今や8人に1人が「婚活サービス」で結婚する背景
婚活サービスを利用する20代・30代が増えている背景とは?(写真:Kazpon/PIXTA)
「婚活サービス(結婚相談所、ネット系婚活サービス、婚活パーティー・イベント)を通じてお二人は出会い、今日の日を迎えました」――。最近、こんななれ初めの紹介を結婚式でよく耳にするようになった。
時代ごとに変化する結婚相手との「出会い方」
少し前までは「知人の紹介」と言い換えるなど、できるだけ隠そうとしていた節もあったが、今や、堂々と人生の節目にて表明する。それは日本における結婚相手との「出会い方」の変化や、20代・30代の人たちの価値観の変化を反映した結果だろう。
かつては、結婚相手との「出会い」は家と家の結びつきを強く意識し、親やお節介な親戚や隣人をはじめとした周囲がお相手に引き合わせる「お見合い結婚」が主流で、初対面の日に結納をした、なんてこともあったそうだ。
その後は、自由恋愛の延長に結婚がある「恋愛結婚」の価値観が広がっていった。1965年ごろに「お見合い結婚」と「恋愛結婚」の割合が逆転し、そこから約50年たった今では結婚する人の約9割が恋愛結婚となった[国立社会保障・人口問題研究所(社人研)「第15回出生動向基本調査」]。とくに1980年代以降は、男女雇用機会均等法による女性の社会進出やバブル景気を背景に、恋愛観や結婚観も変化していった。
お見合い結婚と恋愛結婚が逆転してからは、社内恋愛などのほかに、出会いの主戦場は、「合コン」に代表されるように男女が自ら積極的に出会う場へと変わっていった。だが、今、約50年間の自由恋愛の歴史に変化が訪れているのだ。
2018年に結婚した人のうち8人に1人が婚活サービスを通して結婚。恋愛・結婚意向のある20〜40代の独身者の4人に1人が婚活サービスの利用経験があり、どちらも2000年以降で過去最高だった。さらに、婚活サービスを通じて結婚した人のうち最も比率が高かったのはネット系婚活となっており、結婚相談所とパーティー・イベントに約2〜3倍の差をつけていた。
また、2018年に結婚した人の中で、合コンを利用したことがある人の割合は19.0%だったのに対し、婚活サービスを利用した人の割合は32.3%と、大きな差がついた(リクルートブライダル総研「婚活実態調査2019」)。
このデータは、世間のニーズが合コンのように結婚を必ずしも目的としていない場での出会いから、結婚希望を前面に出せる婚活サービスのような出会いの場に移っていることを表していると言っても過言ではないだろう。恋愛・結婚をお膳立てされた婚活サービスを通じて出会い、そこから恋愛結婚を経て結婚することがスタンダードな時代になったのだ。
ここからは、そんな結婚にまつわる出会い方の変遷から、その社会的背景について数字を基に見ていきたい。
若者はどのような価値観を持っているのか
20代・30代の若者は、そもそも恋愛や結婚に対してどのような価値観を持っているのだろうか?
20〜40代の未婚者のうち約7割は恋人がおらず、さらに、20代男性の約4割は交際経験が1度もないという調査結果がある(リクルートブライダル総研「恋愛・結婚調査2017」)。
また、社人研によると、50歳時の未婚率は1985年時点では、男性2.6%、女性4.5%だったが、2015年時点は男性23.4%、女性14.1%となり、30年間で未婚化が進行していることがわかる。結婚への認識が「しなければいけないこと」から「したいからすること」へ変わっているという見方もできる。
これら、交際者の有無・交際経験・未婚率の3点から考えると、恋愛至上主義ではない彼らは、そもそも結婚をする・しないを選択しており、「社会的規範」としての結婚という相対性から解き放たれた、「個人的納得」という絶対的な評価軸と価値観を持っているのではないだろうか。
結婚は、「必ずするもの」から「選択するもの」という価値観の変化がある中で、結婚意欲についてみると、20代・30代の未婚者において結婚する意思をもつ未婚者は9割弱いる(社人研「第15回出生動向基本調査」)。
一方で、「恋愛・婚活・結婚調査2017」によると、「結婚できない」と20〜40代未婚者の約3人に1人が考えており、その理由の中で最も大きいのは、「出会いがない」ことだった。物事の便利化が進む世の中であっても、結婚相手と出会うことの難しさがみえてくる。
婚活サービスが盛り上がってきた背景
そんな状況の中、前述のとおり、新たな出会いの機会として急激に伸長しているのがいわゆる「婚活サービス」だ。事実、2018年に結婚した人の中で、8人に1人が婚活サービスを通じて結婚に至っており、これは婚活サービスが、結婚に向けた新たな出会いの機会として確立してきたことを表している。この流れの背景には、企業の動きといわゆるミレニアル世代を中心とした若年層の価値観が大きく影響している。
企業の動きは、“出会い系”と呼ばれていたサービスとの差別化が代表的だ。マッチングサービスが出始めた頃は、これらのサービスに対して消費者側の不安や不満ポイントして挙げられていたのが『H(恥ずかしい)・A(怪しい)・T(高い)』(以下、HAT)の3点だった。
しかし婚活サービスの市場において、2013年ごろから上場企業などの大企業が参入。加えて「地域少子化対策重点推進交付金」とし、婚活に対し政府の予算がつくようになった。行政の介入により怪しさや高いといった不安や不満が減少し、徐々に利用者が増えていった。また、周囲に利用者がいれば恥ずかしいといった要素も払拭されていったという好循環が回っていった。
市場が変わる中、利用者のボリュームゾーンとなる若年層の価値観も大きく影響している。彼らは、バブル崩壊、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災といった非常に不安定で変化の多い時代を生きてきたため、身の丈や調和を大切にする、という共通の価値観があるようだ。
またデジタル化が急速に進むことでスマホの普及率も高まり、物事の便利化が進んできた時代でもあり、合理性や効率性を重視する志向が広がっているのだろう。
婚活サービスはそもそも出会う前から「結婚に対する距離感」が明確であり、HATが解消されつつある中で、合理性や効率性重視といった価値観を持つ若年層にとって身近で簡単に始められるサービスになったことは、とても自然な流れだ。
また、彼らはSNSが当たり前の中で青春時代を過ごしてきたため、オンラインでの自己開示ハードルが非常に低い。それも後押しして、ネット系婚活サービスの普及も目覚ましい。大手企業が参入しだした2013年には、結婚した人の2.0%がネット系婚活での出会いを通じて結婚に至っていたが、2018年にはなんと7.4%になった。結婚を取り巻く環境が大きく変化していることが表れている(「婚活実態調査2019」)。
婚活サービスが変える「結婚相手との出会い方」
利用者の「出会い方」に対する価値観の変化と企業努力が相まって、今後も、婚活サービスを通じて結婚する人は拡大していくだろう。実際に、恋愛や結婚意欲のある20〜40代独身者の4人に1人が婚活サービスの利用経験があり、性年代別でみてもどの層も大きく利用割合を伸ばしている。
さらに、サービスごとでみると、ネット系婚活の利用が大きく伸長しているが、結婚相談所や婚活パーティーも一定割合の利用があり、さまざまなサービスを併用しながら自身の納得したカタチで相手との出会いの機会を広げている。また、周囲に婚活サービス利用者がいれば3.8倍利用経験割合が増えるといったデータもあり、今後、急激に利用が拡散し、出会い方としてスタンダード化する可能性も考えられる。
さらに、婚活のイメージをみると「婚活サービスでみつけた恋人とは、趣味や関心事が合いそう」といった項目について年代が若い層のほうが高く、婚活サービスをポジティブに捉えていることもわかった。このことからも、今後の利用者の増加につながることが想定できる。このように今後利用者が増加する可能性が高まり、結果、マッチング総数が増加することで、一般化が進むだろう。
今後、この流れの勢いのまま、かつて「お見合い結婚」から「恋愛結婚」に常識がシフトしたように、婚活サービスを通じた「自立的出会い」が主流になっていくのかもしれない。