タジキスタン戦では、南野が1トップ的なポジションを取り、状況を改善させた。4戦連続ゴールで決定力の高さも見せつけた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 移動を伴う中4日の強行日程、不慣れな人工芝ピッチと苦戦が予想された15日の2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選、タジキスタン戦(ドゥシャンベ)。前半は案の定、相手の球際での激しさと寄せの鋭さに苦しみ、ゴールをこじ開けることができなかった。後半に入って南野拓実(ザルツブルク)のゴールが立て続けに生まれて勝負がつき、最終的に3-0という結果に終わったものの、森保ジャパンは改めてアウェーの難しさを再認識する格好となった。

 結局、10月シリーズは2連勝。10日のモンゴル戦(埼玉)とタジキスタン戦で合計9得点を奪い、日本は2次予選突破に大きく前進した。とはいえ、懸案だった大迫勇也(ブレーメン)不在の1トップ問題が完全に解決できたかといえば、そうとも言い切れない部分があるのではないか。

 特に鎌田大地(フランクフルト)が最前線に陣取ったタジキスタン戦前半は、思うようにタメを作れず、チャンスらしいチャンスも作れなかった。鎌田にはクサビのボールも入らず、消えている時間帯も長く、攻撃陣も膠着状態に陥った。

 そこで後半から修正を図り、南野がポジションを上げて1トップ気味に陣取る場面が増えた。鎌田もフランクフルトでの主戦場であるトップ下から前向きにゴールに迫るようになったことで、相手守備陣が混乱。結果的に複数ゴールを生み出すことができた。この後半を通して、南野のセンターフォワード的なポジション取りが1トップ問題の新たな解決策の糸口になることが明確になったのは確か。そこはひとつの大きな収穫と言っていい。

 モンゴル戦にしても、南野が機転を利かせて永井と2トップに近い状態でプレー。その関係性が自陣に引いた相手を崩すきっかけになった。「相手の引いた状況の中、スペースがなかったのもありますけど、タテ関係というよりは横でどっちでも対応できるようにって僕は考えてました」と背番号9自身もコメントしていたが、2人が臨機応変に動いてスペースを作ったり、サポートに入ったりすることで、それぞれの得点チャンスは増加した。南野のクレバーな一挙手一投足が今回の2連戦では大いに光ったのだ。
 しかしながら、困った時に攻撃を落ち着かせてくれる大迫の確固たる代わりが見つからなかったのもひとつの事実。南野が完全なるトップ下としてプレーするためには、どっしり構えて起点を作ってくれるFWが必要なのだが、永井も鎌田もそのレベルには達しなかった。もうひとりの候補者だった浅野拓磨(パルチザン)は、タジキスタン戦途中から左サイドでプレー。森保監督からFW候補者と位置付けてられていないことが明らかになった。

 今後も鈴木武蔵(札幌)やU-22日本代表の上田綺世(鹿島)や小川航基(水戸)らが1トップ要員としてテストされていくだろうが、大迫ほど頭抜けた絶対的1トップの代役はそう簡単には見つかりそうもない。となれば、しばらくは南野を軸に据えながら、さまざまな組み合わせやバランス、関係性を構築しつつ、対応していくしかなさそうだ。

 今回の2連戦では、大迫不在問題の打開策という部分だけでなく、決定力の面でも南野の重要性がこれまで以上に高まることとなった。彼が日本代表の大黒柱に飛躍しつつあるのは嬉しいことだが、チャンピオンズ・リーグと国内リーグの過密日程を強いられる分、怪我やコンディション不良のリスクはある。南野の穴埋め役を探しておくこともチームとしては重要なテーマだ。鎌田や久保建英(マジョルカ)らを使う時間を増やしながら、新たなバリエーションを広げる努力も森保監督には払ってもらわなければならない。

「大迫依存」から「南野依存」へ問題のすり替えが起きないように、指揮官には先々を見据えたさらなる対策を講じてもらいたい。

文●元川悦子(フリーライター)