Photo by gettyimages

写真拡大

財務省に気をつかって…

9月11日に発足した第4次安倍晋三第2次改造内閣の基本方針に、「国土強靭化」という文言が躍った。

「まず何よりも、『閣僚全員が復興大臣である』との意識を共有し、熊本地震、東日本大震災からの復興、そして福島の再生を、更に加速する。全国各地で相次ぐ自然災害に対して、被災地の復旧・復興に全力を尽くす」という。

千葉県を襲った台風15号など、自然災害による被害は枚挙に暇がない。

Photo by gettyimages

'18年には「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が閣議決定され、国土交通省の'20年度概算要求は7兆円を超えた。だが、どうも国交省には財務省に対して及び腰なところがある。

まず、財務省は引き続き緊縮財政一本槍で、'25年度の国・地方を合わせたPB(基礎的財政収支)の黒字化目標を譲らない。「国土強靭化」の軸はインフラ整備になるが、PB黒字化の前でこうした事業は悪者扱いになる。

インフラ整備は建設国債を財源とすることが一般的だ。赤字国債とは異なり、ただ使われるものではなく、長期的視点では社会に有用な資産を残すものだ。ところが、バランスシートの上では、建設国債もただの「借金」のような扱いになる。あくまで財務省の理屈では、インフラ整備のための建設国債発行はできるだけ避けたいのだ。

とはいえ、これだけの災害が頻繁に起こっているのだから、国交省もより強気で臨むべきなのだが、どこか財務省に遠慮がちだ。その一例が、国債マイナス金利という絶好の環境をうまく生かしていないことだ。

マイナス金利下では、国は国債を発行すればするだけ儲かる理屈だ。国債調達資金を塩漬けしてもいいが、インフラ投資にまわすのが現状では最上ではないだろうか。

国交省内には、公共投資の採択基準がある。公共投資による社会便益が費用を上回っていることが条件だ。これは先進国ではどこでも採用されている基準で、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるものが採用という数式だ。

ただし、これを計算するうえで、現在の価値と将来予測される価値を調整するために、「社会的割引率」が用いられる。詳しい説明は省くが、この割引率(4%が一般的)を適用すると、よほど計画性のない公共事業でないかぎり、B/Cは1を超える。計算上はだいたいのインフラ整備が採用されるのだ。

向こう4〜5年は超低金利が続くと予想されている。それにもかかわらず、国交省は割引率を見直すことなく、一方で公共投資を「自主規制」し、財務省の緊縮財政に協力する格好になっている。国土強靭化に熱心な政治家や関係団体も、国交省役人が財務省の走狗となり、社会的に必要な投資を制限していることに気づかない。

防災のためのインフラ整備は待った無しだ。南海トラフ地震や首都直下型地震が、今後30年間で起こる確率は7割以上だという。これらに備えるうえで、マイナス金利環境は絶好のタイミングだ。

人命のかかった防災対策で財務省が緊縮を突き通す道理はなく、国交省も財務省に気を遣っている場合ではない。秋の臨時国会では両省がどのような態度を取るのか、注視する必要がある。

『週刊現代』2019年10月5日号より