歴史的な瞬間を目の当たりにし、敵将の本田もこの神対応。スタジアム周辺の開放的な雰囲気が伝わってくる一枚だ(写真はツイッターより)。

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 イランの女性サッカーファンにとって、待ちに待った瞬間が訪れた。

 日本がモンゴルを6−0で下した同じ日、イランの首都テヘランではワールドカップ・2次予選のカンボジア戦が開催された。ペルシャの雄は元日本代表MF本田圭佑が実質的な監督を務めるアウェーチームを終始圧倒し、14−0という途轍もない大差で葬り去ったのだ。

 そのカンボジア戦は、別の意味でも歴史的なメモリアルゲームとなった。1979年のイラン革命以降、ずっと禁じられてきたイラン人女性のスポーツ・ライブ観戦が、事実上解禁となったのである。初回ということもあって安全面を考慮し、まずは3500名が限定入場を許された。先週末に販売されたチケットはわずか数分で売り切れるという盛況ぶりで、会場にはたくさんの少女も足を運んだという。

 悲劇が起きたのは今年の9月だった。国内リーグの試合を男装して観戦し、逮捕・拘束されていたサハル・ホダヤリさんが、裁判が休廷となったタイミングでガソリンを頭からかぶって、みずから命を絶ったのだ。不当な逮捕への抗議の自殺と見られている。その3か月前の6月には、イラン対シリアの親善試合で、スタジアムに入場しようとした数十名の女性ファンが一斉検挙されるという事件もあった。
 こうした事態に遺憾の意を示し、イラン当局やイラン・サッカー協会に改善要求を突き付けてきたのが、ほかならぬFIFA(国際サッカー連盟)である。

 今回の解禁を受けて、ジャンニ・インファンティーノ会長が公式サイトで異例の声明を発表。「この40年間で初めて、イランの女性たちがスタジアムへの入場を果たした。きわめてポジティブなステップであり、イランの女性たちがどれだけこの日を待ちわびていたことか。情熱、歓喜、興奮が入り乱れた、歴史的な空間となっただろう」と熱く語り、スタジアムで声援を送った女性ファンに対しては「自分たちの権利のために立ち上がり、勇気をもって駆け付けたあなたたちに最大限の敬意を払いたい」と綴った。

 今後FIFAはイラン当局に向けて、制限なしの全面解禁を働きかけていくという。まずは人数制限を取っ払い、男女が同じスタンドで肩を並べて観戦できるように環境を整備できるか。世界の関心と注目は、さらに高まりをみせるだろう。

 なおこの日の試合前、敵将である本田がスタジアムの外でイランの女性ファンたちと“セルフィー”に収まる姿が目撃された。とあるファンがツイッターに投稿した画像は欧米のメディアを通して世界中に発信され、反響が広がっている。

 本田は試合前日、自身のインスタグラムで「女性と子どもちたちはいつでも観たいときにフットボールを観られるようにすべき」と訴え、イランの女性ファンに対して「僕はあなたたちが明日スタジアムを訪れることをリスペクトし、勇気を称えたい」と呼びかけていた。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部