東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(8)
サンフレッチェ広島・森島司@前編

 パスもドリブルも一級品で、誰もが認める才能を持ちながらくすぶっていた男が、プロ4年目の今シーズン覚醒した。サンフレッチェ広島における激戦区のポジションであるシャドーを射止め、10月5日に行なわれたJ1第28節・ヴィッセル神戸戦では2得点2アシストの大活躍。10月のブラジル遠征で満を持してU−22日本代表に復帰した森島司の素顔に迫る。

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MF森島司(もりしま・つかさ)1997年4月25日、三重県生まれ。四日市中央工高出身

―― 過去3シーズンでリーグ戦15試合0得点だったのに、今シーズンはすでに16試合に出場して初ゴールも決めています(※取材は9月26日)。昨シーズンまでと最も変わったところは?

森島司(以下:森島) 自信がついたのが大きいかなって思います。システムが4−4−2から3−6−1になって、シャドーを任せてもらえるようになってから、自分のよさを出せるようになって。ドリブルも通用しているし、(プレースキックの)キッカーも任せてもらって監督からの信頼も感じますし……。何が変わったかはわからないですけど、シャドーをやらせてもらっているのは大きいと思います。

―― 4−4−2だった昨シーズンはサイドハーフでプレーすることが多かったようですが、なかなか出番を得られなかった。

森島 サンフレに入ってからドリブルもできるようになったので、サイドでもやれると思っていたんですけど、4−4−2ならボランチをやりたかったんです。真ん中でプレーしたほうが自分のよさが出せると思っていて。だから、「4−4−2ならボランチだな」と勝手に決めつけていた。そういうのもダメだったのかなと思います。

―― 3−6−1に変更された今シーズンも、最初はウイングバック、つまりサイドでプレーしていたでしょう? 城福浩監督が言っていましたよ。「モリシが『シャドーをやりたい』と言ってきた」と。

森島 それ、記事にもなったんですけど、すごく大きく書かれちゃって(苦笑)。監督との会話のなかで「自分はシャドーのほうがやりやすいです」って伝えただけなんですよ。そうしたら監督が、「じゃあ、シャドーでの機会も増やす」と言ってくれて、それで実際にシャドーで試合に出ることができた。そこで自分としてもいい感じでやれて、その後も起用してもらっている、という感じです。

―― でも、城福監督は、「おっとりしていて、マイペースなところがあるモリシが、はっきり言ってきたのがうれしかった」と話していましたよ。

森島 いや、もうシンプルに、あの頃はワイドに限界を感じていました。ACLではワイドで起用されていたんですけど、(4月10日)大邱戦でサブどころかベンチからも外されて……。結果、ケガ人が出たからベンチには入れたんですけど、ワイドでベンチにも入れないんだったらシャドーで勝負したいなと。

―― やらせてもらえば、結果を残せる自信はあった?

森島 ありましたね。言ったからには、やらないといけないとも思ったし。だから、しっかり言えたのはよかったかな。

―― 実際、今シーズンのリーグ戦初スタメンとなった5月26日のJ1第13節・浦和レッズ戦ではシャドーのポジションで起用され、1ゴール2アシストと結果を残しました。「これでダメだったら、あとはない」といったプレッシャーはなかった?

森島 いや、ピッチに入ったら、もう何も考えてないですね。プレー中はプレッシャーも感じてない。戦術のこととか、次のプレーのことしか考えてないので。

 あの頃はシュート練習をよくやっていたので、ペナルティエリア近くになったら振り抜こうっていうのは意識していました。それまではゴール前まで入っても、選択肢が少ないから(どのプレーがいいのか選択で)詰まることが多くて……。でも、今はシュートという選択肢ができたので、プレーの幅が広がったなって感じています。

―― 先ほど「ドリブルもできるようになった」と。たしかに四日市中央高時代はボランチで、ボールをさばくイメージがあった。ドリブルはいつ頃から武器に?

森島 高校時代とは、本当に変わりましたね。自分でもドリブルができる選手とは思ってなかった(苦笑)。2年目のキャンプの時(森保一監督時代の2017年)、ボランチからシャドーにコンバートされて、そこで「意外とドリブルもできるんやな」「意外とスピードもあるんや」って気づいて。その年の開幕戦にもスタメンで出させてもらいました。



―― アルビレックス新潟戦ですね。ドリブルで5人くらい抜いて。

森島 そうです。抜きました(笑)。あれ以降、ちょっとずつ自信がついて。シャドーをやらせてもらえば、1枚は剥がせるっていう自信があります。それもあって、3−6−1に戻った今シーズンはシャドーで勝負したいなって思いました。

―― とはいえ、シャドーのポジションは、川辺駿選手、野津田岳人選手、柴崎晃誠選手、東俊希選手、渡大生選手らがいる激戦区。そういったライバルたちから見て盗んでいるものもあるのですか?

森島 本当に激戦区なんですよね。キャンプの最初の頃はシャドーをやっていたんですけど、周りを見て「エグいな」って思いました(笑)。ただ、見て学ぶのも大事ですけど、今は逆に、他の人が持ってないものを出そうと。裏への動きや突破、推進力を出したいと思っています。そういうプレーはチームに足りない部分だと思っているので、意識していますね。

―― そういう話を聞くと、ワイドでも十分、推進力を出せそうな気がします。

森島 今はワイドで起用されても、やれると思っています。自信を持ってプレーできるんじゃないかなって。ただ、当時はドリブルもうまく出せなかったし、守備もできないし、「ワイドでいいプレーをしても、リーグ戦で起用してもらえないんじゃないか」とか、モヤモヤしていて……。得意じゃないポジションにトライして出られないのは、キツいなっていう思いがありました。

―― 浦和戦以降はポジションを掴みましたが、コンスタントに試合に出られるようになって、何が変わりました?

森島 やっぱり、週末の試合に向けて調整していくのは、やりやすいですね。それまでは出られるのかどうか、ベンチに入れるのかどうかもわからなかったので。

 ただ、最近は対策されるようになってきたから、難しさも感じます。僕とカシくん(柏好文)の関係を警戒されて、(広島の)左サイドに人数をかけて守ってくる。だから今は、対策されていても仕掛けていく部分と、対策の裏をかく部分のバランスが難しいなと思いながらやっています。

―― 森島選手は東京五輪世代ですが、U−22日本代表でもやはりシャドーで勝負したい?

森島 シャドーの選手、たくさんいますよね。

―― 三好康児選手(アントワープ)、堂安律選手(PSV)、安部裕葵選手(バルセロナB)、久保建英戦選手(マジョルカ)……。

森島 めっちゃいますね。みんな、いい選手じゃないですか(笑)。

―― でも、俺も負けてないぞ、と?

森島 どうだろう。負けてないとかは思わないです。彼らのほうがうまいんじゃないですか。でも、誰を起用するかは監督の好みも大きいと思うし。そもそも、代表って難しいんですよね。

―― どうしてですか?

森島 いつもと感覚が違うから、あまりいいプレーができないんですよ。それに、海外遠征だと連戦になることが多いじゃないですか。慣れてないからキツくて。

 去年のトゥーロン国際大会も、1試合目はよかったけど、2試合目は動けなくて45分で交代になって……。その頃はサンフレでも試合に出てなかったので、キツかったですね。海外遠征は苦手です。でも、オリンピックにはちょっと出てみたいので、がんばらないと。

―― ちょっと、ですか(笑)。やはり世界の舞台ですごい選手たちと対戦してみたい?

森島 それもありますけど、周りからも「がんばって」って言われるので、がんばらないとなって(笑)。そんなに期待してもらって、「いやあ、別に」とは言えないので、がんばってメンバーに入りたいなって思っています。

(後編に続く)


【profile】
森島司(もりしま・つかさ)
1997年4月25日生まれ、三重県鈴鹿市出身。2016年、四日市中央工業高校からサンフレッチェ広島に入団する。2017年、開幕戦でJリーグ初先発を果たし、同年5月にはプロ初ゴールを記録。2017年にはU−20ワールドカップメンバーに選出された。ポジション=MF。175cm、66kg。