ゴールを喜ぶ鎌田(写真中央)と南野(9番)ら。タジキスタン戦は3ゴールで快勝した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 これまで話を訊くと、森保ジャパンの前線は「ある程度、自由にやらせてもらっている部分はある」と話す選手が多かったのが印象的だった。

 2トップが縦関係になる4-4-2を採用する現代表では、本来、CFに大迫勇也、セカンドトップに南野拓実、左サイドハーフに中島翔哉、右サイドハーフに堂安律が入る形が鉄板で、この“王道システム”は大迫が柔軟に中盤に落ちてボールをキープして時間を作り、南野、中島、堂安らが前線に抜け出すなど、いわゆる各タレントが有機的に絡み、ハーモニーを奏でることで相手守備陣を揺さぶって、攻撃の形を作り出すのが特長的だった。

 森保一監督はよく“柔軟性”という言葉を口にするが、状況に合わせて4人が即興で動くのが、良さだと言うことができたのだ。
 さて3-0で勝利したタジキスタン戦は、6-0と快勝したモンゴル戦同様に、太ももの負傷で前線のキーマン、大迫を欠く布陣だった。さらにモンゴル戦では抜群のスピードを活かしてゴールに絡んだ伊東純也、永井謙佑をベンチに起き、CFには鎌田大地、セカンドトップに南野、左サイドハーフに中島、右サイドハーフに堂安という新たなセットを試したのだ。

 すると前半はどこか窮屈そうな様子が見られ、無得点で折り返す。もっとも、ここで光ったのが、選手たちの判断力と即興性だった。南野と鎌田のポジションを逆にし、Jリーグ時代はパサーとして鳴らした鎌田が、いわゆるトップ下でプレーできるように役割分担したのだ。

 このポジションチェンジは選手たちの判断だったと南野は述懐する。

「(ポジションチェンジは選手の判断?)そうです。前半はお互いに入れ替わりながらやろうと話をしていて、後半はもうちょっと役割分担をはっきりさせて、僕がディフェンスラインで駆け引きして、(鎌田)大地がスペースを見つけて、というような。それは大地もチームでやっているプレーだと思うし、そこは大地の特徴でもあると思うし、それを今日やってくれたからこそ、自分も動きやすいスペースができたと思う。そうやってお互い長所を出し合ってプレーしていくのが重要なので、そういう感じでした」
 一方の鎌田も次のように語る。

「森保さんに言われたわけではなく、前半の途中から僕がボールに触れなくて、(南野)拓実くんも気を使ってそういう風にしてくれました。僕はボールに触れないとなにもしていなかったので、後半の頭から少しできるようになりました。ハーフタイムというか、前半の40分あたりから(南野と)ふたりでそういう話はしていて、後半始まる前にも拓実くんに『このまま(鎌田が下がる形で)やらせてください』と話しました」

 このポジション変更が、52分と55分に南野のワールドカップ予選3戦連続弾、そして国際Aマッチ4戦連続弾となる2ゴールが生まれるキッカケになったのだが、その背景には「相手は前半はマンマーク気味にきていましたが、相手のCBは僕たち2トップに対して、中盤に引いた時についてこなかった。だから僕が中盤に引くと数的有利を作れた。そこで上手く前を向くことができました」と鎌田は分析する。
 モンゴル戦では永井、伊東のスピードを活かした縦に速い展開が光ったが、タジキスタ戦は各選手の柔軟な位置取りによるパス交換で状況を打開。また新たな攻撃の可能性を示したと言えるだろう。

 経験豊富な長友佑都は「サコ(大迫)は絶対的な存在ですが、今回は代わりに入った選手が機能してくれたと思います、だから(モンゴル戦は)6-0、(タジキスタン戦は)3-0の結果を残せた。彼らは『代わりではないんだ』と、自信が付いたはず」と振り返る。

 この言葉のように、2連勝とともに、今回の連戦で得られた収穫は小さくないように映る。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)