Amazon Devices Event 2019で発表されたニューガジェット。写真/Amazon

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◆アマゾンが、IoT向け通信規格 Amazon Sidewalk を発表

 9月の下旬、アマゾンは米国シアトルの本社で開催した「Amazon Devices Event 2019」で新製品を発表した。スマートグラス「Echo Frames」や、アレクサ対応の指輪「Echo Loop」、ワイヤレスイヤホン「Echo Buds」、最新版Echoスピーカーなどとともに、ある技術が発表された。IoT向けの新通信技術「Amazon Sidewalk」だ(参照:BUSINESS INSIDER JAPAN/MONOist)。

 新製品の発表会なのに通信技術が発表されるのは奇妙に思える。しかし、新しい製品を出すには、新しい技術が必要なこともある。実際に、Amazon Sidewalk を利用した製品も2020年内に発売予定だ。飼い犬向けのトラッカー「Ring Fetch」である。ペットがエリア外に出たら知らせてくれる製品だ。この製品のポイントは、バッテリーが年単位で持つことだ。

 アマゾンは、Amazon Sidewalk のプロトコル仕様を公開して、サードパーティーによる製品開発を促す方針だという。IoT向デバイスでは、消費電力が低いことが要求される。頻繁に充電したり、電源に接続しなければならない製品は、それらを使う人間側のコストが高い。一度設置すれば、数年にわたってメンテナンスフリーで動くことが望ましい。そうした機器を実現できる通信技術。アマゾンは、Amazon Sidewalk でその世界のハブになろうとしているのかもしれない。

 というわけで、Amazon Sidewalk がどういった技術なのか、少し見ていこう。

◆Amazon Sidewalk の背景にある、現状の技術の問題点

 Amazon Sidewalk については、『Introducing Amazon Sidewalk』というページがある。そこではこの技術が、既存の技術の隙間を縫うものだと解説されている。Bluetooth や Wi-Fi 接続は距離が短く、5G は複雑過ぎると書いてある。

 Bluetooth は、1989年にスウェーデンのエリクソン社主導で提唱された近距離用無線通信規格だ。2.4GHzの周波数帯を使い、半径10メートル以内の機器と接続できる(参照:コトバンク)(より出力の大きな Class 1 では、到達距離は100mとなる)。

 Wi-Fi は、アメリカ電気電子学会が標準化した高速無線LANの規格だ。2.4GHzの周波数帯を使い、屋内では数十メートルの到達距離となる。また、5GHzの周波数帯を使うものも出ている(参照:コトバンク)。Bluetooth も Wi-Fi も、100メートル以下の短い距離を想定した規格と言える。

 対して 5G は、第5世代(5th Generation)無線移動通信技術の略称である。より高速な通信を目指しており、高周波数帯の電波の利用が必要になる。日本では、3.7GHz帯、4.5GHz帯と28GHz帯の電波を5G用に割り当てることになっている。1平方キロメートル当たり100万台の端末を同時接続でき、リアルタイム性の高い用途に向く低遅延を目指している(参照:ITmedia Mobile)。

 こうした様々な要望や用途を実現するために、5G は高度な内容になっている。Introducing Amazon Sidewalk のページで「5G は複雑過ぎる」と書いてあったのも分かる。屋外使用を想定した飛距離を持ち、低電力で、シンプルな規格が欲しい。そう考えるのも当然だろう。

 Amazon Sidewalk は、900MHzの周波数帯を使う。Bluetooth や Wi-Fi、5G に比べて低い周波数帯を利用する。その分、高速な通信は望めない。ただ、通信量が多くないのなら、そもそも高速である必要はない。その代わりに低い周波数ならば、同じ消費電力でより遠くまで電波を飛ばすことができる。Amazon Sidewalk を利用した場合、デバイスの接続範囲は1キロメートル以上になるそうだ。電池の持ちは、先述の通りである。

 Amazon Sidewalk で使う900MHzは新しいものではなく、数10年前から利用されている。北米や欧州の無線呼び出し(日本のポケベルのこと。日本では250MHz帯を使用していた)はそのひとつだ。