小学校の学級・学校の種類と違い

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 障害のある子どもを育てていると、小学校の入学先として「通常学級」「特別支援学級」「特別支援学校」のどれを選ぶべきか、迷う親御さんも多いのではないでしょうか。

通常学級にこだわる親もいるが…

 まず、小学校における学級の種類と違いです(表参照)。私の息子は知的障害のある自閉症児ですが、迷わず特別支援学校を選びました。その理由は3つあります。1つ目は、着替えや食事などの身辺自立がまだできていなかったので、専門知識のある教員が多い支援学校がベストだと考えたことです。

 2つ目は、重い知的障害があるのに保護者の希望で通常学級に入れ、特別支援教育を受けさせなかった結果、身に付いたであろうことも習得できていない子どもを見てきた経験があるためです。もちろん、通常学級でも(通常学級に在籍しながら個別の特別支援教育を受ける)「通級」を利用すれば個別の支援計画は立てられますが、教員数も少なく、どうしても手薄になるのです。

 そして、3つ目は、通常学級に通って(教員定数に上乗せして配置される)「加配」の先生がついてくれたとしても、特別支援教育の専門資格を持った人ではない場合があるためです。「加配」の先生は、仮に子どもが教室から出ていってしまったとき、子どもの安全のために「見守るだけ」になるケースがあると聞いたことがあったのです。

 秋には、就学時健康診断(就学時健診)があります。自治体側は実施する義務がありますが、保護者側は受診が呼びかけられるだけで、実は強制ではありません。

 ある時、知的に重い障害のある子どもの親御さんが「何が何でも通常学級に入学させたい。でも就学時健診に行ってしまうと、ふるいにかけられて支援級や支援学校に回されてしまう」と言い、受診させずにいました。進級先は親の意向が優先されるので、その子は「お母さんが一緒に付いている」という条件で通常学級に通うことになりました。

 また、障害の重い別の子どもは、小学校・中学校で通常学級に通っていました。私は不思議に思い、親御さんに「なぜ、通常学級に行かせているんですか?」と尋ねました。すると「特別支援だなんて、わが子が隔離されるようで嫌だから。健常の子からたくさんの刺激を受けたいから」と返ってきました。

 特別支援教育を「隔離」と考える人、特別な支援を受けられてありがたいと感じる人…どちらが正しいとはいえませんが、「親御さんにもいろいろな考え方があるんだな」と感じました。

特別支援学校の手厚い個別支援計画

 特別支援学校に入学後、私の息子の個別支援計画には「靴ひもを結ぶ」「時計を理解する」が盛り込まれました。担任は息子専用の教材を作り、毎日個別の時間で練習をさせてくれました。小学2年のとき、東京都の指導主事による巡回指導がありました。息子の様子を見た都から、「そろそろ支援級に転校させてもいいのではないか」との指示があり、3年生になるタイミングから、近所の公立小学校の支援級に転校することになりました。

「一度、支援学校や支援級に入れてしまったら、二度と通常学級には行けない」といううわさがありますが、そうではありません。「とりあえず通常学級に入学させて、いよいよついていけなくなったら、支援級に移る」選択をする親御さんもいますが、そうなると、子ども自身が「僕がうまくできないから支援級に行かされた」という気持ちに陥ったり、「自分だけできない」「いじめられた」などの経験をし、自尊感情が大きく低下した状態で支援級に移ることになったりする可能性もあります。

 子どもの心を考えると、望ましくない順番のように思えてなりません。

担任と密に情報共有を

 知的発達の遅れを伴わない場合、多くは通常学級に通うことになります。「通級」を利用する場合、個別の支援計画は立てられますが、子どものことを最も理解している親が担任とよくコミュニケーションを取り、少しでも子どもが過ごしやすい学校生活を送れるようにすることが大切だと思います。特に、次のような内容については、親と担任が密に共有することが求められます。

・成育歴
・「特別な配慮が必要な子」として保育園、幼稚園担任からの細かい申し送り
・主治医や療育施設からのアドバイスの共有(発達検査・心理検査の結果を渡す)
・子ども本人がどんなことが苦手で、どんなことが得意か
・子どもが理解しやすい指示の伝え方
・パニックを起こしたときの対処法
・絶対に避けてほしいこと(例:急に音楽を鳴らすのではなく、事前に予告し、小さな音から徐々にボリュームを上げるなど)
・どのようなタイプの子どもと合うのか、また苦手なのか

 東京都では、発達障害のある子どものクラスとして「特別支援教室」の整備がされていますが、まだ全国的なものではありません。どの学校にも設置されることを願っています。

 私は知的障害者移動支援のガイドヘルパーもしているのですが、ある青年を担当した際、彼が「○○特別支援学校はスペシャルハイスクールだ!」とうれしそうに言ってきました。自分の母校のことを誇らしく感じて言ったのでしょうか。すてきな言葉だと思いました。「通常学級の方が刺激を受けて伸びるのではないか」。漠然とそう考えるのではなく、わが子の状態と教員数、支援内容の情報を集めてベストな選択をしてほしいと願っています。