生理痛や生理前の不調など、誰にも言えずひとりで悩んでいる人も多いのではないでしょうか。女性のための総合ヘルスクリニック・イーク表参道 副院長で、産婦人科専門医の高尾美穂先生に、MYLOHAS世代が知っておくべき「生理」と「ピル」にまつわる基礎知識を教えていただきましょう。

女性ホルモンが「ある状態」から「ない状態」に

赤ちゃんを迎えるため子宮に準備した内膜が、妊娠していないと血液とともに身体の外に出ていくのが「生理」です。「生理痛が重いのは、ホルモンバランスが崩れているのでは?」と心配する人もいますが、そもそも生理が来るということは、「エストロゲン」と「プロゲステロン」というふたつの女性ホルモンがきちんと出ている証拠なのです。

そもそも、エストロゲンがたくさん出ないと「排卵」は起こりません。そして、排卵のあと妊娠を継続させるために出てくるのが「プロゲステロン」です。エストロゲンは排卵をピークに徐々に量が減り、排卵後10日くらい経って妊娠していないと、プロゲステロンも出なくなる。

そして、両方の女性ホルモンが「存在する状態」から「存在しない状態」に変わると出血が起こる、というのが生理の仕組みです。

排卵から生理がはじまるまでの期間は、14日。生理の初日を第1日目として、次の生理の前日までを生理周期といいますが、一般的な生理周期は28日前後で、25〜38日は正常範囲

では、24日以下、39日以上の人は治療が必要かといえば、「生理不順」ではあるけれど、すべての人に治療の必要はありません。治療が必要な目安は、3ヵ月間生理が来ないこと。実は、それくらい生理周期というのはざっくりとしたものなので、数日早くなったりおくれたりしても心配することはありません。

生理がつらい人はみんな「月経困難症」

生理痛やPMS(月経前症候群:Premenstrual Syndrome)などで、生理がつらいことを「月経困難症」と呼びますが、月経困難症には、子宮内膜症や子宮筋腫などが原因の「器質性」と、子宮内膜症などではないけれどつらい「機能性」の2種類にわけられます。

婦人科に行って超音波検査をすれば、自分がどちらの月経困難症なのかわかりますし、それぞれ対処法もありますから、つらいときは我慢せず受診するようにしてください。

ほとんどの月経困難症は、「ピル」を飲むことで改善できます。ピルとは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを含む薬のこと。

毎日飲んでいれば、すでにエストロゲンが存在していると錯覚し、エストロゲンのピークをつくらない=排卵が起こらないので避妊できるというのが、もっとも知られているピルのはたらきです。

でもいまは避妊という目的以外にも、生理痛が重い人、量が多い人、生理前がいまいちな人、それから生理周期がバラバラでいつ来るかわからなくて困っている人の治療方法にもピルは活用されています。

ピルで改善できること

生理は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが両方ある状態から、ない状態に変わると出血することは先ほどお話しました。

じつは「生理不順」を安定させるのに、ピルはとても効果的ピルを飲むということで両方ある状態と、ない状態をつくりだすことができるので、希望する時期に生理を起こすことができるというわけです。

また「生理前の体調不良」(PMS)は、排卵後に出るプロゲステロンが引き起こしますが、ピルを飲むと排卵を起こさなくなるので、そもそも「生理前」という時期自体がなくなり、不調も起こりません

さらにピルに含まれているプロゲステロンの種類によっては、メンタルに有効なものもありますから、身体的な変化だけでなく、イライラやなどメンタルの改善にも期待できるのです。

そして、「生理痛」と「生理の量」もピルによって対処できること。生理痛は厚くなった内膜を、内膜自身が子宮を握りつぶして外に出すときに起こる収縮痛です。

低用量ピルを飲めば、準備される内膜が薄くなるので、生理の量は減るし、握りつぶす力も弱くなる。結果、生理痛が起こりにくくなります。

生理の痛みを我慢するのはもう古い

そもそも日本人は我慢することを美徳として育ってきているため、「痛み止めの薬」すら飲まず、ひたすら痛みに耐えるという人が少なからずいます。薬を飲むことに抵抗のある人には、まず「漢方」をおすすめしたりもしますが、ピルや痛み止めの薬と違って、効果が人によって違うという部分はいなめません。

ピルを敬遠する人もいますが、効果や副作用が十分わかっているいまは、痛み止めとピルは同じファーストラインにあって、どちらを選んでもいい時代。処方された分量を指定通りに飲めば心配はありませんし、ピルを飲むことで、長年の生理の悩みから一気に解放される人もたくさんいます。

ただ、ひとつ知っておいていただきたいのは、40歳を超えると血栓症のリスクが高くなるので、ピルをおすすめしづらくなるということです。

とくに血栓症のリスクが高くなるのは、飲みはじめの最初の2〜3ヵ月。その後安定していれば、50歳、もしくは閉経まで飲み続けることができます。ピルを検討している人は、30代後半にはじめておくといいでしょう。

若さと健康に必要な女性ホルモン「エストロゲン」

最後に、女性ホルモン・エストロゲンの重要なはたらきについて、お話ししておきましょう。エストロゲンは、生理を起こす働きの以外に、

01.肌や髪をつややかに保つ。
02.コレステロールの値を下げる。
03.血管の弾力性を保つ。
04.骨を丈夫にする。

など種々の大切なはたらきがあります。エストロゲンが急激に低下する産後や閉経後には、肌や髪はパサパサになり、骨がもろくなるのはこのためです。

いつまでも若々しく元気にすごすためには、生理があるべき年代、つまり10代から50歳くらいまでの約40年間に、エストロゲンをなくさないようにすることが大切です。

極端なダイエットをして生理が止まる、なんてもってのほか。それまでの生活習慣が、閉経後に大きな差となってあらわれます。これから年を重ねていくと、女性の身体はどんどん変化します。心配なことがあれば、すぐに相談できるよう、かかりつけの婦人科をいまから見つけておくといいですね。

次回は、生理予定日はコントロールできるの? 生理周期が短くなってきたけど、大丈夫?など生理にまつわる疑問にお答えします。

生理対策をもっと知りたい

生理痛を改善する5つの対処法。つらい痛みとさようなら

年齢でどう変わる? おかしな生理が起きる原因

高尾美穂(たかお・みほ)先生
女性のための総合ヘルスクリニック、イーク表参道副院長。医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター。東京慈恵会医科大学大学院修了。同大学付属病院産婦人科助教を経て現職。産婦人科外来に携わるほか、女性アスリートのメディカルサポートなどを行う。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー、株式会社ドーム(アンダーアーマー)のアドバイザリードクターとしても活動。ヨガを長年愛好し、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い、女性の心身をさまざまな角度からサポートしている。高尾美穂先生のサイト
イーク表参道

image via Shutterstock