キャッシュレス化が日本よりも進んでいると言われるアフリカ。2007年にケニアでスタートしたモバイル決済サービス「M-PESA」によってキャッシュレス化の波は徐々に広がり、2015年頃にはアフリカ大陸全土にまで波及しました。アフリカのなかでも特にケニアではその流れが顕著で、モバイル端末を使用したQRコード決済や送金など、その流通量は国内総生産の約半分にもなるほど。本稿では、アフリカ大陸でキャッシュレス化が進んできた背景やデジタル通貨を巡る最新動向について現地からお伝えします。

 

アフリカとモバイルマネーの親和性

2015年の総務省のデータによると、多くのアフリカ諸国で銀行口座の所有率が50%未満であり、20%未満の国も多数あることが分かっています。その主な理由として、銀行口座開設に必要な費用が高かったり、手続きが煩雑だったりするなどの理由が挙げられていますが、その一方で家族や知人への送金のニーズが高く、「銀行は利用できないが、預金や送金はしたい」という人が大勢いました。

 

携帯電話が急速に普及し、電話網も充実していたため、携帯電話を利用した送金・出金・支払いなどができるサービスは、アフリカ人がまさに欲していたサービスでした。モバイル決済サービスの「M-PESA」を始めたケニアの通信会社サファリコムのアクティブユーザーは、2007年から2018年までの間に100万人から3300万人まで増加したんですね。

 

このように急激に拡大したモバイルマネーは、人々の生活にどのような影響を与えているのでしょうか? モバイルマネーによって家族や知人への送金が可能になることはもちろん、治安の悪い地域や過疎部においては、携帯電話にお金を預金しておくことで、強盗などによる盗難リスクを軽減できるメリットもあります。

 

また、モバイルマネーに関わる多くのビジネスが創出されていることも数字として顕著に表れています。最も代表的な例は取次エージェント。エージェントは街中に点在するキオスクが担うことが多いですが、彼らは利用者の入金金額を携帯電話に登録したり、出金したりすることで手数料収入を得ることができます。2018年時点での取次エージェント数は20万を超えています。

 

このようにモバイルマネーがもたらす恩恵は様々ですが、ユーザー側のデメリットとして挙げられる点のひとつは手数料が必要ということでしょうか。例えばM-PESAの送金手数料は、日本円で5万円の送金を行う際、手数料が約300円と0.6%程度ですが、100円の送金の場合は10円程と10%の手数料になってしまいます。そのため、少額を送金する際の手数料は高額になってしまうということが言えるでしょう。

 

まだまだ広がるキャッシュレス化の波

2007年から広がってきたアフリカのキャッシュレス化ですが、最近では国家主導でキャッシュレスの波を広げようという動きがあります。例えばタンザニア連合共和国では、中央銀行であるタンザニア銀行(BOT)が、モバイルバンキング・電子マネー・インターネットバンクを介した取引を一つのプラットフォームで実行できる共有プラットフォーム(TIPS: Tanzania Instant Payment System) の開発計画の声明を出しています。異なるプラットフォーム間の取引を可能にすることで、モバイルマネーのようなノンバンキングシステムと従来のバンキングシステムの間のギャップを埋めることを期待されています。

 

ルワンダの中央銀行では取引処理を効率化し、経済成長を促すために独自のデジタル通貨の発行を検討していると、金融安定局の局長がインタビューで答えています。法定通貨に変わるデジタル通貨の発行を検討している国は、ほかにもオランダやシンガポール、カナダ、ロシアなど複数ありますが、デジタル通貨であれば国家は消費者のお金の流れを明確に把握できますし、利用者にとっても国が発行しているデジタル通貨ということで安心して利用できるというメリットがあります。(日本では中央銀行発行のデジタル通貨の計画はありません)

 

国家主導ではなく民間主導のデジタル通貨計画もあります。Facebookが主導で開発計画を行なっている仮想通貨「Libra」はその1つ。Libraは銀行口座を持たない人でも簡単にデジタル通貨を保管・管理し、手数料を抑え、送金や支払いといった普段の作業を行えるようにすることを目的としており、様々な決済企業がこのプロジェクトが協力の意思を示していますが、欧米や中国の金融庁は大きな懸念を示しています(VISAやMaster Card、PayPalなどは10月に離脱)。

 

2019年の6月時点でFacebookのユーザーは20億人を超えており、そのうちアフリカのユーザーは約2億人(アフリカの人口の6人に1人の割合)。M-PESAが広くアフリカに広がったように、一国家以上の個人データを所有するFacebookのLibraが国家主導のデジタル通貨政策よりも受け入れられる可能性があります。キャッシュレス化をどんどん進めるアフリカ諸国がLibraを歓迎するのかどうか注目ですね。

 

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