天気別の業界・分野数(上)と改善・悪化別の業界・分野数(下)

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 2019年度上半期の国内景気は、総じて悪化傾向が鮮明となっている。帝国データバンクが調査した国内の景気指標(景気DI)はこれまでの回復基調から一転し、「足踏み」傾向が続いている。今後も製造業を中心に国内景気は弱含むとみられ、各業界では先行きに警戒感を強めている。

 帝国データバンクでは、100業界197分野の業界動向について、最新の2019年度における業界天気を予想し、展望とポイントをまとめた。

■TDB業界天気図
企業業績や各種統計データ、業界ニュースなどから、各業界・分野の展望を7段階の天気図を用いて帝国データバンクが総合的に判断した。

「曇り」が最多の72分野、回復局面から足踏み鮮明

 2019年度の業界展望は、「晴天」と予想される分野が84分野(前年度比3分野減)、「雨天」と予想される分野が41分野(増減なし)。「晴天」は2016年度以来3年ぶりに減少に転じたほか、「曇り」は5%から8%に消費税率が引き上げられた2014年度(79分野)以来5年ぶりに増加するなど、全体の業況は足踏み局面が続く見通し。

 この結果、2019年度における天気の改善・悪化状況は、「改善」が9分野(前年度比18分野減)、「悪化」が14分野(同4分野減)となり、「悪化」が「改善」を3年ぶりに上回る見通し。また、「改善」分野は、集計比較が可能な1999年度以降で最少となる。

 業界天気が改善する分野では、特需の発生や業界環境の改善などが見込まれる。『ソフトウェア開発』は、改元や消費税増税、Fintechなどソフト開発の特需が続く。ファストフードや居酒屋・ビアホールなど『外食』は引き続きコスト面が課題となるが、業績の落ち込み幅は緩やかで、業態変換などによる業績上振れも見込まれる。

 一方、悪化する分野では、特に米中貿易摩擦の影響が懸念される。『総合商社』は、資源高の落ち着きのほか米中貿易摩擦の影響から収益面で弱含みとなる。『工作機械』や『半導体・電子部品』も、中国経済の減速や米中貿易摩擦による影響を織り込む。また、『家電』では、エアコン販売の反動減や消費税増税後の需要減少が不安要素となるもよう。

業況改善が見込まれる主な業界・分野

(ソフトウェア開発)
2018年度:「薄日」→19年度天気予想:「晴れ」

底堅いIT投資、改元や消費税増税にともなうシステム改変特需が追い風。今後もFintech需要のほか、RPAなど業務効率化需要、5Gなど次世代技術開発といった旺盛なIT投資は続くと見られる。

(通信<インターネットサービス>)
2018年度:「曇り」→19年度天気予想:「薄日」

動画・音楽配信サービスやオンラインゲーム市場の拡大により、固定系ブロードバンドに追い風。ネットインフラ構築やクラウドサービス、セキュリティ対策などのネット接続サービス拡大に期待。

(旅客輸送<鉄道>)
2018年度:「曇り」→19年度天気予想:「薄日」

豪華列車の運行や観光資源を生かした旅行商品の提供、有料着席サービスの導入が進展、各社で増収傾向となる見通し。首都圏鉄道網では、相鉄・JR直通線の開業や、2次交通統合型サービス「MaaS」の実証実験が進むなど、利便性向上などに向けた投資も活発。

(眼鏡)
2018年度:「小雨」→19年度天気予想:「曇り」

花粉症対策や眼精疲労対策眼鏡など新たな分野での需要喚起を進め、潜在顧客発掘に向けた商品開発や店舗展開を進める。また、市場規模の大きいシニア層の取り込みを進め、市場は堅調にする見通し。

(外食<居酒屋チェーン・ビアレストラン>)
2018年度:「雷雨」→19年度天気予想:「雨」

外食産業では好調な季節メニューの導入などによる客単価増加がみられるが、居酒屋業態では依然客単価の低迷が続く。積極的な出店で業容拡大を図るものの、アルバイト時給の上昇や原材料の高騰などが利益を圧迫しており、損益面では厳しい局面が続くとみられる。

業況悪化が見込まれる主な業界・分野

(商社)
2018年度:「晴れ」→19年度天気予想:「薄日」

資源高の一服感や米中貿易摩擦の激化などの海外リスク、国内景気の減速見込みなど不安要素がやや目立つ。そのため、各社とも業績は横ばいや微増の予想にとどめる。

(工作機械)
2018年度:「薄日」→19年度天気予想:「曇り」

米中貿易摩擦の先行き不透明感から、製造業を中心に設備投資に慎重となる動きもあり、受注の停滞が続く見通し。他方で、中国国内の減税策などによる中国経済の動向が注目要素となる。

(半導体・電子部品)
2018年度:「薄日」→19年度天気予想:「曇り」

自動車関連市場や5G導入に向けたインフラ市場の立ち上がりなど、底堅い受注環境は続くと見られる。ただ、米中貿易摩擦の動向やスマートフォン関連需要の停滞など、流動的な業況環境が続く。

(家電)
2018年度:「薄日」→19年度天気予想:「曇り」

白物家電は、ルームエアコンが長梅雨の影響で前年度から反動減予想。黒物家電は東京五輪など大型スポーツ祭典を前に映像機器需要拡大が見込まれる。ただし、消費税増税後の個人消費鈍化が懸念材料。

(証券)
2018年度:「小雨」→19年度天気予想:「雨」

国内株式市場は米中貿易摩擦の激化やEU離脱交渉の行方など海外リスクなどで不透明な市場環境を予想し減収減益見込み。販売チャネルの多様化や店舗の統廃合など、伝統的な証券ビジネスからの転換が急務に。

国内景気に悪化局面の兆しが見られ、幅広い業界・分野で業況回復ペースに掛かるブレーキは強まる

 今後は、国内では消費税増税以降の消費への影響を不安視するほか、安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える、いわゆる「ホワイト国」からの除外など、日韓関係の悪化による影響が懸念される。海外では、米中貿易摩擦をはじめとした貿易問題や、主要先進国の景況改善に黄信号が灯るなど、先行き不透明感が高まっていることも各業界の業況改善を下押しする要因と考えられる。

 現時点では、多くの業界で業況が足踏み状態となる「曇り」基調を予想する。しかし、国内景気に悪化局面の兆しが見られるなか、製造から小売・サービスなど幅広い業界・分野で業況回復ペースに掛かるブレーキは強まると見込まれ、各業界で業況が18年度よりさらに悪化する可能性が高い。