企業のSNS担当者なら誰しも恐怖する「炎上」。実際に炎上を起こすと、どうなってしまうのか? 炎上を防ぐコツとあわせて紹介する(写真:プラナ/PIXTA)

「Twitterは怖いからやらない」という企業は少なくない。炎上につながるリスクがあるだけでなく、誤爆(プライベートアカウントと自身が担当する企業アカウントを間違って投稿すること)などのリスクもある。誤爆と明らかになっているわけではないが、例えば次のような事件も起きている。

2019年7月、CBCテレビ報道部公式Twitterが、政治家の和田政宗氏に対して「ちょっと小突かれただけで、暴行事件とは。大げさというより、売名行為」とツイートした。和田政宗氏は7月21日投開票の参議院選挙に立候補しており、仙台市で男性から暴行を受けたと動画付きで投稿して話題になっていた。

CBCテレビ報道部公式はその後、「現状、アクセス権のある報道部員が投稿した形跡は確認できません」と乗っ取りの可能性を示唆して再炎上。厳格化された運用管理ルールが施行されるまでアカウントを運用停止するとし、現在も停止している。

「CBCテレビ報道部公式ツイッターアカウント上で投稿された
不適切な書き込みについて」
ホームページ上でリリースを公開いたしました。https://t.co/vFd55VkExq

なお、当アカウントは厳格化された運用管理ルールが改めて施行されるまで
運用を停止いたします。

- CBCテレビ報道部公式 (@CBCNews5) 2019年7月16日

企業が運用するTwitterアカウントには、このようにさまざまなリスクがある。Twitterを運用する企業が抱えるリスクと対策について考えてみたい。

SNS担当者の負担はかなり大きい

アライドアーキテクツの2019年度「Twitterユーザー企業公式アカウント」利用実態調査(2019年6月)によると、55.7%のユーザーがTwitterの企業公式アカウントをフォロー。

さらに「企業公式アカウントをフォローしてから当てはまるもの」について聞いたところ、「よりそのブランドやお店・サービスに詳しくなった」(46.4%)、「より好きになった」(37.6%)、「より利用が増えた」(30.1%)など、企業公式アカウントはユーザーに対して好影響を与えることがわかっている。

好影響を期待して公式アカウントを作る企業は多いが、残念ながら更新を停止してしまう例は少なくない。運用をやめてしまった企業に聞いたところ、「ネタ切れのため続かなかった」「フォロワーも増えず、反応率が低くてモチベーションが下がってしまった」などの回答を得た。

「Twitterをやろうと言い出した担当者が転職(退職)してしまい、自然消滅した」という理由も聞く。

ニフティが提供するモバイル通信サービス「NifMo」の公式Twitterアカウントは、2019年5月に担当者退職により運用停止、アカウントを削除するとした。約5万人ものフォロワーを持つ人気アカウントだっただけにフォロワーから説明を求める声が殺到。その後、ユーザーの声に応えて削除はせず、サービスに関するお知らせのみツイートする運用に変更している。

会社の代表としてふさわしい言動が求められつつも、宣伝だけではリリースと変わらずフォロワーも増えない。そこでTwitterでは、人柄が感じられる投稿が望ましいとされるが、それだけに担当者自身の力にかなり依存することになり、アカウントの永続性は難しくなってしまうのだ。

さらに、企業公式アカウントはユーザーに一番近い存在なので、その時々でさまざまなことが求められるのも大変な点だ。自社製品・サービスの宣伝、カスタマーサポート、企業活動の広報など、その時々で柔軟に役割を果たしていく必要があり、運用の難易度は高くなりがちだ。

企業アカウントがいちばん恐れる「炎上」

企業アカウントが一番恐れるのは、やはり炎上ではないか。「炎上すると結局、逆効果になってしまうので、怖くて始められない」という意見もよく耳にする。

最近の炎上は、バイトによる不適切投稿で起きる通称「バイトテロ」が目立つが、実際は社員による失言・情報流出、CMや広告などに対する批判など、さまざまな理由で起きている。投稿自体が問題視されて炎上する事例もある。

2018年4月には、キリンビバレッジが「#午後ティー女子」として、「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」という4種類の女性をそれぞれの特徴を紹介する文言とともに紹介。

午後の紅茶を好きな女性を揶揄していると受け取られ、炎上してしまった。

この度、キリンビバレッジ公式アカウントにおける午後の紅茶の投稿について、お客様にご不快な思いをおかけし大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。
多くのお客様からのご意見を受け投稿を削除いたしました。今回いただいたご意見を真摯に受け止め、今後の活動に活かして参ります。

- キリンビバレッジ♪ (@Kirin_Company) 2018年5月1日

近年、女性性を決めつけたり、女性を揶揄するコンテンツの炎上事案は非常に多く、2019年にも後ろで足を引っ張り合う女性のイラストが批判を集めたLOFTのバレンタイン広告、パパのためのママの気持ち翻訳コンテンツが女性脳・男性脳を決めつけているとして批判を浴びたグリコの「おしえて!こぺ!」サイトなど、炎上が続いている。

2019年2月には、「皆さん恵方巻の注文を取ってきて下さい。お客様から頂けなければ自分の家の分を注文 お給料を頂いているからには1つでも注文すること」というコンビニチェーンからバイトへの強要と見られるホワイトボードの書き込みがユーザーの投稿から炎上するなど、内部からの情報流出によって炎上する事例も起きた。

炎上の火種はできるだけ早く見つけ、事実であれば素早く誠実に謝罪し、事実でなければ否定する必要がある。3〜4時間以内に炎上は拡大してしまい、ニュースになってしまうこともあるので、素早い対応が求められる。対応が遅くなるほど炎上につながりがちなので、注意が必要だ。

今回ご紹介した事例のように、SNSを使っていなくても炎上は起きてしまう。逆に、利用していればすぐに公式アカウントで謝罪ができるなど、釈明や火消しができるメリットもある。

誤爆で「好感度アップ」した例も

冒頭でご紹介したように、担当者が誤爆してしまう例は多い。例えば、人気漫画の映画公式アカウント「映画『銀魂2』公式」では、2018年8月に「ミッション:インポッシブルフォールアウト、<中略>トムクルの『観客の見たいものを見せる』精神が私にとってクリーンヒットで号泣」と担当者がプライベート投稿で誤爆。

しかしその後、謝罪に続いて「某秘密諜報機関の映画もとっても面白いと存じますが、この週末は銀魂2!どうぞ銀魂2を劇場で!」とフォローツイート。

【謝罪】さきほど当アカウントにて誤投稿が表示されてしまいましたことをお詫び申し上げます。某秘密諜報機関の映画もとっても面白いかと存じますが、この週末は銀魂2!どうぞ銀魂2を劇場で!お楽しみ下さいませ。

- 映画『銀魂2』公式 (@gintama_film) 2018年8月12日

誤爆がむしろ映画愛を感じさせる内容だったことが功を奏した。

一方、2017年2月には「講談社販売局」アカウントが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕を1カ月後に控えたタイミングで大谷翔平選手が欠場を決めたことについて、「栗山は本当に腹黒いヤツだ!」「大谷の怪我は三味線(仮病)なんだから、ニュースにとりあげる必要ないぞ!」と誤爆ツイート。「個人アカウントと当アカウントを間違えた」と謝罪した。こちらは誹謗と捉えられたため、炎上状態となってしまった。

誤爆や炎上は避けられない

このように、多かれ少なかれSNS担当者が個人アカウントで企業ツイートをしてしまったり、企業アカウントで個人ツイートしてしまう誤爆は多い。ある人気の企業公式アカウントセミナーでは、登壇していた6名中4名が「誤爆したことがある」「炎上もした」と回答していた。つまり、どれだけTwitterの扱いに慣れていても、誤爆や炎上などが起きる可能性があるのだ。

ある担当者は、「誤爆を避けるため、ツイートするときはアカウントごとにブラウザやアプリを分けることにした」という。そのほかに投稿する端末自体を分けるなどの工夫をしているところもあるそうだ。

トラブルをゼロにするのは難しい。しかし、普段からフォロワーといい人間関係を築いておけば、たった一度の失敗でいきなりマイナスとなることはない。また、失敗したときに素早く誠実に謝罪をすることも大切だろう。

企業がTwitterアカウントを運用することはリスクも多いが、得られるメリットも多い。ぜひ勇気を出して活用を検討してみてはいかがだろうか。