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セゾン情報システムズがこのほど、同社の働き方改革を紹介するセミナーを開催した。本稿では、同社が3年間かけて試行錯誤を繰り返しながら進めてきた働き方改革の実態を紹介しよう。講演を行ったのは、セゾン情報システムズ コーポレートサービスセンター 副センター長 兼 HRサポート部 部長 小山和也氏だ。

○大型案件の失敗で見えてきた3つの課題

冒頭、小山氏は「2014年に大型開発案件に失敗し、損害賠償請求を受けたことで、誰もが『変わることがない』と信じてきた神話が崩壊した。しかし、この事件を契機に経営課題が浮き彫りになった」と説明した。

明らかになった経営課題とは「技術開発力」「プロジェクトマネジメント力」「上意下達の閉鎖的な組織風土」だ。人事部としては、組織風土の刷新が必要だと判断し、「仕事環境と人事制度の刷新」「意思決定の透明性の担保」「Two Way Communicationの徹底」などの方針が策定された。

同社の取り組みにおいて、最大のポイントとなるのは「人事制度の刷新」だろう。同社の人事制度はどのように変わったのだろうか。

○「ノルマ」と「管理・制度」を徹底排除

小山氏は「管理部門は権限を振りかざし、禁止のルールを押し付けるなど、上からの立場になりがち。こうした組織風土を脱する必要があった。そのために、組織図から管理という言葉を排除した」と語った。

社員を制度・ルールから解放し、社員の自立と自立を支援する社風への転換を目指すという方針の下、さまざまな取り組みが行われた。まず、ゴールを目標という名のノルマにすることを廃止し、代わりに、共感、共鳴、協働を取り入れたのだ。

具体的には、管理職の命令を下位層に伝えて意思の疎通を図る「上意下達」をベースとした人事制度から、共感・共鳴から貢献内容に導く人事プログラムに刷新した。「VISION(事業計画)」が、旧制度においては制度の一番上に来ているが、新プログラムにおいては一番下に来ている。

○「VISION」を果たすために何をするかが重要

新人事プログラムは「役割の選択」「自律的行動・協働」「成果(ゴール=チーム目標)」「貢献内容を確認」といったボトムアップの形で構成されている。

「役割」はVISIONを果たすために定められる。その結果、定量的な指標が含まれなくなり、自律的な行動に変わりやすくなったという。評価も「役割にどう貢献したか」が指標となる。さらに、マネージャーの評価基準も現場に任せており、社員は自律の状態にある。

こうした人事プログラムの刷新に伴い、人事のミッションも変わった。従来のミッションは設計図のとおりに事が運ぶように、「監視・承認」だったが、現在は「ガイド=寄り添う」となっている。昇格基準の決定、組織長の任命、評価配分や昇給率の決定についても、人事はあくまでもガイドの立場で臨む。

「一般に、企業では部署で評価配分が決まっており、部署内で評価を調整する必要がある。しかし、現在当社では、部署内のスタッフが全員A評価でも大丈夫な状況」と小山氏。かなり思い切った転換と言えるだろう。

このように、セゾン情報システムズでは、労働価値の単位が「時間」から「役割・使命(ミッション)」へと、また、業務の進め方が「管理」から「自己責任」へと変わったのだ。

○自治をサポートするため「コミュニケーションパス」を確立

しかし、ご存じのとおり、自由には責任が伴う。「自由にどうぞ」と急に言われても、困ってしまう人が多いのではないだろうか。セゾン情報システムズでも、新プログラムを導入した当初は、現場から反対意見もあったそうだ。新しいことには生みの苦しみが伴う。そんな苦労をするくらいなら、これまでのルールに従っていたほうがラクと考える人もいておかしくない。

小山氏によると、自治を推奨するため、さまざまな権限を現場に移譲したそうだ。例えば、テレワークやフレックスタイムの利用も人事が決めたルールに基づいて実施している企業もあるだろう。しかし、セゾン情報システムズではテレワークやフレックスタイムについても「ノールール」とし、現場にすべて任せたそうだ。

そうした中、唯一定められているルールとして、「Customer First」「Keep Your Words」「Timely Communication」「Good Manner」「Challenge & Speed」が紹介された。

加えて、自治をサポートするため、階層を越えた交流、迅速な情報共有・伝達・意思決定を実現するコミュニケーションパスが確立されている。

このように人事プログラムの刷新、権限移譲、自治の推奨を軌道に乗せた後、新オフィスに移転した。新オフィスはフリーアドレスが採用されるなど、さまざまな仕掛けが行われている。

その結果、会議の在り方や社内コミュニケーションに変化が現れたそうだ。「それまで、会議は会議室を予約し、密室で定刻から定刻まで行っていたが、必要な時に、必要なメンバーで行うようになった。その結果、オープンなコラボレーションが生まれ、意思決定がスピーディーになった」(小山氏)

○働きやすくなった上に業績もアップ

さて、このような取り組みの結果、セゾン情報システムにはどのような効果がもたらされたのだろうか。

小山氏は3年間の成果として、残業時間の削減、有給休暇取得率の向上、1人当たりの売上と従業員営業利益・時価総額の増加を紹介した。

平均月間残業時間に関しては、2015年度は28時間だったところ、2018年度は22.5時間に削減された。「ノー残業デー」「〇時以降は残業禁止」といった施策は一切打ってないそうだ。

また、売上については、2015年度2400万円から3000万円に、営業利益は220万円から300万円に、時価総額は158億円から338億円に増えている。日本の働き方改革は生産性向上が伴っていないと言われるが、セゾン情報システムズの場合、違うようだ。

労働時間の短縮ばかり注目されがちな働き方改革だが、生産性や業績の向上が置き去りでは意味がない。セゾン情報システムズの取り組みをすべての企業で真似できるものではないが、大いに参考になる事例と言えるだろう。