【戸塚啓コラム】ラグビーW杯の合間で。ブラジル相手にしのいだ10分間の意味
ラグビーW杯の熱狂の合間に、サッカーのW杯予選が行われた。サッカーを主語にすれば「ラグビーW杯の合間に」ということになるのだろうが、世間一般の空気はラグビー一色に染まっている。
10月15日のタジキスタン戦で、森保一監督率いる日本代表は3対0の勝利をつかんだ。
テレビで観るアウェイのスタジアムは、中央アジア独特のものだと感じた。スタンドを埋めるのは男ばかりで、どこか殺伐とした雰囲気に包まれるのである。
人工芝のピッチも含めて、9月のミャンマーより戦いにくかったのは間違いないだろう。3対0の勝利は、悪くない結果だった。
日本代表の勝利に驚きがない一方で、地球の裏側から価値あるニュースが飛び込んできた。日本時間の15日早朝にU−22ブラジル代表と対戦したU−22日本代表が、3対2で競り勝ったのである。
試合は追いかける展開で動き出す。15分、微妙な判定でPKを献上する。
横内昭展監督代行が率いる日本は、GKも含めたDFラインからビルドアップを試みる。ところが、自陣での危険なボールロストが続く。
そうかといって、前線へ蹴り出す選択肢は取りにくい。3−4−2−1のシステムで1トップを務める小川航基は、セリエAでプレーする二人のCBを背負っていた。パスを収めることができても、ワンタッチでさばける距離感に味方選手がいることが少ない。タッチ数が多くなれば、個の力の違いでボールを奪われてしまう。
攻め手を見つけられないでいた27分、田中碧が無回転気味のミドルを突き刺して同点とする。前半はこのまま1対1でしのぎ、後半52分に田中がまたしても右足ミドルを決めてみせた。今度はCBに当たってコースが変わったものの、1点目と同じように迷いを感じさせないシュートである。明確な意図を感じさせた。
68分には中山雄太が左足ミドルを蹴り込んだ。ペナルティエリア外からの強烈な一撃は、文句なしのファインゴールである。これもまた、狙って決めた一撃だった。
3対1で迎えた80分過ぎには、またしてもPKを取られてしまう。前半のPKよりもさらに微妙なジャッジで、最近ではすっかり使われなくなった「ホームタウンデシジョン」という言葉を思い起こさせた。
85分には3バックの一角を担う町田浩樹が、一発退場を宣告される。両足でのスライディングタックルで、スパイクの裏が見える態勢で飛び込んでしまっただけに、判定に従うしかなかっただろう。
残り10分強を10人でしのぐシチュエーションは、戦い方として分かりやすく、それでいて難しい。ましてや相手はブラジルだ。ここからの時間帯を乗り切ったのは価値がある。
やりたいことを出し切ったうえでの勝利ではなかった、と感じる。そこに、大きな意味がある。
東京五輪で組み合わせに恵まれても、ホームの後押しを受けても、メダルを賭けるゲームでは主導権を譲ることもあるだろう。相手の時間帯をいかにしのぐかは、世代を問わずに共通するテーマだ。課題があげられる内容でも勝利を逃さなかったブラジル戦は、五輪の表彰台を目ざすチームの支えとなっていくに違いない。
強化は順調に進んでいると映るが、本大会の成功が約束されたわけではない。メダルをターゲットとするチームは、ほぼ間違いなくオーバーエイジを採用してくる。
16年のリオ五輪では、所属クラブと早くから関係を築いた久保裕也の招集が叶わなかった。オーバーエイジではない選手でも、その時々のクラブの事情で立場は一変する。
U−22世代にも海外組が増えている。本気でメダルを狙うならば、オーバーエイジも海外組になるだろう。サッカー協会も久保裕也の事例を教訓にしているはずだが、海外組を招集できる環境作りを確実に進めていく必要がある。
10月15日のタジキスタン戦で、森保一監督率いる日本代表は3対0の勝利をつかんだ。
テレビで観るアウェイのスタジアムは、中央アジア独特のものだと感じた。スタンドを埋めるのは男ばかりで、どこか殺伐とした雰囲気に包まれるのである。
日本代表の勝利に驚きがない一方で、地球の裏側から価値あるニュースが飛び込んできた。日本時間の15日早朝にU−22ブラジル代表と対戦したU−22日本代表が、3対2で競り勝ったのである。
試合は追いかける展開で動き出す。15分、微妙な判定でPKを献上する。
横内昭展監督代行が率いる日本は、GKも含めたDFラインからビルドアップを試みる。ところが、自陣での危険なボールロストが続く。
そうかといって、前線へ蹴り出す選択肢は取りにくい。3−4−2−1のシステムで1トップを務める小川航基は、セリエAでプレーする二人のCBを背負っていた。パスを収めることができても、ワンタッチでさばける距離感に味方選手がいることが少ない。タッチ数が多くなれば、個の力の違いでボールを奪われてしまう。
攻め手を見つけられないでいた27分、田中碧が無回転気味のミドルを突き刺して同点とする。前半はこのまま1対1でしのぎ、後半52分に田中がまたしても右足ミドルを決めてみせた。今度はCBに当たってコースが変わったものの、1点目と同じように迷いを感じさせないシュートである。明確な意図を感じさせた。
68分には中山雄太が左足ミドルを蹴り込んだ。ペナルティエリア外からの強烈な一撃は、文句なしのファインゴールである。これもまた、狙って決めた一撃だった。
3対1で迎えた80分過ぎには、またしてもPKを取られてしまう。前半のPKよりもさらに微妙なジャッジで、最近ではすっかり使われなくなった「ホームタウンデシジョン」という言葉を思い起こさせた。
85分には3バックの一角を担う町田浩樹が、一発退場を宣告される。両足でのスライディングタックルで、スパイクの裏が見える態勢で飛び込んでしまっただけに、判定に従うしかなかっただろう。
残り10分強を10人でしのぐシチュエーションは、戦い方として分かりやすく、それでいて難しい。ましてや相手はブラジルだ。ここからの時間帯を乗り切ったのは価値がある。
やりたいことを出し切ったうえでの勝利ではなかった、と感じる。そこに、大きな意味がある。
東京五輪で組み合わせに恵まれても、ホームの後押しを受けても、メダルを賭けるゲームでは主導権を譲ることもあるだろう。相手の時間帯をいかにしのぐかは、世代を問わずに共通するテーマだ。課題があげられる内容でも勝利を逃さなかったブラジル戦は、五輪の表彰台を目ざすチームの支えとなっていくに違いない。
強化は順調に進んでいると映るが、本大会の成功が約束されたわけではない。メダルをターゲットとするチームは、ほぼ間違いなくオーバーエイジを採用してくる。
16年のリオ五輪では、所属クラブと早くから関係を築いた久保裕也の招集が叶わなかった。オーバーエイジではない選手でも、その時々のクラブの事情で立場は一変する。
U−22世代にも海外組が増えている。本気でメダルを狙うならば、オーバーエイジも海外組になるだろう。サッカー協会も久保裕也の事例を教訓にしているはずだが、海外組を招集できる環境作りを確実に進めていく必要がある。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している