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 日々クレーム対応に追われているのは、コールセンターや苦情処理機関だけではない。飲食店もその対象になる。中には、常軌を逸したようなクレームを付け、「お詫びの品を要求する」悪質な人間も存在している。

 そんな飲食店の悪質クレーマーで世間を驚かせた事件が、2015年に発生している。犯行を重ねたのは、兵庫県に住む当時45歳の女。ケーキ屋を狙い、実際に買っていないのにもかかわらず、「買ったケーキに髪の毛が入っていた」と電話をかけ、謝罪の意思を示したケーキ屋から返金やタダでケーキなどをゲットしていた。

 逮捕された女の携帯電話の履歴は、42都道府県のケーキ屋でびっしり。しかも、必ず電話番号案内「104」に発信しており、その数は1日200件にも及んでいた。女の自宅には、謝罪に訪れる店舗関係者が列を作るほどで、見かねた近所の男性が訪れた関係者を説得し、通報したため、逮捕となった。

 取り調べで、女は「500回くらい成功した」と供述。そして、犯行動機について、「甘いものが食べたかった」と話す。また、犯行を重ねた理由については、一度クレームを付けたところ、全面的に信用したケーキ屋が謝罪に訪れた上、商品を持参してきたことがきっかけと話しており、成功体験から味をしめ、常軌を逸したクレーマーになったのだと見られている。

 女は手当たり次第にケーキ屋に電話をかけており、ネットでは電話番号と名前、そして被害事例が次々と掲示板に報告されており、注意喚起が行われていた。そのこともあってか、逮捕直前は詳細を聞く店舗関係者も多く、「聞いてみるとうちのメニューにないものを言った」ケースもあったそうだ。

 今回のような食品に関するクレームは、表沙汰になると店の評判を落とし、場合によっては閉店を余儀なくされることもあるだけに、「なるべく穏便に」済まそうと、謝罪と「お詫びの品」で事を収めてしまう傾向がある。もちろん、過失があれば謝罪するべきだろうが、クレーム相手を全面的に信用することは、いいように商品や金をむしり取られることになり、相手を増長させてしまう。

 クレームが入った場合、正確に状況を把握し、電話番号を聞いた上で、ネットで検索してみることや、不審に思った場合は安易に乗らないこと。クレーム相手を全面的に信じてはならないという教訓を与えた事件と言えるだろう。

文 櫻井哲夫