敵地でのリーグ優勝決定シリーズ初戦に先発登板し好投したヤンキース・田中将大【写真:Getty Images】

写真拡大

強力打線は6回68球で料理「いろいろやってますよ。特にこのチーム相手には」

■ヤンキース 7-0 アストロズ(優勝決定シリーズ・日本時間13日・ヒューストン)

 ヤンキースの田中将大投手が12日(日本時間13日)、アストロズ相手のア・リーグ優勝決定シリーズ第1戦で、6回を1安打無失点1四球4奪三振の快投で、強力打線を68球で料理。10年ぶりのワールドシリーズ進出へ弾みをつける牽引役を担った右腕は、今ポストシーズン(PS)2勝目(通算5勝)を挙げた。

 試合後の会見で田中は穏やかな表情で勝因を振り返った。

「1球1球どういう投球をしていけばいいかをしっかりと考えた上で投げていけたのが大きかったと思います。あともう1つ、本当に今日の試合の中で大きかったのが味方の守備ですね。それが本当に大きな助けになってああいう結果になりましたね」

 5回、挙げていた2つの勝因が凝縮された場面が訪れた。先頭の4番ブレグマンを四球で歩かせると、次打者アルバレスには高めを狙った直球がゾーンに入り、右中間に運ばれる。追い付いた右翼ジャッジからのショートバウンド返球をルメイヒューが巧くすくい上げ、走者の帰塁を阻止。地元ファンの大歓声を嘆息へと変え、傾きかけた流れを絶った。

 5日の地区シリーズ同様、スライダーとスプリットは精度、制球とも冴え渡り、配球比率の低い直球を生かす要因にもなった。ただ、思考を凝らした配球の組み立てだけですんなり勝てる相手ではない。今季メジャー最多の107勝を誇るアストロズにはNASAから引き抜いたデータ収集とその解析に長けたスタッフらによる独自戦略を構築する部門があり、狙い球もデータから弾き出されている。田中と捕手のサンチェスは腐心の動きでその対抗策を講じた。

「いろいろとやってますよ。特にこのチーム相手には」

PS通算防御率1.32も「何よりも喜びというのは…」

 サンチェスが腰を浮かせ内角高めを要求した直後に、スライダー、スプリットを外角低めに投げる、“欺きの釣り球”に加え、その真意は明かさなかったが、「(日本時代から)あまりやりませんね」というブロックサインも駆使した。

 PSの通算防御率を歴代4位タイの1.32とし、ピンストライプの先輩マリアノ・リベラの0.70に次ぐヤンキース歴代2位へと躍進。しかし、大舞台で快投を演じる田中にとって、興味はそこに向かない。

「数字が残っているので、それを言われるのも分かるんですけど、何より喜びというのは、試合に勝った、自分の持っているものを出し切った、試合後のそういうところだけです」

“精密機械”の異名を取るマダックスが2002年の地区シリーズで記録した6回67球に肉迫する小気味いい投球に牽引されチームは敵地初戦に快勝。過去ア・リーグ優勝決定シリーズに駒を進めた49チームで第1戦に勝利したチームがワールドシリーズ進出を果たした確率は63%。

 田中の快投がチームに勢いをつけたのは確かだった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)