埼玉西武ライオンズ、2019年パ・リーグ制覇!俊敏で狡猾なオークの群れが「負けない強さ」でつかんだ不思議な優勝の巻。

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埼玉西武ライオンズ2連覇です!

「まさか」「バカな」「ウソだろ」…という埼玉西武ライオンズの優勝。シーズン終盤どん詰まりの今季142試合目。残り2試合でマジック2という、可能性はあるけれど確実ではない状況。開幕前から一貫して、微塵も思わなかった優勝を今季初めて確信したのは2回表に5点、3回表に2点をあげる大量リードで「勝ちパターン」へと突入したときでした。これで自力でマジック1までいけるぞ、と。勝ったな、と。

ハッキリ言って優勝できるという見立てはありませんでしたし、CSに出られればいいかなぁというシーズンでした。菊池雄星、浅村栄斗という投打の主軸をまとめて失い、戦力ダウンは確実。目立った補強はなく、今季の上積みとして「内海が10勝だろ…」とカウントしていたFA補強選手(※人的補償だけど)もアテが外れた状態。優勝した理由がいまもってわかりません。「勝ちに不思議の勝ちあり」とはこういう状況を指すのかもしれませんね。

↓2年連続での胴上げ!辻監督(※しんにょう)が10度宙を舞った!

ありがとう、おめでとう、埼玉西武ライオンズ!

6チームのなかの1番です!

端的に言えば「打力」なのだろうと思います。今季も打って打って打ちまくりました。チーム打率.266、得点755は12球団ナンバーワン。そのぶん失点688も12球団で下から2番目という多さではありますが、とにかく「相手より点を取れば勝てる」という野球を実践してきました。打ち勝ったのは間違いありません。

ただ、それは世間一般に薄く広がっているであろう「デブがバットを振り回してライバルをなぎ倒した」「棍棒を持ったオークの群れ」「無秩序暴力野球」といったイメージとは少し違うのかなと思います。結果として打ち勝ったのは事実ではあるけれど、チーム防御率4.33のチームが「1試合あたり5.3点の得点で優勝した」というのは、無秩序なオークの振る舞いではないのです。失点より1点多く取り、取れる点以下に相手を抑えるという、相応の手堅さがありました。

最終的に得点755に結実する過程の部分。そこには12球団1位の盗塁134であったり、リーグナンバーワン・12球団でも2位の四球556であったりという必ずしも「打つ」ことだけで点を取ってきたわけではない理由が垣間見えています。ひとつ先の塁を取る、打てなくても点を取る、打席以外での「攻撃力」がなければこれだけの得点は挙げられなかったでしょう。

↓「一塁走者がショート強襲のエラー」でサヨナラ生還するなんて場面も!


「三塁まで行ったな」と決めつけた人が大半のなかで緩めず走れる!

それが1点を積み上げる!

↓「打つチカラはありませんが頑張って走ります」の木村文紀はランニングホームラン風サヨナラも見せた!


記録はエラーです!

残念!

↓見た目が遅そうなだけで「走者」としても優秀な選手たち!


中村:「僕は生まれたときから太ってる」
中村:「この身体で走って守れるように鍛えてきた」
中村:「昨日今日のデブとは年季が違う」

ただのオークじゃない!

俊敏で狡猾なオークだ!



今季は規定打席に8人が到達するという強力打線は、守備者としても一流です。浅村栄斗の穴を埋めるべくセカンドにコンバートされた外崎修汰が若干失策を重ねはしましたが、シーズンが進むにつれて落ち着き、むしろその身体能力を活かして広いエリアをカバーする好守のセカンドへと成長しました。ショート源田、レフト金子、ライト木村は何度もチームを救う守備を見せました。

ショート源田「たまらん」はすでに広くおなじみでしょうが、それにも増してレフト金子侑司の守備はアメージングです。常識外れのスピードで、あり得ない場所のボールをアウトにしてしまう。バットで打たないぶん足とグラブで相手に「攻撃」を仕掛け、相手のチャンスを粉砕してきました。今季、金子がゴールデングラブを獲らないなら、その投票はウソです。「打ってるヤツを評価するだけのウソ表彰」だと今季こそ言い切れる。それだけのものがあったと思います。

↓東京五輪のレフトに金子を推すぞ!どうせみんな国際試合は打てないんだから守備と走塁で選んだほうがイイ!


「盗塁したいときに絶対できる」選手!

相手のヒットを消す選手!

甘いマスクとサラサラヘアー!

打たないこと以外は完璧です!




総じて言えるのは野手能力の高さ。走攻守の3拍子が総合点で高い。「守」が低い選手は「攻」が突出しており、「攻」が低い選手は「走」「守」で補って余りある能力を備える。投手は先発のエースでも25試合くらい、中継ぎ・抑えでも70試合くらいにしか影響を与えませんが、西武には143試合すべてに影響を与える有能がズラリと並んでいます。

しかも、「バカ」がいない。

能力及ばず敗れることはあっても、自ら勝利を手放すようなバカはいない。西武が演じる「バカ試合」はド派手な殴り合いであり、互いにコケ合う泥仕合ではないのです。今の野手陣はまるで黄金時代のような陣容で、隙のない野球を見せています。見ていて納得感がある。

そのあたりについては「似たようなタイプのチーム」だと思っていた、とあるチームとの対戦で改めて実感しました。名前を出すと失礼なので伏せますが、率直に言って「雑だな…」と思ったもの。投げなくていいボールを投げて走者を進め、突っ込まなくていいときに突っ込んでボールを逸らし、走るべきでないときに走って自らチャンスを潰す。西武と「とあるチーム」とは、似ているようで似ていなかった。ヤるべきことを手堅クやルこトができる西武を改めて見直したものです。

投手陣はなかなか整備が進まない部分もありますが、思いがけない大当たりで菊池雄星の穴を埋めてくれた新外国人ニールの大活躍と、「ハイ、俺、今年で壊れます!」という勢いでここまで81試合82イニング強に登板した平井克典の「これぞプロ」「ひとりでふたりぶんくらい働いた」「甲斐野とモイネロを足して3で割った感じの頼れるセットアッパー」という大奮闘。コチラから試合を壊さずに味方の援護を待つ「西武らしからぬ勝ち筋」を可能にしてくれました。

↓2年目の平良海馬も終盤にかけて活躍を見せ、壊れない程度の投手陣構築に貢献!

「ピッチャーも太くなってきた」
「体重差が実力差の世界観」
「山っぽいデブと海っぽいデブの勢力争い」


そういった意味では、「打って勝った」だけではなく「自分たちからヘンな形で負けなかった」ことが今季の西武の強さであり、優勝にまで届いてしまった理由なのかなと思います。コッチからヘンに負けないぶん、相手は5点を自力で取らないといけないところに追い込んだのです。いかに西武の投手陣でも5点は簡単ではありません。その手堅さによって勝ちが転がり込んできた試合も多かったのでしょう。優勝を決めた試合でも、相手が勝手にピンボールみたいことをしてくれましたし…!

↓ピンボールのハイスコアを競い合う相手チーム!


こんなんで3点もらったら大量点差になりますわ!

このあとセカンドゴロ内野安打(ヘッスラ)でさらに点を追加するあたりも含めての得点755です!




ただ、これで満足するわけにはいきません。昨季はぶっちぎりの優勝を果たしながら、ソフバンに地力の差を見せつけられてのCS敗退。今季も一時は8.5ゲーム差をつけられましたし、シーズン終盤の直接対決でも千賀滉大に抑え込まれ、スクイズで決勝点を奪われるなど完敗を喫し、先にマジック点灯を許しました。

そのときは「これで2年ぶりのリーグ優勝は決まりましたね」「だって、西武の打線が…」「つづきは明日の文春野球で話します」と僕も思ったものです。柳田がいなかった間に対戦を消化しておいたので1年トータルではちょっぴり上回りましたが、最後に2連戦くらいが残っていれば引っくり返されたことでしょう。直接対決天王山やCSといった「この1戦」での戦いとなればソフバンのほうが上。あくまでも格下、あくまでも拾った1位として、謙虚に戦っていきたいもの。

そして、この先の戦いがどうなったとしても、来季も変わらずに挑戦してきたいもの。西武球団には「3年つづいて一人前」という伝統の哲学(※給料を上げ渋るための難癖とも言う…)があります。3連覇ができるくらいのチームになるまでは、まだまだです(※3年目までは何とかして給料は上げ渋る)。ただ、3連覇ができるようであれば、それは新・黄金時代の幕開けを宣言してもいい(※仕方ないから金を払うの意)、そんな入口には立つことができた優勝だったと思います。

CSでのソフバン決着戦(敗退予定)。

FAでの秋山翔吾さん争奪戦(敗退予定)。

厳しい戦いを潜り抜け、新たな黄金時代を目指していきましょう!

埼玉西武ライオンズを買収するIT大手が現れる、明るい未来へ向かって!