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●久々に大きく変わったHERO8 Black

アクションカメラの雄「GoPro」の最新モデル「GoPro HERO8 Black」が登場しました。これまでの機種の弱点を改良し、さらに新たな展開を進める機能を追加しています。今回、GoPro本社が企画したツアーに参加して、大きく進化した動画の手ブレ補正機能を中心に新GoProの実力を体感しました。

GoProは、高い防水性能や耐衝撃性能を備えつつ、簡単な操作で撮影できる特徴を持つアクションカメラ(アクションカム)です。2004年に最初のモデルを発表してから15年、機能を改良した新製品を精力的に投入することで、アクションカム市場を拡大してきました。

もともとサーファーだった創業者のニック・ウッドマン氏が生み出したGoProは、サーフィン中の映像を撮影できるタフでコンパクト、そして超広角の映像が撮影できるカメラとして、アクティビティでの撮影はもとより、放送局など映像のプロの現場でも使われています。

現在では、YouTuberやインスタグラマーなどにも愛用されており、単なる動画の撮影だけではなく、作品作りにも使われています。結果として、全世界でこれまでに3500万台以上を売り上げたといいます。

そして、今回登場するのがGoPro HERO 8シリーズです。最上位モデルのGoPro HERO 8 Blackは、新たなデザインによってより使い勝手のいいモデルに仕上がっています。

○フレームが不要になり、より使いやすく

HERO8 Black最大の特徴は、何といっても専用フレームが不要になったことです。GoProは当初、タフ性能を実現するために専用ハウジング(防水ケース)に入れる必要がありましたが、HERO 5からはハウジングが不要になり、そして今回、ついにフレームが不要になったのです。

これまでフレームが必要だったのは、専用マウントを利用するためです。底面にあるマウント部は、さまざまな固定用のアクセサリーが多くのメーカーから販売されており、GoProの大きなメリットの一つとなっていました。それを装着するためのフレームでしたが、純正フレームを装着しているとバッテリーやUSB端子にアクセスできず、フレームをいちいち取り外すなどの手間がありました。また、本体とフレームだけで利用しようとしても、マウント部があるために自立しないという問題もありました。

今回、このマウント部を折りたたみ式の「マウントフィンガー」に一新し、本体底面に内蔵しました。普段、折りたたんでおけば底面がフラットになり、必要なときだけ引き出してマウントを装着できます。

一見するときゃしゃな見た目で強度が心配になりますが、同社によれば「とても強く、各種テストでも破損しなかった」ということです。

さらに、従来は底面からアクセスしていたバッテリーも、側面から出し入れするようになりました。バッテリー室にはUSB端子もあり、1カ所の蓋を開けるだけでバッテリー交換とUSB経由の充電が可能です。側面にあるため、マウントを使用していてもアクセスできます。

これはかなりの使い勝手の向上で、「充電しながら撮影する」ことが容易になっています。もちろん、開けっぱなしだと防水性は失われますが、フタを閉めれば防水・耐衝撃性能はそのままです。逆に言えば、簡単に開け閉めできるようになったことで、特に水辺で使うときのフタの閉め忘れや締め損ねには注意が必要です。

前モデルに比べて、外観のデザインに大きな変化はありませんが、レンズ部分に違いがあります。レンズ部の出っ張りがやや低くなり、流線形のデザインになりました。レンズの径も小さくなっているように見えます。また、前面の保護ガラスは2倍の強度になったそう。さらに、前面にもマイクが搭載されました。これは、特に風の影響を防ぐために重要だといいます。

内部的には、チップなどのハードウエアはこれまでと変わりませんが、アルゴリズムの最適化などによって画質の向上が図られたといいます。基本的には、より使い勝手を向上させたモデルといえそうです。

●動画はさらに手ブレ知らずに!

機能的な部分では大きな進化があります。一つ目が、電子式手ブレ補正の「HyperSmooth 2.0」。内容がさらに強化され、すべてのフレームレートと解像度で利用可能になりました。つまり、4K解像度でも強力な手ブレ補正が使えるようになったことで、今まで以上にブレのない高画質の映像が撮影できます。

これに加えて、新たに「ブースト」が追加されました。これは、手ブレ補正のために従来以上に周辺画角を使って補正を行うモードで、実際に試してみるとかなり強力だと感じました。「もはやジンバルは不要」と同社が言い切るとおり、手持ちでもほとんどブレのない映像が撮影できて驚かされるほどです。

人が歩くような上下の大きな揺れはある程度の補正にとどまるものの、細かい手ブレは完全に消し去ってくれます。電動スクーターや自転車といった激しい揺れはほとんど感じなくなるので、特に激しいアクティビティで有効なモードといえます。

ブーストは、35mm判換算で16mm相当となる超広角の「SuperView」では選択できません。「広角」よりも狭い画角の時に選択できるようになっており、HyperSmooth 2.0のようにすべての画角で利用できるわけではありません。ただ、激しい動きを伴う場合は、ぜひ選んでおきたい設定といえます。

画角設定では「デジタルレンズ」機能を備えており、スムーズな画角の変更が可能です。用意されているのはSuperView、広角、リニア、挟角の4種類。最も広角でGoPro特有のダイナミックな映像が撮れるSuperViewは迫力のある撮影が可能ですが、補正が働かないためか超広角特有のゆがみが顕著に出るほか、ブーストが使えないというデメリットがあります。

広角は「伝統的なGoProの画角」と表現され、ゆがみが補正されながらも広角のダイナミックな映像が得られます。デジタルズームを使うことで、16〜34mm相当の画角で撮影可能。焦点距離としては、SuperViewと同じ16mm相当ですが、補正が入るため、画角はSuperViewに比べてやや狭くなります。

リニアは19〜39mm相当。魚眼効果がないため、広角レンズとして幅広い範囲を撮影できます。ゆがみの補正もあるため、自然な撮影が可能。広角とリニアは、それぞれ2倍までのデジタルズームにも対応しています。

挟角は27mm。他と比べると画角は狭く感じますが、動画としても一般的に見れば比較的広い画角です。

解像度は、16:9のアスペクト比で4K60fpsまで、4:3でも4K30fpsまで対応しています。2.7Kでは16:9が120fps、4:3が60fps、1440pでは120fps、そしてフルHDでは240fpsまでのハイスピード動画も可能です。

タイムラプス機能では、速度を決めるだけで手軽に撮影できたTimeWarp機能が進化して「TimeWarp 2.0」になりました。

TimeWarpは、もともとカメラを固定して長時間連続撮影した画像を短時間の動画に凝縮するタイムラプスを、移動しながらでも撮影できるようにした機能です。HyperSmoothと併用することで、移動しながらでも安定感のあるタイムラプス動画を記録できるうえ、30倍速までのスピードを選ぶだけで撮影できる手軽さが売りでした。

今回のTimeWarp 2.0では速度を選ぶ必要すらなくなり、「自動」を選択しておくとシーンに応じた速度で撮影してくれるようになりました。

面白いのは、撮影中に動きの遅いシーンがあったらゆっくり(等倍)になるといった具合に、シーンを認識して自動で調整してくれる点です。どういった場合に遅くなるかは試用期間中は分かりませんでしたが、映像にメリハリがつくので好ましいと感じます。

これを任意のタイミングで実現するのが「Real Time」機能です。Time Warp撮影中、画面上にボタンが表示され、これを押すとその間は等倍の速度で記録されるため、動きが遅くなったような映像が撮影できます。

○アプリで強力な動画の水平補正も可能

使い勝手を高める機能としては、プリセット機能があります。HERO7までは、画面のタッチで一つずつ撮影設定を変更してきましたが、HERO8 Blackではあらかじめ設定したプリセットで設定を一括変更できます。

「標準」は1080・60fps、広角レンズ、HyperSmoothは高(10%クロップ)、といった設定です。ProTuneの設定もそれぞれ設定されています。「アクティビティ」になると、2.7K・60fps、SuperViewレンズ、HyperSmoothオンなどの設定になります。これを一つずつ切り替えるのは面倒ですが、プリセットならワンタッチで切り替えられます。

ビデオモードだけでなく、写真モードやタイムラプスモードでも設定できるので、シーンごとにいろいろ切り替えたい場合はぜひ活用したいところです。

GoProアプリでは、新機能「水平ロック」が便利だと感じました。三脚などに固定して動画を撮影した際、取り付け時に傾いてしまっていた場合に、本体のセンサーがカメラの角度を記録しているため、それにもとづいて自動で水平に傾きを補正してくれる、というものです。簡単に角度を修正できるので使い勝手が良くなります。

ほかにも、静止画のHDR機能が強化され、動きのある被写体でもHDR撮影ができるようになりました。また、前面マイクの搭載で音声が強化されたり、シャッターを切る前後1.5秒の90コマを記録しておいてベストショットをあとから選べる「LiveBurst」など、さまざまな機能が強化されています。

今回は試用できませんでしたが、拡張機能の「モジュラー」(Mods)も面白いオプションです。HERO8で初採用となるモジュラーは、ガンショットマイクを搭載した「メディアモジュラー」、最高200ルーメンのLEDを内蔵する「ライトモジュラー」、自撮りにも使える「ディスプレイモジュラー」の3種類を用意。「すべてを内蔵するより、必要な人が機能を選べる」というポリシーで開発されたとのことで、よりGoProの撮影範囲を広げてくれそうです。

ちなみに、このモジュラーの仕様は公開されるので、サードパーティがさまざまなモジュラーを開発できます。従来のマウントのように、さまざまなモジュラーが出てくるのが楽しみなところです。

○使い勝手がよく完成度が高まったHERO8 Black

GoPro HERO8 Blackは、使い勝手を良くして完成度を高めたGoPro HEROシリーズの完成形といってもいい製品に仕上がっています。暗所撮影は従来通りあまり気にしていないようですし、他社のような自撮り用ディスプレイを内蔵することはありませんでしたが、考えられる弱点を解消してきて、さらに使い勝手が高まりました。

個人的には、さらに強力になった手ブレ補正、マイクの強化、マウントに三脚などを使わなくても充電しながら撮影できるようになった点がメリットに感じています。GoPro自身も「フレームのあるカメラには戻れないでしょう」と語っていましたが、確かにその通りだと感じました。広角すぎると感じた場合も、デジタルレンズで画角を狭められるというのは、アクティブシーンの撮影ではない通常の撮影をしたい場合にも便利だと感じました。