入社当初から今年5月ごろまで海獣の子供を担当した。

 会社側は18年4月〜19年4月に男性に「専門業務型裁量労働制」を適用していたと主張したという。これが適用されると、実際に働いた時間に関わらず、労使が合意した「みなし時間」を働いたことになり、それに見合った賃金しか払われない。専門性の高い業務が想定され、適用対象は限定されている。

 これに対し男性側は、男性の業務内容は裁量労働制の対象業務とは言えないこと、最大で月100時間程度の長時間労働を余儀なくされ、適用の前提になる業務上の「裁量」が男性にあったとはいえないこと、会社側が労働条件を適切に伝えていなかったなどと主張。裁量労働制の適用は無効で、2年超分の未払い残業代が存在していると指摘する。

 訴状などによると、同社を調査した三鷹労働基準監督署は、19年2月ごろより前の裁量労働制の適用は認めず、残業代の未払いがあるとして、今年6月に同社に是正勧告を出したという。

 男性はタイムカードで出勤と退勤時間を記録していたが、会社側は「タイムカード記載の時間は実労働時間ではない」と主張し、残業代の支払いを拒否したとされる。その後の交渉でも進展がみられなかったことから、男性は提訴に踏み切ったという。

 よんどしいは、スタジオジブリでアニメ映画「となりのトトロ」「魔女の宅急便」のラインプロデューサーを務めた田中栄子氏が社長を務める。同社はアニメ映画「鉄コン筋クリート」「ベルセルク 黄金時代編」などで知られ、テレビCMやミュージックビデオなどの映像作品を幅広く手がける。

 同社担当者は朝日新聞の取材に「提訴の内容が分からず、お答えのしようがない」とした。是正勧告については「把握はしているが、公式なコメントはできない」と話した。