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9月25日にリリースされる「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG” LIVE Blu-ray」は、angelaが今年新たにスタートさせたライブシリーズだ。これまでもエンターテインメント性あふれるさまざまなライブパフォーマンスを示してきたangelaにとって、「作品を背負う」、「アニソンアーティストのあるべき姿」を追求したという、これまでにないテーマをもったライブがこれだ。VJにも”ガチオタ”を起用したり、ストリングスカルテットを使って意外な楽曲を弾くなど、演出自体も凝りに凝っている。このライブはいかなる思いから生み出されたのか? angelaのふたりを直撃した。

アニソン専門アーティストは絶滅危惧種!?



――angelaのライブの中でも5月2日に開催された“aNI-SONG”というライブは、アニメの映像を背負って行なうというこれまでアーティストの単独公演では類を見ない作りになりました。この構想はどのようにして生まれたものなのでしょうか?

KATSU 話は数年前に遡りますが、キング・アミューズメント・クリエイティブ本部が設立されて三嶋(章夫)プロデューサーとお話した際に、「キンクリのなかで声優ではないアニソン専門のアーティストは君たちしかいないのだから、海外でライブを演るにあたってはアニメを背負って歌うんだよ」ということを、熱く語っていらしていたのがずっと頭に残っていたんです。おっしゃるようにangelaはキンクリのなかで唯一の声優ではないアニソンアーティストです。そして彼らと比べて表現方法というものは限られていて、そうした状況の中ただライブを演ることを続けてていいのか、ということにずっと疑問を感じていたんですね。そこで考えたのが文字通り、「アニメ映像を背負って歌う」という形式でした。最初の構想では作品イベントに出演して、名シーンを流してその後に演奏したり、声優さんが台詞の掛け合いをして、そこから歌に入るみたいな考えだったのですが、angelaはアニソン専門のアーティストとして、せっかくいろんな作品で主題歌を歌わせてもらっているのだから、もっと多くの作品を背負っていけたらいいなと思ったんです。そのあと実現にこぎつけるまでは大変でしたが(笑)。

atsuko 映像をバックに歌うということはアニメのイベントだと割とあることだし、お客さんからするとそんなに珍しいことでもないように見えるかもしれません。でも、作品を離れて、いちアーティストの公演のなかで、しかも複数の作品を一度に上映させてもらうということは、本当に大変なことなんです。それをキングレコードの担当のプロデューサーとディレクターが手分けして製作委員会や関係各社さんに説明して、皆さんからご快諾をいただいて公演に漕ぎ着けたという形。ただ、これはお客さんに対して「こんなに大変だったんだぞ」というひけらかしをしたいわけではなくて、普通に観に来て感動してくれた方が「久々に『COPPELION』を観てみようかな」とか、「『アスラクライン』を観てみよう」といったことを思ってほしいというだけなんです。

KATSU もちろん、『蒼穹のファフナー』や『K』の映像を出せばangelaのファンに響いてライブが盛り上がるだろうという意味での勝算はありました。そこで『ファフナー』のファンがこの公演をきっかけに「angelaのライブでこんなに推すんだったら」と、『BLAME!』を観てくれたりするような相乗効果が生まれていたらこの“aNI-SONG”というライブは成功だなと思っています。



――angelaのライブがハブとなって他の作品につながっていく。

KATSU そう。加えて言うと、こちらからお客さんにこう見えていてほしいなと思っていた演出は「ステージのどこを見ればいいのかわからない」というものでした。

――まさに私自身もそうでした。それは意図的だったんですね。

KATSU ええ。後ろに流れる映像だけでも楽しめるし、ステージのangelaを観てくれてもいいし、キレキレのダンサーさんを追ってくれてもいい。そういういろんな見方ができるようにと、演出方針を固めていきました。

――そして今回エポックだったのは背景に流れる映像が非常に凝っていたことです。オープニング・エンディングそのまま流すのではなく、曲の入りの演出とも連動したかなり凝った内容だったと記憶しています。

KATSU 当たり前だったり予定調和的なこと、もっと言えばいかにも公式っぽい総集編は今回避けようと思っていました。あくまでファン目線でいちばん心に刺さった映像を作ってくれるVJさんがいないかと、以前から仲良くしていたDJシーザーとかDJけいたん from RAB(リアルアキバボーイズ)に相談したところ、「僕らがやりますよ!」と引き受けてくれたんです。

――最後の方のMCで紹介されていた方々はそういう経緯だったんですね。

KATSU 彼らって、アニクラでDJをしているときにどんな映像が盛り上がるかを肌で感じているので、その嗅ぎ分けが半端ないんですよ。それに本人たちも言っているように、ものスゴいオタクですし(笑)。それでディスカッションをしたり、こちらからオーダーをしたりして編集をしてもらいました。できあがったのを見てちょっと長かったので切ってもらうように言ったら、「ここはどうしても重要なシーンなんです!」って、こっちを説得してくるんですよ(笑)。それに仕事ぶりがプロフェッショナルで、僕が「今回『BURN』を演るときに赤のクランの吠舞羅のマークを背負いたい」と言ったら、「それ、メチャメチャたぎりますね!」って、揺らめく旗をCGで作ってくれたりもしたんですよ。

――演出面でも結構採り入れたんですね。

KATSU そうですね。VJに関しては半分以上は彼らの意見ですね。VJチームは良い意味で遊んでるんです。「ここでこのシーン流してやったろう」とか、その化学反応がめちゃくちゃ面白かったですし、実際お客さんにも刺さっていましたしね。

――atsukoさんから彼らにオーダーしたことは?

atsuko 私からは文字を出せるなら、掛け合いのときの文字を入れてほしいといったことくらいですかね。私はよく、「歌って〜」とお客さん側にマイクを振るのですが、そのとき初めて来た人でも文字が出るとその世界に入りやすいし、「ここでこういうことを言うんですね」ってわかるように示してもらいました。いつもは「Shangri-La」をサビの後半の落ちサビのところだけみんなに歌ってもらっていたのですが、いつも聴いて覚えているだろうから最初から最後まで歌ってもらおうと。その代わり、初めての方のために歌詞を全部出してもらうようにセットしました。これもある意味で「Shangri-La」という私達のなかでの超定番曲が予定調和にならないようにという試みです。終わってからハッシュタグで感想を追いかけたところ、「『Shangri-La』をあんなふうに最初から最後まで歌えたのがすごい新鮮だった」と書いていただけたのは良かったかなと。



――このアイディアはどうやって思いついたんですか?

atsuko 海外で公演を行なったときですね。アジアのお客さんは頼んでもないのに歌うんです(笑)。それが私にとっては新鮮で。日本のお客さんって、基本的に周りのことを考えて行動するので、「歌って」と言われてないときに歌うことをしない。でも、そういうしがらみをとっぱらう瞬間があるのもいいんじゃないかなって、ずっと思ってて。もっとみんな「好き」を出していいんだよって。

KATSU 良い意味で裏切るということだと、「蒼穹」が終わった後に映像演出として、『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』の最後のシーンを淡々と見せて、「ここで(EDテーマの)『Peace of mind』」だろうという流れを作っておいて、(挿入歌の)「果て無きモノローグ」を歌うとか。そのあとの弦カルテットのコーナーもそうですね。弦カルといえばバラードが定番だけど、そういうのではない曲をアレンジして、イントロからお客さんに「これ何の曲?」って思わせる。激しい印象の曲がバラードになったり、「全力☆Summer!」も、普段は太鼓で演るところを弦カルで演るとか。

――映像演出って、そういうふうにセットリストを”ミスリード”させるようにも使えるんですね。

KATSU 映像を使う際にこういう意図でこの場面を使うんだということもきちんと製作委員会の人達に伝わって、それを踏まえてOKをいただけたのもよかったです。今後としてはまったくの構想レベルですがカバー曲を入れて、さらにその作品の映像をこんなふうな形で流したいですね。もちろん、主題歌オリジナル歌手ではない僕たちがとなると、今回よりもハードルは上がると思います。でも諦めたら本当に何も始まんないですよね。ダメ元でもぶつかってみないと。だってアニソン専門のアーティストって、もう絶滅種に片足突っ込んでるんですよ?

――絶滅……? どういうことでしょうか?

KATSU それは最初に三嶋さんの言葉を受けて思った、「声優ではないぶん、ライブでの表現方法は限られている」ということです。だって近年の声優アーティストのスキルの伸び方はハンパないんですよ。とくにキンスパ(キングスーパーライブ)で一緒になったみんなは、歌だけでなく、ダンスも踊れて声も良くて演技もできてビジュアルもいい。そうなったらそっちに主題歌の仕事が渡っていきますよ。そうした状況において、僕らとしてはアニメ専門のアーティストにしかできないことを見つけなくてはいけない。それが今回のやり方です。アニメ専門アーティストなんだからアニメを背負ってライブ演ろうよ、ということを最初に提唱したかった。それにこれで終わらせてはいけない。アニソンアーティストのその先を考えて行動する必要があると思います。これが当たり前になればお客さんはもっと喜ぶと思うので。



atuskoが「恨み節」を演出に替えた演出とは?



――atuskoさんは今後についてどんな考えをお持ちですか?

atsuko これはライブのMCでも言ったんですけど、去年のオールタイムベストライブは、どちらかというとオープニング主題歌寄りでシングルコレクションのような選曲になっていたので、しばらく歌っていなかった曲や最終回エンディングのようなセットを組みたいなと思っていました。今回で言えば「彼方の delight」(『アスラクライン2』EDテーマ) や「バイバイオーライ」(『COPPELION』最終回EDテーマ)、「Beginning」(TVアニメ『屍姫 赫』『屍姫 玄』 第13話-14話・第23話-24話 EDテーマ)がそう。今後も、そういった曲に脚光を浴びせられるようなライブをしていきたいですね。2010年代はとにかくフェスが増えたのでお客さんとのコール&レスポンスを意識した曲が多いのですが、’00年代にはそこまで考えて作っていない曲が多いんです。そういう私一人が歌うタイプの曲で、まだあまり披露していない曲が他にもあるのでそのあたりを掘り下げていきたいですね。ちょっとずつでも変えていかないと飽きられるので(笑)。

KATSU 今回のひとつチャレンジだったのは、「KINGS」を演っていないこと。発売以来必ずセットに入れてきたんですが、最後まで悩んだ挙げ句、敢えて外したんです。VJの人たちもすごくガッカリしていたみたいなんですけど、自分たちの代表曲のひとつを外すことも飽きさせないっていう意味でまたチャレンジかなと思って。

atsuko それは良かったと思うよ。ないのがよかったっていうのは変だけど。それに関して、私はお客さんに対して根に持ってる事があって(笑)。

――どういうことですか?

atsuko 私達はいつも初めて来てくれる人にも入りやすいライブをしたいなと思っていて、振り付けがある曲を演るときには歌う前に練習をするタイミングを作るんです。

――たしかにいつもされていますね。

atsuko そう、それなんです。で、去年のオールタイムベストライブのときに「KINGS」で、「最初に右手をグーにして」とやったら、お客さんからの反応が「ああ〜」だったんですね。つまり、「右手を〜」という段階でもう「KINGS」を演るんだと分かる。それでその反応が出たわけ。そういう感じになると、初めて来たお客さんがせっかく皆と合わせる曲になったときに「お約束を知らない自分」を意識してしまって、逆にひとりぼっち感を味わわせてしまうことになるなと思って、今回は敢えて全曲振付の練習なしで進めたんです。難しいラインではあるんですけど、それはひとつのチャレンジでした。ただangelaの振り付けって繰り返しが多いので1番を聴けばなんとなくわかるし、そこはお客さんの自主性が生まれることに期待した部分でもありました。16年もやってるアーティストのワンマンライブに初めて来てくれるって、すごく固い意志の方だと思うし、不安もあったと思います。そうした方に安心して観てもらうことと、いつも来てくれるお客さんにも新鮮な気持ちで見てもらうという演出の両立は改めて難しいなと感じました。

KATSU 僕から聞いてみたいのは、取材する側から観ていかがでしたか? “aNI-SONG”という新しいテーマでやるということは事前に示してあって、いつもと違った感じで観られました?

――自分としては、最初におっしゃっていたように、「ステージのどこを見ればいいのかわからない」状態でした。VJも観たいし、パワフルな演奏陣も観たいし、ダンサーさんも追いかけたいしというところで、良い意味で見どころが多くてレポート記事を書くのが大変でした。映像ソフトではスイッチングして何度も観たいところですね。



atsuko ライブが終ってからファンレターが届いたんですけど、そこにも「あんなに見るところが多いのは困ります。1曲について3回から4回は行ってもらわないと」って書かれていました(笑)。3回も4回も演ったら、それこそ「ああ〜」ってなる(笑)。

――なるほど。最後に今回の公演を振り返ってどのように感じて、そして今後“aNI-SONG”というライブ形態をどのように育てていきたいと考えていますか?

KATSU 作品イベントでは当たり前かもしれないけど、やっぱりアニメを背負って演る緊張感とか、普段自分たちの音楽はどれだけアニメに助けられてるのかみたいなのとか改めて実感しましたね。本番中は後ろだから見えないんですけど、リハのときは常にプロジェクターで映して合わせて演奏していると、自分でもグッと来る瞬間が何度もありました。他のアニソンアーティストも絶対やったほうがいい。そして“aNI-SONG”というシリーズをパッケージングしてVJ チームも一緒に海外で公演を行ないたいなと考えています。今回のアジアツアーで何曲かやってみて新しい発見だったのが、LEDのスクリーンがメチャクチャ大きくて、そこでアニメの映像を流すとホントにアニメの中に入った感じでスゴい迫力なんです。しかも、後ろから発光しているから投影型と違って影にならない。そんな風に発見もあったし、“aNI-SONG”シリーズとして、できたことできなかったことが見えた最初の公演になったと思います。『KINGS』もやらなかったことで絶対的な王者感を改めて感じることができました。第2回目に向けて構想が膨らんでいるので、次につなげるライブにしていきたいですね。先ほどは絶滅危惧種とか言いましたが、競ったり戦ったりするのではなく同じ業界の人達にも「なんかangelaがこんな事やってるぞ」みたいに意識してもらって、アニソン専門アーティストを絶滅させないための新しい見せ方を一緒に模索していければうれしいなと思います。

atsuko 私はただただ楽しかったので、単純にまたやりたいという思いがあります。自分だけでは分からなかった良いシーンとかも本物のオタクの人に映像を作っていただけてお客さんの反応を見られたことで実感も得ましたし、まだ歌えていないアニソンも60曲くらいあるので、この熱量をまた次へ繋げていきたいなと思います。

Interview & Text By 日詰明嘉

※次ページに本ライブのレポートを掲載!





令和最初のangelaライブレポート 新シリーズ“aNI-SONG”をスタート



元号が令和に改まって2日目となる5月2日、舞浜アンフィシアターにてangelaのライブ“aNI-SONG”が開催された。これはアジアツアーファイナルであり、これから展開していく新コンセプトのライブシリーズの日本でのお披露目公演でもある。アニソンアーティストであるangelaが作品を背負うことをより強く打ち出すようすをライブで表現する“aNI-SONG”。新たなコンセプトでの演出や、この日のホールを活かしたアレンジや音響など、密度の濃いライブエンターテイメントにオーディエンスは酔いしれた。

アンフィシアターというシアトリカルな舞台でのこの日の公演。客電が落ちメンバーがEDMに乗せてステージに登場した後、ステージ中央からスモークに包まれて現れたのはもちろん、angelaのふたりだ。大きな拍手に沸き立つ会場の熱量を一段と上げるこの日のオープニングは「SURVIVE!」だ。硬質のリフが流れ「angelaアジアツアーファイナル!」と発したatsukoの一声からさらにヒートアップ。ステージバックの巨大スクリーンには同曲がオープニングを飾った劇場アニメ『K SEVEN STORIES』の映像が映し出される。今回のツアーは「aNI-SONG」と題された、angelaが新たなシリーズコンセプトを打ち立てるもので、これまで多くの“アニソン”主題歌を歌ってきたangelaと作品との結びつきを強く訴えることがテーマとなっている。従来のライブでも客席はそれぞれの楽曲や作品のテーマとなっているカラーのサイリュームを掲げてきたが、作品映像とともに照らされる空間は一層の雰囲気を醸し出す。広い円形のステージには4人のダンサーも登場してキメの細やかな踊りを披露し、ライブ冒頭から情報量の多い展開だ。間奏ではatsukoが客席にコールを要求し、バキバキのベースに乗せてオーディエンスの声が何度もホールに響き渡る。それに乗せてKATSUのギターがメロディアスに暴れ回り、エフェクターをかけたatsukoの声がロックに揺さぶり、ラストまで一気に駆け抜けてこのライブの幕開けを飾った。間髪入れずにスクリーンには『K RETURN OF KINGS』の映像が流れ、黄色い歓声が湧く。astukoは「アニメとの絆、ぢぇらっ子との絆、歌っていきます!」と煽り、バストドラが力強くリズムを刻む中、物語性のある「KIZUNA」を集中力高く歌い上げていった。



明けたMCでは一転、明るいムードで「私達をチヤホヤしてね」と笑わせる安心の内容。今回のアジアツアーの海外公演の様子を語りつつ、「日本のみんなも負けてほしくない」と話すと、オーディエンスは力強くリアクションを示す。そしてatsukoが「今日は令和になって初のライブ」という話題を展開すると、KATSUは「令和の最初にangelaを選んでくれてありがとうございます!」と感謝を述べ、“aNI-SONG”のコンセプトを確認して挙げた『アスラクライン2』というタイトルに会場は感心の声が湧く。もちろんここでもバックには同作のハイライトシーンが次々と映し出されていく。これら1本1本が単なるTVフォーマットの映像ではない非常に凝った作りになっていることに気づいたが、それは後ほどのMCで理由は明らかになる。EDテーマの「彼方のdelight」を、儚げな高音部を美しく情感たっぷりに聴かせ、続けて同作の最終話用EDテーマという物語性の高い楽曲の「キラフワ」をドロップ。ポップなスカサウンドの雰囲気に合わせダンサーがポンポンを持って登場し、atsukoも持ってステージを周回する。SEを含め祝祭的な雰囲気に包まれつつ、ラストサビを一緒に歌って締めくくった。そして次の曲のイントロが流れるとあっという間にサイリュームは緑色に変わる。キングレコードでのデビューとなった「明日へのbrilliant road」。背景にはもちろん『宇宙のステルヴィア』の映像だ。ダンサーは4人に増え、KATSUもステージ最前部まで現れギターを掻き鳴らす。2番に入るとオーディエンスのクラップが入り、落ちサビではatsukoがマイクを向けてオーディエンスのみによるシンガロングが繰り広げられ、小さく「ありがと」と一言。返すサビでは「あたしが居いて、ぢぇらっ子が居る」と歌詞を変えるところに関係性の深さが伺える。アウトロの高い熱気までパッケージして楽曲を締めくくった。

会場の雰囲気は一転し、静謐でディープな音が空間を支配する。劇場アニメ『BLAME!』の主題歌「Calling you」だ。デビュー作から近年の作品まで、こうしてセットリストの中で時間を跳躍させることでangelaがいかに長く多彩な作品の主題歌を手がけていたことがわかる。ステージ上のターンテーブルに乗って回り全方位に向け硬質な楽曲を届ける。続いてスクリーン上には『COPPELION』の最終回のドラマティックな展開が映し出され「バイバイオーライ」のロックなサウンドが鳴り響く。緩急をつけたセットリストだ。「KIZUNA」も同様だったが、最終回用の特別な楽曲をいくつも書き下ろしているところに、アニソンアーティストとしてのangelaの特長がここでも示された。もちろん楽曲単体としても、ぢぇらっ子に愛された楽曲でライブでは久々の披露となった今回、反応は非常に大きくサビでの一体感あるコールでは強く熱量が感じられるものだった。間奏で思い切り暴れるドラムとギターソロに続き、落ちサビでもう一度合唱して燃焼した。つづいて劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』の映像が映し出されると、歓声が上がりその後すぐにじっとスクリーンを凝視する空気に。厳選されたシークエンスのあと、atsukoは「蒼穹」の頭サビを歌い上げ煽りに続いてファストなツーバスの連打で熱量を一気に高め、大きくのけぞりハイトーンで高らかに歌う。間奏ではKATSUとベースのBuonoがステージ前方に出て互いの技で魅せる一幕もあり、激走した一曲となった。

続いて『蒼穹のファフナーRIGHT OF LEFT』が映し出され、これまで以上にじっくりとストーリーを追うなか、ステージ上では蓮沼健介のピアノの調べに乗せてストリングスのカルテットとangelaのふたりがドレッシーな衣装で登場。KATSUのアコースティックギター、小島億洋のパーカッションに乗せatsukoは深い声で「果て無きモノローグ」を静謐に歌い上げた。暖かな拍手に迎えられ、「いつも歌っている曲がワンランク上がった感じ」とatsukoは語り、「Different colors」へ。ストリングスサウンドに合わせて優しく歌う姿にぢぇらっ子はクラップで応える。このアレンジでの主旋律はボーカルと張り合うほどの主張があり、パーカッションと合わせて独特なグルーヴを生み出していた。バイオリン・真部裕のソロもあり聴き応えのある時間となった。次の曲は「Beginning」。atsuko曰く「10年ぶり」のライブ披露となった曲で、会場ではじっくりと聞き耳を立てる姿が目立った。メロディが立った感動的なこの曲を優雅に歌い、最後には深くお辞儀をして締めくくった。そこから次の曲のイントロが流れてくると会場がざわめき立つ。それはangela屈指のコミカルな楽曲「全力☆Summer!」だった。当初は遠慮がちだった会場側もだんだんと黄色のサイリュームが灯りだし、「ウー/ハー」コールのやり取りに応える。楽器をストリングスに変えるだけでここまで印象が変わることに驚きつつ、一方で原曲自体のメロディの良さが立つアレンジでもあった。atsukoもニュアンスをたっぷり効かせた歌い方を楽しみ、間奏では「令和/元年」コールというこの日ならではの演出を取り入れ、最後はオペラティックに歌い上げた。

MCで新曲の披露がアナウンスされると会場は大きく沸き立つ。それはもちろん、5月から劇場先行上映公開となった『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の主題歌である「THE BEYOND」だ。”島”を意識した旋律と楽器から力強いドラミングに乗せて熱のこもったボーカルワークが渦巻き、キャッチーなサビに会場は素早く反応し、コールをかけていく。キレのあるシャウトに加え間奏のコーラスが圧巻の1曲。そのまま同シリーズのイメージソングとして作られた「私はそこにいますか」へとなだれ込む。KATSUのスパニッシュギターをバスドラが支え、それにバイオリンの美しい調べが主旋律を奏で、atsukoはハイトーンで歌い上げる。ダンサーはフラメンコを踊るという贅沢な演出。間奏ではEDMでアッパーに盛り上げ、スネアの連打からバキバキのベースが加わる豊かな楽曲だ。落ちサビではatsukoとKATSUだけでなくバイオリンの真部もステージ前方に出て魅せるパフォーマンス。温かい拍手は、この日また新たに「ファフナーソング」のレパートリーがファンに刻まれた証でもあった。



初披露後の大きな反響を受けてひと安心のangelaは久々の日本語でのMCとあって、アジアツアーの土産話をたっぷりと話す。ライブも後半戦に入り、「僕は僕であって」ではテクニカルな技を次々と繰り出しつつ熱量高く盛り上げていくangelaの真骨頂が見られ、そのままのボルテージで「BURN」へとなだれ込み、さらにハードさを高めたリフをハイスピードに刻んでいく。会場はもちろん『K』の赤のクランのテーマに合わせサイリュームを赤く染める。フラッグを持ったダンサーが登場し周回して煽り、客席はコーラスを繰り返す中でどんどん高揚していく。それをリードするかのようにatsukoがロングトーンをキメたタイミングはこの日のハイライトのうちのひとつだろう。最後にもう一発ロングトーンを発してから、次の「Shangri-La」のイントロで、atsukoが「今日はみんなで一緒に最初から最後まで歌ってください」と話すと会場からはどよめきが湧く。アーティスト側からこうした提案をすることは間違いなく異例のことだ。ぢぇらっ子なら誰もが知る定番中の定番だが、スクリーンに映し出された歌詞をatsukoとともに歌い、落ちサビのコーラスまで合唱した一体感は得難い経験になったことだろう。勇ましいドラミングが聴こえてきて本編ラストは「シドニア」。ホール音響を目一杯使った爆音が腹に響く。展開の多い楽曲だけにダンスの動きも多彩で見どころが多く、またも情報量が多い展開だ。間奏ではatsukoがリードして各パートがソロ回しを行ってからKATSUがお決まりの「ジークジオン」コール。最後のパートではコールアンドレスポンスを重ねて締めくくった。

アンコールに応えて出てきたatsukoが「時間が経つの早くない?もっと喋りたいんだけど(笑)」と話すと、KATSUは「違うんです。“aNI-SONG”はかっこいいんです!」とツッコミを入れる。それでも軽快なトークを続けるatsukoにファンは温かい声援を送る。atsukoは「秋にオールタイム・ベストを出して(日比谷)野音を開催しましたが、どうしてもオープニングテーマが多くなってしまって、アニソンというくくりの中では最終回エンディングや第2シーズンのエンディング、挿入歌を補完できていなかった」ことが心残りだったという。「今日それを全部補完できたわけではなかったので、またこの“aNI-SONG”というシリーズで歌えたら」と話すと大きな歓声が湧く。そこから展開したアンコールの1曲目は、2年前の武道館公演で“封印”から解かれて以来、ベスト盤にも収録された「memories」。イントロで歓声が湧くほど多くのぢぇらっ子たちの耳に届いているようすだ。メロウなメロディに乗せて歌うatsukoを見るKATSUの表情はどこかリラックスしたようにも映る。そして再度、スクリーンには『蒼穹のファフナーEXODUS』の映像が映し出され、緊迫感のあるシーンからオーディエンスをドラマティックに世界に誘う「その時、蒼穹へ」を展開。ここでもatsukoはコールを身に受け、メロディアスに歌を返していく。KATSUは体を折って熱くギターをプレイ。ステージ上の熱演にシンクロするようにコーラスをする監修もリフレインを返し、熱量を高めていった。ラストは「Follow me Follow you」のコーラスを絶叫する客席の熱を受けatsukoは「イグジスト」を熱唱。リズム隊も力強く、ダンサー4人も鋭く動きをつけクライマックスを演出。間奏では「昭和/平成生まれ」に分かれて「Follow me Follow you」のコーラス交換し、最後の最後まで全力の熱唱を繰り返し歌い終えた。

終演時のMCでatsukoが「令和もまだまだ楽しんでいくよ!」と叫んでからメンバーを紹介した後、KATSUは“aNI-SONG”というライブシリーズを行なうにあたり、多数のアニメを背負ってライブを行なうことの困難さを説明した後、各社が喜んで映像を提供してくれたことに感謝を述べると会場からは自然と拍手が発生し歓声が湧いた。つづけてKATSUは、映像を編集したDJシーザーをはじめとしたVJチームを紹介し、「カット割りのセンス、タイミング、アニメに愛がある人じゃないとできない」と信頼感抜群の謝意を述べた。そして最後には「平成でやり残したことがあるヤツ、令和で叶えようぜ!」と会場全体に向けて発破をかけて締めくくった。atsukoは「angelaは明日から令和産の曲作りをします。令和も素晴らしくて面白くて、みんなで歌えて泣ける心に残る名曲を作りたいと思います!」と宣言して、令和最初であり新コンセプトのライブシリーズ“aNI-SONG”の第一歩を踏み出したのだった。

Interview & Text By 日詰明嘉

「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG”」

2019年5月2日 舞浜アンフィシアター

セットリスト

1 SURVIVE!

2 KIZUNA

3 彼方のdelight

4 キラフワ

5 明日へのbrilliant road

6 Calling you

7 バイバイオーライ

8 蒼穹

9 果て無きモノローグ

10 Different colors

11 Beginning

12 全力☆Summer!

13 THE BEYOND

14 私はそこにいますか

15 僕は僕であって

16 BURN

17 Shangri-La

18 シドニア

19 memories

20 その時、蒼穹へ

21 イグジスト

●リリース情報

「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG” LIVE Blu-ray」

9月25日発売

品番:KIXM-397

価格:¥7,000+税

※“もっとaNI-SONG”アングル機能付

パッケージ仕様:【初回製造分のみ】スペシャルBOX仕様

封入特典:ブックレット

音声特典:angelaによるオーディオコメンタリー

映像特典:舞浜アンフィシアター公演メイキング映像

<収録内容>

「angela Asia Tour 2019 “aNI-SONG”」舞浜アンフィシアター公演(2019年5月2日開催)

※“もっとaNI-SONG”アングル機能付き

1.SURVIVE!(劇場アニメーション『K SEVEN STORIES』OP主題歌)

2.KIZUNA(TVアニメ『K RETURN OF KINGS』最終話EDテーマ)

3.彼方のdelight(TVアニメ『アスラクライン2』EDテーマ)

4.キラフワ(TVアニメ『アスラクライン2』最終話EDテーマ)

5.明日へのbrilliant road(TVアニメ『宇宙のステルヴィア』OPテーマ)

6.Calling you(劇場アニメ『BLAME!』主題歌)

7.バイバイオーライ(TVアニメ『COPPELION』最終話EDテーマ)

8.蒼穹(劇場アニメ『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』主題歌)

9.果て無きモノローグ(TVアニメ『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』挿入歌)

10.Different colors(劇場アニメ『劇場版 K MISSING KINGS』主題歌)

11.Beginning(TVアニメ『屍姫 赫』『屍姫 玄』 第13話-14話・第23話-24話 EDテーマ)

12.全力☆Summer!(TVアニメ『アホガール』OPテーマ)

13.THE BEYOND(『蒼穹のファフナー THE BEYOND』OPテーマ)

14.私はそこにいますか(『蒼穹のファフナー』シリーズ イメージソング)

15.僕は僕であって(TVシリーズ『亜人』第2クール前期OPテーマ)

16.BURN(劇場アニメーション『K SEVEN STORIES』Episode5『メモリー・オブ・レッド 〜BURN〜』ED主題歌)

17.Shangri-La(TVアニメ『蒼穹のファフナー』OPテーマ)

18.シドニア(TVアニメ『シドニアの騎士』OPテーマ)

[ENCORE]

E1.memories(TVアニメ『神八剣伝』OPテーマ)

E2.その時、蒼穹へ(TVアニメ『蒼穹のファフナー EXODUS』挿入歌)

E3.イグジスト(TVアニメ『蒼穹のファフナー EXODUS』OPテーマ)

関連リンク



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