本拠地でのアストロズ戦に先発登板したマリナーズ・菊池雄星【写真:Getty Images】

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今季最終登板は6回6安打2失点の好投も打線の援護なく11敗目

■アストロズ 3-0 マリナーズ(日本時間26日・シアトル)

 マリナーズの菊池雄星投手は25日(日本時間26日)、メジャー1年目の最終登板となる本拠地T-モバイル・パークでのアストロズ戦に先発。6回を投げ6安打2失点と好投したが、打線の援護がなく今季11敗目(6勝)を喫し、有終の美は飾れなかった。しかし、シーズン中盤から精度を欠いていた軸球の直球がイメージするものへと戻り、来季への糧とする登板となった。

 黒星は付いても、菊池の表情は晴れやかだった。

「スピードがすべてではないんですけど、そこも付いてきてくれて。ストレートに自信をもって投げられるのは久しぶりの感覚かなと思います。6月くらいからずっともどかしさを感じたままここまで来たんで。最後の試合で、これさえ出せればっていう希望が少し見えたのは来季につながりますね」

 もどかしさを吹き飛ばした質の高い直球――。前回19日の登板後にフォームの微調整を行ったことが奏功し、最速は9月1日のレンジャーズ戦以来となる95マイル(約153キロ)を計測。初回に3本のヒットで先制点を許したが、走者を出した3回、5回、6回のいずれも内角の直球を生かした組み立てで3アウト目を取った。菊池は語気を弾ませた。

「すべてはストレートあっての変化球。今日は3つとも変化球がよく決まってましたけどね。そうじゃない時でも、やっぱりストレートさえいければっていうところも、すごく感じました」

 3打席すべてを封じた2番アルトゥーベには“鍵”としてきた高め直球を操り、マン振りの空振りを取った。威力のある球は、スライダー、チェンジアップ、カーブと呼応。リーグ1位のチーム打率を誇るアストロズ打線に意図が伝わる配球で局面を切り抜けていった。

サービス監督は来季へ大きな期待「彼は安定した投球へ大きな飛躍を見せるだろう」

 肉体を支えた強靭な精神力。

 8月18日のブルージェイズ戦での完封勝利以来となる6試合ぶりのクオリティースタート(6回以上で自責点3点以下)で締めた今季、3試合連続序盤でのノックアウトや、リーグワースト2位の36被本塁打など、菊池は32登板を「悔しい思いの方が強い」と振り返った。

 162の規定投球回にはアウト「1」及ばなかったが、ローテーションを守り通した肉体を支えたのは強靭な精神力だった。試合前の会見で、サービス監督は来季への大きな期待を言葉にしている。

「1年目の選手が高いレベルでの戦いで活躍できなければ沈むものだが、変わることなく準備しチームのために胸を張って投げたいという姿勢を崩さなかった。来季、彼は安定した投球へ大きな飛躍を見せるだろう」

 来季への覚悟。

 キャンプ地のアリゾナにはすでに家を購入し、来季への”宿題“に取り組む環境を整えた。その気組みは淀みない言葉に映る。菊池は言う。

「来季、自分がどういうパフォーマンスが出せるかによって、すべてこの1年間の経験が肯定的になるのか、そうじゃないのか、変わってくる。休んでる暇はないし、すぐに体を動かしたいな、と。宿題はたくさんあるので。質の高いオフシーズンにしたいと思います」

 悔しさをばねにするオフは来季と因果の糸で結ばれる。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)