瀬々敬久監督が『楽園』というタイトルに込めた意味とは?/[c]2019「楽園」製作委員会

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「悪人」や「怒り」など、これまで多くの著作が映像化されている芥川賞作家、吉田修一の「犯罪小説集」を、綾野剛主演で映画化した『楽園』が10月18日(金)から公開される。このたび本作でメガホンをとった瀬々敬久監督のインタビュー映像を収めた特別動画が到着した。

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本作は、ある地方都市で起きた少女失踪事件をきっかけに交錯し合う人々の姿を描いた人間ドラマ。失踪した少女の友人だった紡は孤独な青年・豪士と出会い、互いの境遇に共感し合う。しかし12年後、再び同じ場所で事件が起こり事態は一変。一方で、事件現場にほど近い集落で暮らす善次郎は、ある行き違いから周辺住民といさかいになり、孤立を深めていくことに…。

到着した映像の中で瀬々監督は「この作品は“場所”の映画だと思ったので、タイトルも『楽園』と付けました」と、本作に込めた想いを語る。差別や村八分といった周囲の人々との軋轢によって犯罪に手を染めていく登場人物たち。「その中で先へ行こうとする光や希望、より良く生きたいというものが感じられた。それを杉咲花さん演じる紡に託したい。“楽園”を作ってほしいという想いを、彼女に託す気持ちで作り上げていった」と振り返る。

また本作は、先日行われた第24回釜山国際映画祭で「アジア映画の窓」部門に出品され、公式上映が行われた。その際に行われたQ&Aに登壇した瀬々監督は、改めて作品を観直した感想として「こんなに難しいものを作ったのかとビックリしました」と告白。そして「作ろうと思った動機は、外国人差別や村の中での差別。日本を含め、世界は自分の国を大切にしようとしていがみ合っている」と昨今の世界を取り巻く情勢に苦言を呈する。

その上で、「人はより良く生きたいと思って、“楽園”のようなものを求めて生きてきたのではないかと思いました。そうした人たちが実際に多く存在していて、それでもなにかの間違いで犯罪を起こしてしまうような状況がある。そう思って本作を作りました。みんなで“楽園”を作ろうという気持ちで観ていただけるとわかると思います」と、本作に注ぎ込んだ並々ならぬ情熱を明らかにした。

孤独や悲しみを抱えながらも、前を向いて必死で生きようとする人々の心情をリアルに描きだした本作。『64-ロクヨン-前編』(16)で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した瀬々監督と、綾野や杉咲、佐藤浩市ら実力派キャストの渾身の演技によって生み出された重厚な物語に、きっと誰もが心打たれることだろう。是非ともその衝撃の結末を、劇場で目撃してほしい。(Movie Walker・文/久保田 和馬)