来年の東京オリンピックに向けて渋谷などで再開発が進むが、開催後の不動産市況はどうなるのだろうか(写真:Ryuji/ PIXTA)

2020年の東京オリンピック開催を見据え、東京都内の物件を中心に不動産市場が活況を呈しています。しかし「オリンピックが終わったら大きく値下がりし、不動産市場は不況になる」と、多くの人々が思っているのではないでしょうか。

筆者は、東京オリンピック後も不動産投資は一定の需要があり、世間で言われるほど不動産価格は下がらず、むしろ上がるかもしれないと考えています。東京オリンピック後の不動産投資に勝算があるか、過去のデータなどから検証していきます。

人口減少と少子高齢化で不動産市況も悪化?

オリンピックうんぬんの前に、考えておくべき問題は、日本の将来を脅かす「人口減少」です。経済の拡大には人口の増加もキーポイントですが、日本は今後、人口が大きく減少するうえに少子高齢化も加速していきます。

2019年現在、日本の人口は1億2600万人ほど。それが46年後の2065年には8700万人程度になるとみられています。少子高齢化の進行も急速です。現在は65歳以上の高齢者1人を2.3人の現役世代で支えていますが、2065年になると1.3人の現役世代で1人の高齢者を支えることになります。

人口減少と少子高齢化が同時に進むとなれば、日本での不動産投資に勝算はないと思う人も少なくないでしょう。日本の人口が減ることは経済成長にマイナス要因になることは確かですし、楽観視できません。

一方で、日本で暮らす外国人の人口は増えています。外国人労働者の雇用が進んでいるからです。

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2018年末の外国人の労働者数は146万人と、過去最多を更新しました。深刻な人手不足を背景に、企業は積極的に外国人労働者を雇用しているという状況です。

オリンピックは東京を世界にアピールする機会にもなるので、開催後は東京でビジネスをしたいという外国企業や、働きたいという外国人が増えることが予想されます。外国人旅行者もさらに増えるはずです。訪日外国人旅行者は2018年に初めて3000万人を突破しましたが、オリンピックをきっかけにますます増える可能性が高いと思います。

オリンピック後は一転して不景気になった開催国

東京オリンピック後の景気は、どうなるのでしょうか。過去のオリンピック開催国について、開催前後の経済成長率を参照しながら、考察してみます。

下の表・グラフは、世界銀行のデータを基に、オリンピック開催前後5年間の実質経済成長率の推移を表したものです(1960年以前のデータはなく、前回の東京オリンピックの4年前と5年前のデータはありません)。


実質GDP成長率(出典:世界銀行)

1964年に開催された前回の東京オリンピックについてみると、開催3年前の経済成長率は12%を超えていました。オリンピック関連投資の増加が大きく貢献したのでしょう。開催年の成長率も11.68%と、大きく伸びていたことがわかります。ところが、翌年の1965年は5.82%まで落ち込んでいます。こうした反動減は、東京だけでなく、韓国、スペイン、オーストラリア、ギリシャ、中国でも起こっています。

ただし、イギリスだけは傾向が異なります。2012年のロンドンオリンピック開催前は成長率の伸びがそれほどではありません。他国のようにオリンピック関連投資で伸ばすことができなかったと考えられる反面、当時すでに成熟した先進国であったイギリスではオリンピックのためだけの特別な投資がそれほど必要なかったという見方もできるでしょう。

また、開催後の反動減も見られず、1年後の成長率は2.05%、2年後には3.05%と伸びています。オリンピックは世界の人々が集うスポーツの祭典ですが、大きな注目が集まる中で、開催国が誇るビジネスを紹介・宣伝したり、海外の企業を誘致したり、外国人労働者を集めたりする機会も生むわけです。そうした影響がイギリス経済を好転させたと考えられます。

イギリスは現在、欧州連合(EU)離脱問題を抱えてはいますが、ロンドンオリンピック以降、外国人労働者が堅調に増えています。

堅調な発展が見込める「東京」に投資せよ

日本も外国人労働者が増えてきましたが、東京オリンピック以降、イギリスと同様の傾向をたどる可能性があります。参考までに、IMF(国際通貨基金)による日本の経済成長率の見通しは、下のようになっています。


IMFのデータ(2019.4)を基に筆者作成

IMFも予想しているとおり、オリンピックだけの要素で日本全体の経済成長は見込めないかもしれませんが、東京単体で見た場合は堅調に経済発展するのではないでしょうか。

現に、東京の開発は進んでいます。JR山手線には「高輪ゲートウェイ」駅、地下鉄日比谷線には「虎ノ門ヒルズ」駅が誕生します。虎ノ門ヒルズと六本木ヒルズの間には、大阪の「あべのハルカス」を超える日本一の超高層ビルが建設中です。渋谷や中野などの再開発も旺盛です。

これまでの見解から、オリンピック後も見据えて不動産投資をするなら東京がよいということになります。日本の人口が減少する中で、東京は2015年の1351万人から2017年1月に1365万人と人口が増え、2018年にはさらに10万人以上増えて1375万人となっています。安定して長期的に賃貸需要があることを考えると、人口密度が高いということは大きなポイントになります。

ではどんな物件を選べばいいのでしょうか。一口に東京の物件といってもワンルームタイプもあれば、ファミリータイプもあります。ワンルームタイプがよいか、ファミリータイプがよいかを考える際、大切なのは、今後の東京の人口構成がどうなるかです。

現在、東京では、約半数が単身世帯ですが、高齢化が進むにつれて配偶者と死別したり、未婚者が増えたりして、2035年になると単身世帯が半数を上回ると予測されています。ですから、不動産投資をするなら、東京のワンルーム物件が第一候補に挙がるでしょう。

上場企業が集中しているエリアで探せ

とはいえ、東京のワンルームならどこでも不動産投資してよい、というわけではありません。不動産投資の成否を左右するのは、まさに「エリア」です。賃貸需要が旺盛なエリアを選ばなければなりません。

どこを選ぶか。筆者は、上場企業が集中しているエリアが候補に挙がるのではないかと考えています。

現在、上場企業約3600社のうち、約半数が東京に本社を置いており、港区、千代田区、中央区の順で多く、次いで渋谷区、新宿区、品川区となっています。上場企業が集中しているエリアでは、人も仕事も集中しているので賃貸需要は旺盛といえるでしょう。

上場企業に勤務している会社員は収入が高く、社会的な信用度も高い傾向にあります。ワンルーム物件に投資して、オーナーとなるわけですから、入居者とのトラブルは極力避けたいもの。社会的信用が高く、毎月きちんと家賃を支払ってくれる人に貸したいと考える人は多いでしょう。

上場企業が集まるエリアの物件に投資するメリットは、そんな会社員が入居者になる可能性が高いところです。そうしたエリアの物件は、価格も高いことは否めませんが、人生100年時代を考えると、長きにわたって賃貸がつく物件を選ぶことが重要だと思います。

オリンピック後の景気を必要以上に気にして、不動産投資に二の足を踏んでいる方も少なくないと思いますが、必要以上に悲観しなくてもいいことがおわかりいただけたのではなないでしょうか。不動産投資は長期的なスタンスでの投資になります。目先の景気に踊らされることなく、長い人生を見据えて物件を選ぶことが大切です。