この日も先発フル出場の柴崎岳。3点目の起点になるなどチャンスを作り出す。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 2連勝同士の対決となったタジキスタンとの対戦は、後半の3ゴールで突き放して3−0。前半は難しい試合を強いられましたが、終わってみれば危なげない勝利でした。

 5日前のモンゴル戦から数名の選手を入れ替えた日本代表からは、相手への対策というよりも、現時点で永井選手と鎌田選手、伊東選手と堂安選手、そして遠藤選手と橋本選手を競わせていることが窺えました。

 対するタジキスタンは右サイドの選手を変更しており、”日本の左サイド”への対策が狙いとしてあったと思います。

 2週間の合宿を経て日本戦を迎えたタジキスタンは、周到な準備をしてきたことをピッチで体現しました。縦横をコンパクトに保ち、中盤ではボールを持つ日本の選手に対し近い距離でボールにアタックしてきます。4−1−4−1で構える2列目の”4”は縦パスを許さない立ち位置を意識しており、日本は「いかにして侵入していくのか」という命題を突きつけられました。

 対して日本は前半、”敢えて”か”仕方なく”か、ほとんど相手の2列目の”4”を分断するようなグラウンダーのパスは入れ込みませんでした。それよりも相手ディフェンスラインの背後やサイドへの長めのボールで揺さぶりをかけ、それにより相手の間延びを誘ったり、セットプレーを獲得してゴールに迫ったり、大味な展開を狙い続けました。

 これはリスク管理の意図もあったと思います。ただ、もう少し時間帯によっては違う策も見せてほしかったのが本音です。

 特に、相手の守備陣形は少し歪な形をしており、左インサイドハーフの10番の選手が少し高い位置を取ったまま、逆サイドにボールがあるときだけ攻め残りをしていました。そのことで、日本が左サイドからビルドアップを始めたときに斜めのパスで相手のディフェンスラインの前に侵入するルートが大きく空いていました。

 しかし、そのルートを使おうという意図が見えた場面は、3点目の起点となった柴崎選手の持ち出しとその直後の縦パスのシーンくらい。センターバックやボランチが相手を引きつける意図の持ち出しも、もう少し必要だったと思います。

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 ワールドカップ2次予選のプレッシャーもあるでしょうから、前半からそれほど大きいリスクを取る必要はないとは思いますが、相手のシステムやタスクによって空いてくる急所を狙うことはリスクにはなりづらいものです。もう少しトライして良かったと感じました。

 後半に入ると、タジキスタンは明らかに動きが重くなりました。最初のプレーですでに前半に見られていたようなコンパクトさや連動性は影を潜めていました。その隙をエース・南野選手がお得意の動き出しで出し抜き2得点。これほど再現性高く相手のマークを外す立ち位置とタイミングを知ってしまえば、今後もコンスタントに得点を重ねてくれると思います。南野選手はまさに日本のエースとなりました。

 得点が生まれてからはタジキスタンもホームの雰囲気そのままに諦めずに戦ってきたためによりスペースが空くようになり、日本の得点チャンスも数多く生まれました。

 やはり、日本と世界トップレベルがそうであるように、サッカーのレベルとは肉薄してきたように見えても両ゴール前の機微はなかなか追いついていかないもの。日本とタジキスタンにも両ゴール前には明確な差がありました。

 前半の大ピンチを救った権田選手の落ち着いたセーブはお見事でしたし、3点目の酒井選手のクロスと浅野選手のシュートも見事。前半こそ苦戦しましたが、両ゴール前で上回っていることで、結局はゲームの肝を押さえた戦いができました。

 ただ、攻守ともに相手をはめていく、凌駕していくような場面は数少なく、対タジキスタンの具体性が見えるまで時間を要したのも事実。もちろん選手たちの間では、充分な具体性を持っていたのだと思いますが、それは前述したように少し大味だったと思います。

 大味な展開はアジアに対しては有効打になりやすいですが、世界のトップレベルに対したときに無力になりやすい。そこに対しては、もう少しトライをしてみてほしいと感じました。

 ただ、アウェーで3点を奪い、無失点。そのために続けた切り替えの早さとゲームをマネジメントすること。その結果と意識の高さには拍手を送るべきでしょう。

【著者プロフィール】
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。鹿島で不動のCBとし2007年から前人未踏のJ1リーグ3連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。